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栗村さん、こんにちは。私は普段仲のいい仲間と週末サイクリングを楽しんでいます。基本的には景色を楽しみ、競ったりするわけではないので、登りは遅い人に合わせてペースを合わせています。しかし、下りはどうしても苦手な人に合わせるのが大変で、毎度差が開いてかなり待つことになっています。また、遅れた仲間も下りで疲労してしまっているのが不憫で、できればもう少し上手くなってほしいな、と思っているのですが、当事者でない立場からなにか手助けできることはないでしょうか。
(男性 会社員)
■栗村さんからの回答
自転車のいいところは、フィジカルの力の差があっても一緒に楽しめるところです。たとえば強い人が前を引いて向かい風を一手に引き受ければ、力の差を埋めることができますよね。
ところが今回の質問はちょっと違い、フィジカルの力の差ではなくテクニックの差が問題になっています。これはなかなか難しい。フィジカルの差のように埋めることが困難だからです。
最初にもっとも大事なことをお伝えすると、下りでは各々が好きなペースで走るのが一番です。後続を待ちながら減速しつつ下るのは、待つ方も待たせる方もペースが乱れるのでむしろ危険だったりします。待たせる方は焦りも出ますしね。
質問者さんへのシンプルな提案は、「先に行って安全な場所で止まって待ってはどうでしょう」というものです。停車していれば、どんなに遅い人でもあっという間に追いついてきます。無理に減速して調整しようとするよりも、思い切ってバイクから降りてドリンクでも飲んでいればまもなく後続の方も追いつくでしょう。
さて、下りが苦手な方向きの克服方法ですが、まず、下りが速くない要因について考えてみましょう。僕の考えでは、下りが苦手になる要因は大きく二つあるように思います。
①自転車のコントロールテクニック不足や乗車ポジションのミスマッチ
②スピードや滑ることに対する恐怖感
①については、オーソドックスなスキルアップトレーニングに取り組めば改善できるでしょう。具体的には、安全な場所での八の字、スラローム、急ブレーキ、細い場所を進む1本橋などのトレーニングです。これらを何回も何回も反復して繰り返すことが重要です。
スキルアップトレーニングでは、タイヤと路面のグリップ感、ブレーキの制動感、体重移動などを頭ではなくて体に覚え込ませていきます。その際に、良い指導者がいると上達(適応)も早いでしょう。また、乗車ポジションが合っていないこともコントロール性を悪化させる要因になりますのでチェックしてあげると良いと思います。月に一度でも良いので、週末のライドにプラスして安全な場所でのスキルアップトレーニングを取り入れることで、全員の安全性と快適性を向上させられるはずです。
②については、なかなか深刻です。走行テクニックがあるはずのトッププロ選手でもたまに落車などをきっかけに「下り恐怖症」に陥る選手がいますよね。しかも克服するのに数シーズンを要することもあります。
これは恐怖感が過剰になってしまっている状態ですから、①のスキルトレーニングに加え、低速なので落車してもダメージが少なく、より難易度の高いオフロードをグラベルロードなどで敢えて走ったりして、恐怖心を緩和していくしかありません。
ただし、下りに恐怖心があるのは、むしろ正常であるとも言えます。むしろ、防具はごく軽いヘルメットしかない状態でクルマ並みのスピードを出せる方が異常であると考えるべきなのかもしれません。恐怖心は安全へのセンサーですから、一般サイクリストが無理に克服しようとするのも考え物です。
その意味では②はいったん措いて、まずは基本的なテクニックを身に着けることをご提案するのがいいかもしれませんね。近年主流になっているディスクブレーキや太いタイヤは、下りでは有利です。そういった機材面での変化も取り入れつつ、「正常な恐怖心」は維持したままで、安全に下れるようになるといいですね。
下りは各々が好きなペースで走ろう
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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