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サイクル ロードレース コラム 2025年3月19日

【輪生相談】自分のことを世界までつれていって貰えるような指導者に直接合うにはどんな行動を取れば良いのでしょうか。

輪生相談 by 栗村 修
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現在中学3年生で将来ワールドツアーを走るために努力しており、高校は自転車競技部がないんですが普通の学校より英語が強い高校に行く予定です。そこでたくさんの情報や栗村さんのコメントなどを参考にしたんですが指導者が大事だとどれも書いてありました。自分は身長が162cmで低いんですけど球技やアクロバットなど学校でやる内容の運動は得意です。しかし、重要な自転車に関してはセンスがないと思います。努力も大事ですけど、大袈裟なこと言うかもしれませんが自分のことを世界までつれていって貰えるような指導者に直接合うにはどんな行動を取れば良いのでしょうか。現在愛知県に住んでいます。回りくどくてすいません。返事お願いします。

(男性 高校生以下)

■栗村さんからの回答

栗村さん

夢を追う若いサイクリストからの質問が多くてうれしいです。今回のテーマは「指導者」ですね。

日本のレース界は欧米ほどは育成システムが確立していないので、良い指導者に出会えるかは運も大きいのですが、運任せではいけません。質問者さんに合っている指導者とは何かを考えてみましょう。

逆説的ですが、指導者を探す前に必ずやるべきことは、ご自分がどういうタイプかを知ることです。というのも、本人の性格によって最適な指導者は変わってくるからです。

おおまかに分けると「自分ではあまりものごとを深く考えず、言われたことをストレスなくやれるタイプ」であれば厳しい指導者が合っています。逆に、「自分で最適解を探せないとストレスを感じるタイプ」であれば、サポートに徹するタイプの指導者がいいでしょう。実際はもっと細かいでしょうが、ご自身に合う指導者とはどんなタイプか、よく考えてみてください。

それと、指導者探しで忘れてはいけないのは、選手時代の能力と指導者としての能力はまったく別だということです。当然のことではありますが、なぜかこの二つは混同されがちなので注意してください。もちろん元選手としての経験が活きる場面もあるでしょうが、それは、基本的な能力を身に着けつつある質問者さんのステップではないでしょう。

次に、環境探しです。ロードレースはマンツーマンの個別指導より、チームなどの集団単位で指導を受ける場合が多いでしょう。したがって、指導者と同じく、自分に合った環境を見つけることが大事です。こちらの方が先かもしれませんね。

質問者さんは自転車競技部がない高校に進学予定ということなので、地域のクラブチームを探すことになると思います。チームの雰囲気もいろいろですから、やはり、ご自身に合ったチームをしっかり探してくださいね。

まずは国内の主要大会のリザルトをチェックし、有望な若手選手が複数、輩出しているチームをリストアップしたうえで、練習会などに参加して相性を確かめるとよいと思います。チーム内に一人だけ突出して強い選手がいても、それはチーム環境がよいというより、その選手個人が強いだけの可能性がありますので、過去数年にわたって、複数の強い若手選手が出ているかが重要です。

ここで重要なのは、「よい指導者・環境」が一人ひとり異なるように、同じ個人にとっても、「よい指導者・環境」はステップによって変わるということです。今の質問者さんにとっては、自転車競技のイロハを丁寧に教えてくれる人がいい指導者ということになると思いますが、もし質問者さんが成長し、全日本選手権を狙うレベルになったとしたら、「よい指導者」の定義は変わっているでしょう。

さらに、重要なことをお伝えしておきます。この競技では、最高の指導者はいつも「自分」です。自分で自分をコントロールし、よい方向に導けるかが運命を分けます。自分を冷静に見つめ、客観的に考える能力が、とても大事なんです。指導者は、質問者さんにとって一つの手段に過ぎず、すべてを委ねる対象ではありません。質問内容に「自分を世界に連れていってくれる指導者がほしい」とありますが、残念ながら、キャリアを通して常に最適なアドバイスを与えてくれる指導者は存在しないと考えたほうがよいでしょう。

最後に、質問者さんがご自身の体の特徴や強みについて触れていらっしゃったので、そちらにもコメントしておきます。

中学3年生ということで、身長はまだ伸びる可能性がありますが、今後、目標とする選手像をイメージする際は、体格の近い選手を参考にするとよいでしょう。

たとえば日本人選手では、宇都宮ブリッツェン所属の岡篤志選手が参考になるかもしれません。彼は身長165cmながら身体能力が高く、柔軟性にも優れています。ここ数年、欧州トッププロの間でウェイトトレーニングの導入が活発化していますが、岡選手は以前からサーキットトレーニングなど、自転車以外のトレーニングにも積極的に取り組んでいた印象があります。

海外のトッププロを見ても、身長170cm以下の選手は意外と多いので、身長が低いことを理由に夢を諦める必要はありません。球技が得意で小柄な選手の代表格といえば、やはりレムコ・エヴェネプール(身長171cm)が思い浮かびますし、最近ではフランスのレニー・マルティネスも、身長168cm・体重52kgという小柄細身ながら素晴らしい活躍を見せています。

僕の個人的な印象ですが、自転車競技は球技などに比べて、後天的な努力による伸びしろが大きいスポーツだと感じています。トレーニングを続けることで、競技力が高まりやすいのです。ただし、長距離種目であるため、質問者さんがもし速筋系が優れている短距離タイプの場合、長時間の競技へのチューニングに時間がかかるかもしれません。しかし、エンデュランス能力も後天的に伸ばせます。

質問者さんは、身体の使い方やバランス感覚、瞬発力に優れているようですから、まずはシクロクロスなどからキャリアを切り開くのも一案ではないでしょうか。国内のシクロクロス大会のリザルトをチェックし、若い選手が所属しているチームを探して問い合わせてみてください。

いずれにせよ、最終的に「自分自身が自分の最高の指導者になる」という点は見失わないでください。今回、輪生相談へ質問を送ってくださったその行動力こそが、強くなるための正しい一歩です。人生は「行動 → 結果 → アジャスト」の繰り返しです。失敗は避けられませんが、常にアジャストして、このサイクルをたくさん回すことが成功のカギになります。

行動はその後の人生に必ずプラスになります。くれぐれも安全に注意しながら、ぜひご自身の夢を追いかけてください。応援しています。

resize_image_01.jpg2022世界チャンピオンのレムコ・エヴェネプールなど、小柄で活躍している選手もいる。ぜひ自身の夢を追いかけてほしい。


文:栗村 修・佐藤 喬

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栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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