人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サイクル ロードレース コラム 2022年3月16日

【輪生相談】首都圏の自転車のマナーがあまりにひどく、自転車の地位向上も遠いと思わざるを得ません

輪生相談 by 栗村 修
  • Line

栗村さん、いつもテレビやサイクルイベントなどで拝見し、応援しております。
私は普段ブルベやツーリング、通勤で自転車に乗っており、年間概ね10,000kmほど走っておりますが、栗村さんの「自転車通勤には社会的地位の向上が必要」に共感しつつ、ひとつ懸念があります。
私の居住地:宇都宮は自転車の地位が高く、走行している人たちも非常にマナーが良く、「自転車のまち」に恥じない素晴らしい関係が築けていると思いますが、職場のある首都圏の自転車のマナーがあまりにひどく、ノーヘルは当たり前、信号無視、車道右側逆走、飛び出しが頻発し、これでは自転車の地位向上も遠いと思わざるを得ません。
行政や会社の取り組みも必要ですが、自転車ユーザーの意識向上も重要と思います。
栗村さんはここに対するお考えはないでしょうか?是非皆さんの啓蒙のためにもお願いします!

(会社員 男性)

栗村さんからの回答

栗村さん

おっしゃる通りで、自転車のマナーはまだまだ改善が必要な状態が続いています。ですから、質問者さんも書かれた通り意識向上が必要なのですが、しかし「意識向上」が具体的に何なのかが問題です。

僕は、自転車の定義を正確に認識してもらうことからだと思っています。

今のところ、多くの日本人は自転車を、歩行者の延長線上にあるものとしてとらえていると思うんですよね。ママチャリでは歩道を走るのが一般的になっているのは、その結果かもしれませんし、逆に原因かもしれませんが、象徴的です。「歩行者と同じ場所を移動するもの」なのですから。

もちろん歩行者でもルールやマナーは守らなければいけないわけですが、自動車やオートバイに比べると、かなりゆるくなっています。右側歩行が徹底されているわけではないですし、横一列になって歩道を占拠していたり、スマホを見ながらの「ながら歩き」や信号無視も当たり前。皆歩道上を好き勝手に歩いています。けっこうなカオスですよね。

栗村さん「自転車の定義を"歩行者っぽいもの"から"車両"に変えるだけで、光景は大きく変わるということです」

日本の自転車のマナーがいまいちなのは、自転車が、今述べたようなフリーダムな歩行者の延長線上に位置づけられているからではないでしょうか。つまり、「車両」であるという認識が弱いわけです。

でも、自転車が(軽)車両であることを強く意識してみたらどうでしょうか。原付スクーターが歩道を暴走したり、信号無視や逆走をしていたら、これはもう通報ものです。ノーヘルもダメです。

要するに、自転車の定義を「歩行者っぽいもの」から「車両」に変えるだけで、光景は大きく変わるということです。自転車が軽車両であることがより強く周知されれば状況は一変すると思うんですよ。

ではそのためにどうするか、ですが、一つの手段は法律の改正、あるいは運用の変化による厳罰化ですよね。ビシビシ取り締まられるようになれば自転車の見方も変わります。

しかし、それだけではないと思います。社会の価値観って、変わるときには大きく変わるじゃないですか。たとえば昭和はどこでもタバコを吸うのが当たり前でしたけれど、今は文字通り煙たがられるようになりました。たった数十年での変化です。そしてここ数年のコロナ禍による価値観の変化はまさに劇的でした。

更に日本人は同調圧力に弱く、「監視社会」的傾向が強い民族なので、ひとたび「自転車マナーポリス」的なスイッチが入ると、あっという間に改善が進むように感じます。

自転車のマナーはまだまだ改善が必要、と冒頭に書きましたが、じわじわと少しずつ、自転車への見方が変わってきているのも事実だと思います。すなわち、「自転車=軽車両」と考える人の割合は、まだまだマイノリティではありますが、徐々に増えていると思うんです。

そんな人の割合が一定数に達したとき、具体的には多数派に転じたとき、日本社会の自転車への目線が大きく変わる気がします。

そして、我々サイクリストができることは、率先して正しい乗り方を実践していくことでしょう。マナー違反者に対して言葉で注意することもできますが、「逆ギレされた」という話もよく聞きますので(実際、僕も何度か逆ギレされました)、まずはひとりひとりが行動で示していくですね。僕も地道に頑張ります。

文:栗村 修・佐藤 喬

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ご質問の投稿はこちら


栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ