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こんにちは、ロードバイクの趣味としての楽しみ方の相談です。ロードバイクに乗って知らないお店を探したりすることが好きなのですが、都内の混んでいる道を走るのが怖く、なかなか乗ることに前向きになれないでいます。路駐の車を避けながら、普通に走っている車やトラックと並走していると、少しでも転んだら賠償か死だ、路駐の車のドアが開いたら大事故になり他の人も巻き込む、など不安になったりします。特に車も多い中で狭い道を走ると、楽しむよりも不安が大きいです。本当なら気軽に通勤でも乗りたい気持ちが強いのに、不安が大きく悶々としています。手旗をすればいい、と言われ、手旗をしていたらクラクションを鳴らされた事もあります。栗村さんはロードバイクで走っていて怖さなど感じないでしょうか?このような恐怖や不安は何かで克服できるものでしょうか?教えてください。
(会社員 男性)
■栗村さんからの回答
ロードバイクやスポーツバイクに乗る人も増え、僕が子どものころと比べると隔世の感があります。一方で道路環境の整備はまだまだ追いついておらず、スポーツバイクに乗り始めたはいいけれど、怖くなって降りてしまった人も少なからずいると思います。
僕もたまーに、都内を自転車で走ります。元選手の血が騒ぐのか、一度走り始めたら怖くはないのですが、乗る前には、ちょっと恐怖を感じて心配になったりします。
実は僕は、選手時代はほとんど恐怖を感じなかったのですが、キャリアの終盤に差し掛かると、「今日、練習中に事故に遭うかもしれない」といった不安を頻繁に感じる様になりました。「止め時」のシグナルだったのかもしれませんが、一方でリスクを正常に認識できる様になっていたのかもしれません。二輪は転倒リスクが付き纏いますし、特にロードバイクは裸同然のかっこうで車道を走るわけですから、冷静に考えれば「怖い」と感じる方がむしろ自然ともいえます。
トッププロ選手たちも常に危険と隣り合わせ
「克服できるのでしょうか」とのことですが、この怖さは、克服してはいけないものだと思います。恐怖感は無謀な走りを防ぐためには不可欠です。逆に、都内を自転車で走ってまったく恐怖を覚えない方がいるとしたら、ちょっと問題です。あるべきリスクに気付いていないということですから。
とはいえ、ビクビクしながら走るのは面白くないですよね。もちろん、根本的な改善のためには道路の作りを変えなければいけないわけですが、僕たちサイクリストの側のちょっとした工夫によって、「必要な怖さ」を維持したまま、安全に走れるのも事実だと思います。
第一に、ルート選びです。最短ルートを選ぶと、得てして交通量の多い幹線道路になってしまいがちですが、一本ズレたところに自動車の少ない走りやすい道があるかもしれません。安全で走りやすいルートのためには回り道を惜しんではいけません。5分、10分遠回りをするだけで快適な道に出会えるかもしれません。多少時間はかかっても、そちらのほうがずっと快適で、感覚的にはむしろ短く感じることすらあります。ぼくも選手時代はいかに信号と車が少ない道を走って郊外に出られるかを日々研究していました。要するに道探しですね。
もう一つは、ドライバーとのコミュニケーション術です。「術」と言っても会話をするわけではなく、ちょっとした仕草やジェスチャーなどでドライバーに安心感(相手のことをわかっている感)を与えるテクニックです。見るからに一生懸命で、前しか見えていないようなサイクリストだと、ドライバーも危険を察知して注意喚起的にクラクションを使用することがあります。そうなると、クラクションを鳴らされたサイクリストは、恐怖や怒り、嫌悪感に繋がってしまいます。
一方で、いかにも慣れた感じのサイクリストもいて、そういう人はドライバーから見ても安心感があるんです。真っ直ぐきれいに走り、急加速、急な進路変更をしないことや、周囲に気を配れている感を醸し出していること。さらにはコンパクトかつ優雅なハンドサインでドライバーと意思の疎通を図っていること。そんな一つひとつのしぐさが、ドライバーに安心感を与えるんです。そういうサイクリストなら煽られることも少ないでしょうし、なによりも自身が安全に走れます。これは不思議なもので、同じ時間帯に同じ道を走っても、走り方次第で道の印象はまったく違ったものになります。
ではどうやってこのような「余裕感」を身に着けるかですが、ロードレースやシクロクロスで必要とされる基本的なバイクコントロールのテクニックがかなり役立ちます。急ブレーキ練習や、アウタートップでの真っ直ぐゼロ発進、八の字走行、地面に置いたボトルを拾う......などの、基本的なスキルトレーニングをやってみてください。バイクコントロールに余裕が生まれるとフラつかなくなり、周囲を気遣えるようになり、更にハンドサインもより優雅になります。追い抜きをかけるクルマに対して軽くウインクをすることも可能になります。
これらを意識して改善を積み重ねていくことで、きっと快適な走行環境を手に入れることができるようになるでしょう。
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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