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【輪生相談】来年から高体連で活動していく予定ですが、ジュニアの練習ではロードバイクに乗る以外でどのようなことをすればいいのでしょうか?
輪生相談 by 栗村 修こんにちは、今中学生3年生で、来年から高体連で活動していく予定です。そこで質問なのですが、トレーニングではどのようなことをすれば良いのでしょうか?海外のジュニアの練習ではロードバイクに乗る量がただただ多いわけではないと聞きました。なので、ロードバイクに乗る以外でジュニアがするべき練習、ロードバイクでの練習もどのようなことをすればいいのかをご教示していただければと思います。
(男性 高校生以下)
■栗村さんからの回答
定期的にいただく質問ですが、若い力は日本の未来にとって大切ですし、僕の回答も変化していくものなので、可能な範囲でここでもお答えしますね。
さて、まだ中学生である質問者さんは、身体の基礎を作っている時期です。ただ、どういう基礎を築けばいいかは、目標によって変わります。基礎は建物の土台に例えられると思いますが、もしとても高いビルを建てたいなら、ものすごく広くて頑丈な土台が必要ですよね。土台作りにも時間がかかります。当然、土台を作っている最中はビルは一向に上に伸びていきませんから「いつになったらビルが建つんだ」と言い出す人もいるかもしれません。
でも、それほど高くない建物を建てるだけなら、そこまでの土台は要りません。たとえば10ヶ月で人が住める様にする必要があるならば、比較的短期間で土台を仕上げることが求められます。普通の一軒家の土台作りに、巨大なビルの土台作りみたいに何年もかけるわけにはいきませんよね。
「海外のジュニアの練習ではロードバイクに乗る量がただただ多いわけでは......」と書かれていますが、それも建物=目標の高さにかかわります。たぶん、欧州の指導者がツールのステージ優勝などとても高い目標を視野に入れているため、必然的に土台作りに時間をかけることになり、したがってロードバイクに乗ること以外の基礎練習や、トラックやシクロクロスなどの他種目も取り入れている......ということだと思います。
一方、近年はプロ選手の若年化が進んでいるので、本場でも10代からプロ選手顔負けのロードバイクトレーニングを行なっているという情報もあります。ただ、忘れてほしくないのは、海外の才能のある若手選手は、もともと、一般的な日本人選手よりも強靭な基礎を持っている点です。これらは人種差や生まれ持った才能の差です。ですから、まずはこの基礎の差を埋めなくては、どれだけロードバイクに乗っても最終的な到達点の差を埋めることはできないわけです。
もし質問者さんも同じようにツールのステージ優勝などの壮大な目標を掲げているなら、やはりロードバイクに乗る以外にも、基礎的な身体能力を根底から上げるために水泳やランニング、ウェイトトレーニングなどに取り組む必要があるでしょう。また、同じようにテクニックも底上げしなければいけませんから、シクロクロスやMTBなどを並行して行うとフィジカル面含めて得るものが大きいと思います。語学の勉強もしないといけませんし、海外で一人暮らしをするなら栄養の知識も欠かせませんよね。
ただ、土台作りに力を入れるということは、肝心の建物作りに取り掛かるのはかなり遅くなるということです。それほど土台が必要ではない、高くない建物を作るのが目標なら土台作りはほどほどにして、ロードバイクに乗るトレーニングを集中的にやったほうが効率的です。
具体的には、質問者さんの目標が目先のインターハイやその後のインカレで勝つことや実業団に入ることならば、ツールでステージ優勝を狙うときほどの土台は必要ありません。パワーメーターを見ながらの一般的なロードバイクでのトレーニングなど、短期間で結果(ロードバイクでの速さ)につながるトレーニングにさっさと取り組んだ方がいいでしょう。パワートレーニングの書籍はいろいろと出ていますよね。
要するに、目標が高いほど基礎作りには時間が必要で、同時にその逆も言える、ということです。当然ですが、まずは目標をできるだけ厳密に決めることが大切です。質問者さんの目標はなんでしょうか。
しつこいようですが、目標と手段をはっきりと区別して、目標から手段を逆算することがとても重要です。人々はつい手段を目的にしてしまいがちですから、気を付けてください。選手として強くなるためには、自分で考える力、失敗を経験に変えてアジャストする力がとても重要です。質問者さんが目標を達成できるように応援しています。
目標と手段を区別して、目標から手段を逆算しよう。
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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