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中学三年生のローディーです(176cm 61kg クライマー)。中学入学と同時にクロモリを買ってもらい、年7000キロくらい乗っています。僕は将来選手としてヨーロッパに渡りたいです。その為、僕はこのジュニア期に、海外選手の様な分厚い体を作りたいと思っています。具体的にはどのような事をすればよいでしょうか。栗村さんのアドバイスをしっかり実行して、海外で活躍したいです。その時は解説よろしくお願いします。
(高校生 男性)
■栗村さんからの回答
輪生相談をはじめてから、将来プロを目指したいと言う若い世代の皆さんから、定期的に同様のご質問をいただいてきました。これまでお伝えしてきた内容が皆さんに少しずつ伝わりはじめているのかもしれませんが、一方で、環境も時代と共に常に変化し続けています。
今までは、このようなご質問には「ジュニア時代には無理をせず......」という回答が多かったのですが、今回は少し趣向を変えてみます。というのも、UCIワールドチームがジュニアの選手と契約を結んだりと、青田買いの傾向がどんどん強まってきているからです。
本場のスカウトが目を付けるのは20代前半から10代へとシフトしていますよね。ということは、ヨーロッパで選手になることを目指す中学生の質問者さんは、もうそろそろプロの目を意識しないといけないことになります。うかうかしていられません。特に日本人の若者は欧米の若者よりも身体の発育が遅い印象があるので、年齢だけ考えるなら、なおさらがんばらないといけませんよね。
10代でプロ入りをし、ブエルタ総合優勝を果たしたレムコ・エヴェネプール
ヨーロッパプロになるためには、大きく分けて
1.生まれ持った才能(先天的なもの)
2.将来大きく伸びるためのベースのフィジカル(これは後天的に手に入れられます)
3.有効なトレーニング方法や各種スキルの習得(ほぼ後天的です)
4.本場のレースを走るための各種経験(完全に後天的ですね)
が必要です。
日本では3と4が注目されがちですが、一方、本場の指導者は1と2がとても重要だと言います。努力の量と結果が比例しないのは残念ながら事実なので、指導者がそこを理解しないと本当のスタート地点に立つことすらできません。
ただし、「才能」という言葉は非常にデリケートで、選手が努力を諦めるための言い訳としても使えます。ですので、選手は挑戦を諦めるその瞬間まで、自分に才能があることを信じ続けなくてはなりません。
さて、上記の要素を優先順位順に並べてみましょう。
もし質問者さんがツール・ド・フランスでの総合優勝を目指すなら、優先順位は「1→2→3→4」だと思います。残念ですが、かなり特異な才能を持っていないとツールに勝つことはできません。
一方、世界に約1,000人いるプロの中の底辺レベルであれば、順番は変わるかもしれません。今回は「2→3→4→1」にしてみましょう。もちろん世界のトップ1,000人に入るためにはかなりの才能が必要ですが、あえて夢を潰さないために、「努力は才能を超える」という考え方を尊重し、才能を一番後ろにしました。
質問内容に戻りましょう。質問者さんはどの目標であっても上位に来る2を意識していて、立派だと思います。
ある程度の年齢に達したあとは3と4が重要になるのですが、10代のうちは基礎体力の向上に繋がる2に時間を費やすべきだと思います。元々の筋肉量や身体の発育速度などでやるべきことは変わるので、具体的な内容まではお伝えできませんが、年齢とクライマー傾向であることなどを考えると、基礎的な筋トレと、ロードより短時間高強度の種目であるシクロクロスやトラック競技に打ち込むと良いでしょう。ランニングや水泳をやるのも間違いではありません。
これらのトレーニングの結果、上りが遅くなってもまったく問題ありません。乱暴な言い方ですが、上りはフィジカルのベースを作り上げたあとに体重を落とせばいくらでも速くなりますからね。
最後に、ご質問内容に書かれていた「海外選手のような分厚い体」という部分にも少し触れておきましょう。たしかに本場のプロ選手と日本人選手の体を比較すると、体幹やお尻周りの厚みがぜんぜん違います。これは人種による違いが大きく影響していますが、着目点としては間違っていないと思います。骨格的な細さはどうにもなりませんが、筋肉量の違いであれば正しい筋トレを行うことで差を埋めることはできます。筋トレは奥が深く、相応のリスクもありますので、ちゃんとした知識を持ったトレーナーから正しい指導を受けるようにしてください。
質問者さんの本場での走りを解説することを楽しみにしています!
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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