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国内のロードレース界を再構築する上で以前から必要だと感じている項目の一つに「わかりやすさ」があります。
「わかりやすさ」というものをもう少し突っ込んで表現すると、「価値の明確化」とその「優先順位の設定及び共有」になります。
具体的に書くと、
① なにを目指すのか?(それを達成するとなにを得れるのか?名誉?お金?)
② そこに向かう「手段」と「経路」を設定する
③ 設定した「手段」と「経路」をステークホルダーが共有する
上記のステークホルダーとは、主に「チーム」「選手」「メディア」「ファン」「スポンサー」「レース主催者」などになります。
ごく当たり前のことですが、「なにを成し遂げるために」「だれが」「どうやって」日々の行動を継続していくのかを皆が共有することが重要になってくるわけです。
そういった意味では、現在の日本男子ロードレース界には「平時」よりも「わかりやすいカタチ」が構築されています。
それは、「東京五輪男子自転車ロードレース代表選考」に関する道筋がしっかりと開示されていて、概ねその内容が受け入れられ、多くのチームや選手にチャンスがあり、それを当事者たちが理解して真剣に目指している状況となっているからです。
◯なぜ、UCIレースに出場してUCIポイントを獲得するのか?
⇨日本のUCIナショナルランクを上げて出場選手枠を増やす(2019/10/27まで)
⇨2020/5/31時点の代表選考ランク上位者が五輪代表に選ばれる(UCIポイントに係数を乗じる)
⇨代表選考ランクポイントを多く獲得できるレースに出場する(それらのレースのバリューが上がる)
もちろん、五輪日本代表になることだけが目標になってしまうのは本末転倒ではありますが、それでも、五輪に出場することで得られるメリットが個人にもチームにもスポンサーにもあることは間違いなく、そういったことから「平時」よりもわかりやすい共通認識が構築されています。
要するに現在は「五輪」という外部要因により「なにを目指すのか?」という目的が自然に設定されており、そして、「五輪代表選考ポイント」というシステムがステークホルダーに共有されている状態なわけです。
問題はこの「五輪」というものがなくなった時に、日本自転車界独自の普遍的な目標を設定し、そして、そこへ向かうための明確な「システム」を構築していけるかになってきます。
もうかれこれ20年近く同じことを言い続けている気がしますが、日本のロードレース界はずっと「総論賛成各論反対」状態に覆われています。
問題の根底にあるのは、もしかすると自尊心などを中心とした「人の感情」なのかもしれません。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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