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サイクル ロードレース コラム 2025年4月4日

ロンドで二強の激突再び! ファンデルプール単独最多4勝目か? ポガチャル雪辱なるか?【Cycle*2025 ロンド・ファン・フラーンデレン:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ロンド・ファン・フラーンデレン

クラシックの王様 ロンド・ファン・フラーンデレン

第109回ロンド・ファン・フラーンデレンが2025年4月6日にベルギーのフランドル地域で開催される。モニュメントの王様と呼ばれ、伝統あるワンデーレースの中でも最も過酷なバトルが展開することで知られる。ミラノ〜サンレモを制したアルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)が大会単独最多となる4度目の優勝を狙う一方、UAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がサンレモの雪辱を誓う。

ロンド・ファン・フラーンデレン

沿道には大勢のファンがつめかける

フランス語の大会名称はツール・デ・フランドル。レースの地元で使われるオランダ語の方言の一つ、フラマン語ではロンド・ファン・フラーンデレン。ロンドは音楽の世界なら「輪舞曲」で、いわゆる「周回する」という意味なので、ツール・ド・フランスの「ツール」と同じ意味の単語だ。

世界最長距離のミラノ〜サンレモには及ばないが、ニュートラル区間を含めると300km近くになることに加え、レース後半は激坂と石畳の難所が波状的にレイアウトされる。春に開催されるワンデーの伝統レースは「クラシック」と呼ばれてきたが、その中でも随一のレースであるロンド・ファン・フラーンデレンは「クラシックの王様」というニックネームで位置づけられる。

これまでさまざまな現地発信の文献に目を通してきたが、「地上で最も美しいレース」はリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに譲るものの、「地上で最も過酷なレース」と形容されるのもロンド・ファン・フラーンデレン。壁のような激坂がいくつも待ち構えるハードなレースだから当然だ。こうした坂には「ベルク=壁」という接尾辞を持った固有名詞が当てられる。コッペンベルク、カウベルク、パテルベルクなどはレース通なら聞いたことがあるはずだ。

壁のようにそそり立った坂が波状的に出現し、勝負の行方を左右するポイントとなる。急勾配に加えて路面は石畳だったりする。坂の途中で足をつくと自転車に乗って再スタートできないため、前が詰まったり、落車に巻き込まれた選手たちが頂上まで自転車を押して駆け上がる光景さえ見受けられる。それをわざわざ上らせるのだから主催者もひどい。しかも春まだ浅いこの時期は、天候が崩れれば冷たい雨に見舞われることもある。

2019年は現XDS・アスタナ チームのアルベルト・ベッティオル(イタリア)が優勝した。ファンデルプールは2020、2022、2024年に優勝。この大会の最多勝はファンデルプールやファビアン・カンチェラーラ(スイス)ら7人が3勝で並んでいて、今回はファンデルプールが大会単独最多となる4勝目を挙げることができるかに注目。2023年はポガチャル。2021年はカスパー・アスグリーン(デンマーク、現EFエデュケーション・イージーポスト)が栄冠をさらっている。

ロンド・ファン・フラーンデレン

コースマップ

クラシックの王様の舞台設定をチェックしてみよう。スタートはブルージュに戻ったが、フィニッシュは変わらずロンド・ファン・フラーンデレンミュージアムがある古都アウデナールデだ。ブルージュのマルクト広場で現地時間8時15分から選手の出走サインが始まり、10時に市街地を出発してフランダースアルデンヌ地域に向かう。欧州ではすでに夏時間となっているので日本ではプラス7時間。ベルギーの午前10時は日本の午後5時だ。

ロンド・ファン・フラーンデレン

コースプロフィール

総距離は268.9km。ゲントとコルトレイクの間を通って南下して、12カ所・合計16回の登り坂と7つの石畳区間に挑む。激坂の中で最も注目されるのがアウデ・クワレモントとパテルベルクだ。アウデ・クワレモントは合計3回上るのだが、128.9km地点、214.6km地点、252.2km地点となる。パテルベルクは2回で、218.0km地点と255.7km地点。フィニッシュの2つ手前がアウデ・クワレモント、そして最後の激坂がパテルベルクとなることを覚えておこう。フィニッシュは平坦な直線路であるアウデナールデのミンデルブローデルス通り。現地時間16時15分頃に到着することが予定されている。

出場は25チームで、1チームは7人編成。ナンバーカード1番は前年の覇者ファンデルプールだ。11番は世界チャンピオンのポガチャル、21番は初優勝を狙う地元ベルギーのワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)だ。

ロンド・ファン・フラーンデレン

地上で最も過酷なレース

優勝候補の二強はともにミラノ〜サンレモ、E3サクソ・クラシック以来のレースとなる。ミラノ〜サンレモでは2カ所しかない上り坂を利用してポガチャルが勝負に出たが、ファンデルプールがこれを逃さず、最後の直線路でのスプリント勝負でパワーを見せつけた。ただしロンド・ファン・フラーンデレンでは勝負どころがたくさんあって、どこで決定的な動きがあるかが予測できない。後半になると行き詰まるような展開となることは必至で、テレビの前から絶対に動けなくなる予感。

優勝の3番手として注目されるファンアールトはマッテオ・ジョーゲンソン(米国)、ディラン・ファンバーレ(オランダ)を擁する強力なアシスト態勢を持つ。4月2日に同じフランドル地域で開催されたドワルス・ドール・フラーンデレンでEFエデュケーション・イージーポストのニールソン・パウレス(米国)にゴール勝負で惜敗。今季はまだ勝ち星がないが、コンディションを高めて初優勝を虎視眈々と狙っている。

優勝候補はこの3人だけではない。リドル・トレックにはマッズ・ピーダスン(デンマーク)、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)、マティアス・ヴァチェク(チェコ)といったキーライダーが数人いる。2015年と2019年に優勝したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)も参戦。

さらには、アンテルマルシェ・ワンティのビニヤム・ギルマイ(エリトリア)、ドワルス・ドール・フラーンデレンで勝ったパウレス、バーレーン・ヴィクトリアスのマテイ・モホリッチ(スロベニア)、コフィディスのディラン・トゥーンス(ベルギー)、チーム ジェイコ・アルウラーのマイケル・マシューズ(オーストラリア)、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのオイエル・ラスカノ(スペイン)も。UCIプロチームでは、ロットに所属するベルギーチャンピオンのアルノー・ドゥリー、チューダー・プロサイクリングチームのジュリアン・アラフィリップ(フランス)の走りが気になる。

優勝者に贈られる芸術的なトロフィーは、フィニッシュを務めるアウデナールデの王立芸術アカデミーのコース受講生エリック・シモンズが新たに制作した。
アウデナールデ在住者で、長年サムソナイトのデザイナーとして勤務。デザイン界の威厳であるヘンリー・ファン・デ・ヴェルデ生涯功労賞を受けているとのことで、表彰式でそのトロフィーをチェックしてみたい。

執筆日時:2025/4/4
※出場予定選手は執筆時の情報を元に作成しています
※※変更になる場合がございますのでご了承ください

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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