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将来、ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャ、ジロ・デ・イタリアに出て総合優勝を狙いたいのですが、まずは何を用意すればいいでしょうか?
輪生相談 by 栗村 修僕は中3なんですけど、ガチで、ツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャ、ジロ・デ・イタリアに出て、そのうちどれかで、なるべく総合優勝、最低でも、ステージを狙いたいです。僕の家庭は、結構貧乏です。だけど、クロスバイクでロードバイクと戦っても、何度も勝ってるので脚と体力は自信があります。まずは、何を用意すればいいのか、高校は行っていいのか、それとも、そのままヨーロッパに行くのか。できる限り教えていただけたら嬉しいです。(ロードバイクないのでロードレース未経験者)
(男性 高校生以下)
■栗村さんからの回答
機材の高額化は、質問者さんの様な若い世代にとっては問題です。僕がロードバイクをはじめた40年近く前と比べると、感覚的には倍以上のお金が必要になっているイメージです。もし、僕がいま中学生だったら、そもそもロードバイクをはじめるのが難しかったかもしれません。
文武両道のグランツールライダー、ロマン・バルデ
もちろん、物価上昇に合わせて日本人の賃金も上がっていれば問題はないのですが、質問者さんも新聞やニュースを見てくれればお分かりの通り、残念ながらそうはなっていません。機材を買えない若い子にロードバイクを貸すなど、助けるシステムが確立されていればいいのですが、そうなっていません。自転車界の力不足であると、僕も反省しています。
さて、それでは中学生である質問者さんが具体的にどうすればいいかですが、まず、高校は絶対に行ってください。高校を中退した僕が言っても説得力はないかもしれませんが、高校に行かないことは、日本社会では大きなハンディキャップにならざるを得ません。もし質問者さんがプロ選手になったとしても、引退後には長い人生が待っています。そのことを考えると、やはり最低でも高校は行くべきです。海外のトップ選手でも文武両道の選手は結構いますし、学業との両立はむしろタイムマネージメントや効率的なトレーニングを行う上で有効だったりもします。
また、高校に行かずに本場へ挑戦することは、あまりにも負荷とリスクが大き過ぎます。質問者さんが親元を離れて海外で生活をし、現地の言葉でコミュニケーションを取り、その上で有効なトレーニングやレース活動、カラダに良い食事を摂るなど、すべてを一人でこなすことはとても困難です。それよりも、日本で、順番に一つずつ一歩ずつ積み上げていく方が確実ですし現実的です。
さて、それでは具体的にどうするかですが、理想的なパターンは、自転車部がある高校に進学することです。ロードレースで結果を残している高校などを検索すると、寮があり、自転車を貸してくれたりと、支援が充実しているんです。それが難しければ、近くの高校に進み、他の部活などで大いにスポーツをやってください。基礎的なフィジカルを付けるためです。近年、他競技出身の選手が活躍していることからもわかるように、若いころからロードバイクに乗るよりも、他のスポーツをして身体の土台を作り、将来の可能性を広げていった方がプラスになるケースが多々あります。僕としては、陸上競技や水泳などは身近で怪我のリスクも少なくオススメです。あと、質問者さんが筋肉量が少ないなら、あくまで年齢にあった無理のない範囲でという条件付きですが、筋トレも重要になります。
自転車部がない学校へ進んだ場合は、並行して比較的安価にはじめられるシクロクロスを勧めます。走行スキルが身に付きますから、これもロードレースの選手としての可能性を広げることにつながります。グラベルロード1台あればある程度のレベルまでは体力&スキルで戦えるでしょう。もちろん、アルバイトをしてエントリークラスのロードバイクを買い、身近なロードレースに挑戦するのもいいですね。ご近所に競技志向のショップとつながりを作り、走行会などに出るとコネができていいと思います。
こういうちょっとしたレース活動でも、質問者さんに将来グランツールで総合優勝、または、ステージ優勝できる才能があれば、恐らく身近な国内レースでは連戦連勝が続くと思います。そして、自然と国内の有力大学や有力チームの指導者から声がかかり、ステップアップの機会が訪れるでしょう。強化指定選手などにも選ばれ、海外挑戦のチャンスも開けるはずです。
そして重要なポイントは、上に記したことは、高校に行きながらでも問題なくやれるということです。そうそう、高校の勉強もしっかりやってくださいね。特に語学です。もしある程度の才能があっても日本語しか話せなければ、向こうでレース活動を続けるのは相当厳しいはずです。
今は土台作りの時代であることを忘れないでください。広く、しっかりとした土台を築くべき時代にロードバイクの表面的なキラキラした部分にのみ気を取られてしまうと、土台は脆くなります。脆い土台の上には、脆い家しか建てられません。まずは強い身体を持つ青年になり、海外でも生活していけるバイタリティを身につけ、その次に強いロードレーサーになるための努力をひとつずつ積み上げていってください。決して逆ではありません。
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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