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高校から自転車を始めようと思っています。まだ、ロードバイクに何年か乗っていただけで、レースのルールとか全然わからないんですけど、将来は日本のトップ選手になりたいと思っています。高校でロードレースをやるにはどうすればいいですか?
(高校生 男性)
■栗村さんからの回答
この手の質問は本当に何度も、何度もいただきます。僕がそのたびにピックアップして答えているのは、同じ答えを繰り返してラクをしようとしているのではありません。日本の自転車界の将来にとって、極めて重要な問題だと思うからです。
というわけで、今回もお答えします。ただし、僕の答えはいつも同じではなく、さまざまな切り口からバリエーションをつけていますから、以前に似たような記事を読んだ方でも、同じ悩みをお持ちなら、読んでみてください。
高校生が日本のトップ選手になるためにはどうすればいいか、という問いに対して、ありえるルートを整理してみました。
A:高校の部活に入る
まあ、王道のやり方ですよね。メリットは、強い学校ならしっかりした指導を受けられる可能性が高いこと。でも、デメリットとして、長期的な視野が弱い点があります。インターハイなど、目前の目標のみを追いかけがちだからです。高校3年間のうちに限られた日本のレースで結果を残せないと"弱い選手"という烙印を押されてしまうかもしれません。だから、自分という個体の成長曲線を俯瞰して見る視野を持つ必要性が出てきます。海外でのレース経験を積むには、国内レースで結果を残し、ナショナルチームの強化指定選手に選ばれる必要があります。
B:クラブチームに入る
ショップでも何でもいいですが、学校の外でクラブチームに入るルート。自分に合ったチームを見つけられればのびのびと成長できる可能性がありますが、逆に、自由過ぎて、アスリートに必要な厳しさが身につかないかもしれません。たとえば、おじさんがビールを美味しく飲むためのポタリングチームに入っても、競技者としての正しい指導を受けられない可能性が高いですよね。チーム選びの力が問われるルートです。なお、海外でのレース経験を積むには、夏休みなどを利用して、海外レース体験プログラムなどに参加する方法があります。
海外で活躍する日本人・新城幸也
C:海外で活動する
高校時代の僕が選んだ極端なルートです。メリットとしては、メンタルが強く、バイタリティがあり、フィジカルの才能に恵まれていれば、一気に芽が出る点が挙げられるでしょう。しかし逆に、精神的、肉体的、経済的な高負荷を乗り越えられないと、能力をまったく発揮できずにバーンアウトしてしまう恐れがあります。そもそも高校卒業を捨てること自体大きな賭けですしね。もちろんこの時点で上手くいかなかったからといって人生がパーになるわけではまったくないのですが、準備と覚悟がどの程度整っているかを認識する必要があります。
さて、ここからまとめに移りましょう。
どのルートを選ぶにせよ、一番大切なのは、今の質問者さんのレベル、つまり肉体的な能力と精神的な覚悟に合ったチームや指導者に出会うことです。ここは本当に重要で、どのルートにも共通します。この点だけは決して忘れないでください。
そして、これもどのルートにも共通するのですが、選びたいルートや選びたいチームの出身者が、その後どうなっているのかを良く調べてください。一種のリサーチ能力ですね。
一見強豪チームに見えるのに、なぜか、みんなすぐに選手を辞めてしまうようなチームもあるでしょう。こういうチームはえてして、短期的な目標に対して燃え尽きてしまうことを求める傾向がある可能性が高いです。
逆に、楽しくやっているようにしか見えないのに、強豪選手をたくさん排出しているチームもあるかもしれません。なにか、強くなるための秘訣があるんでしょう。
まあ、受験の時の学校探しみたいなものですね。
ちなみに、具体的な調べ方としては、「JCF ロード 強化指定」と検索すると、JCF(日本自転車競技連盟)の強化指定選手のページがでてきます。この中のジュニアの欄をみて所属校(or所属チーム)をチェックし、さらに選手自身の名前で再検索をかけ、どの様なバックグラウンドを持っているかを調べることで具体的な選択肢がみえてきます。
最後に重要なポイントを一つ。あるルートやあるチームが合わなかったとしても、まったく諦める必要はないんです。客観的に判断し、進路を変えればいいだけです。現に、国内ロードレース界でも、過去に学校の自転車部が合わず、辞めてしまった選手がいます。しかしその後、学校の外のチームに移り、トップ選手のひとりにまで成長しました。
調べる能力と、トライ&エラーを繰り返す忍耐力が必要です。心肺能力や持久力ももちろん大切なんですが、自転車から降りている時間に、リサーチ&アジャストできる力も、選手としての大事な能力なんですよ。
文:栗村 修・佐藤 喬
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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