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サイクル ロードレース コラム 2018年10月17日

働き方改革

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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今年の6月29日に、政府が重要法案として進めてきた「働き方改革関連法」が参院本会議で可決し成立しました。

ここ数年よく耳にする「働き方改革」という言葉。

一般的には「ブラック企業」や「長時間労働(サービス残業など)」対策としてのイメージが強い法律ですが、本質的に目指すところというのは、「日本という国がこの先沈没しないため」の法律であることは間違いありません。

何事に於いてもそうですが、長・中・短期のそれぞれの時間軸で物事の是非を個別に判断してしまうと、同じ取り組みであってもその評価の内容が正反対になってしまうことが多々あります。

「働き方改革」についても、短期の時間軸のみでみた場合、「働き方改革」がもたらすメリットとよりも、「働き方改革」が生み出すデメリットの方が大きくなってしまうように感じます。

事実、ネットで検索してみると、「アンチ働き方改革」といった内容の記事がそれなりにでてきます。

もちろんその内容というのは殆どが正論ですし、決して間違った主張だとは思いません。

私自身も、「ただ単に楽をしたいひとが働き方改革を都合よく解釈している」と感じる瞬間に何度も遭遇しました...。

しかし、現行の労働環境がこのままずっと続いていってしまうとしたら、それはそれで長期的には大きな問題を生み出してしまうのは間違いないところだったりもします。

天然資源の少ない日本という国が「GDP世界3位」に君臨していられる理由というのは、間違いなく「質の高い労働力」があるからです。

この「質の高い労働力」というのは、「国にとっての質」であり、「個にとって心地よい労働環境」かどうかはまた別問題となります。

ひとつだけ言えるのは、現在、日本の国内にある「安全」「便利」「清潔」「正確」「裕福」などの要素は、日本の労働力が生み出したポジティブな副産物であることは間違いありません。

ですので、この先、日本の労働力の質が低下していけば、「安全」「便利」「清潔」「正確」「裕福」などの要素も比例して低下していく可能性は否定できません。

結局のところ、現代の資本経済という仕組みは、スポーツ同様の「競い合いシステム」であるのは間違いなく、良いか悪いかは別として、「富」という資本をなんらかの形で国同士が奪い合う「大規模なスポーツイベント」が開催されているわけです。

ここで敢えて国家をスポーツに置き換えると、「国=チーム」、「官僚・大企業経営陣=監督・コーチ」、「労働者=選手」といった感じになるのでしょうか。

こう考えるとなんとなくわかりやすくなってきます。

才能(資源)や能力がないのに休んでばかりでやる気のない選手(労働者)だらけのチーム(国)があれば間違いなく「全戦全敗(国家破綻)」が待ち受けていますし、例え才能(資源)が無くとも他のチーム(国)よりもハードなトレーニングを積むまじめな選手(労働者)が多ければ、それなりに勝ち進むことが可能となってきます。

但し、ハードワークがオーバーワークになってしまえば、選手(労働者)はカラダを壊してしまうことになります。

ハードワーク無しに勝利はないわけですが、オーバーワークには気をつける。「働き方改革」が目指すところはこの部分なのだと思います。そして、ベテラン選手(高齢労働者)の有効活用(若手育成)や、外国人助っ人の獲得などもチーム(国)としては重要な要素になってくるでしょう。

こんな風に理解することができれば、「働き方改革」をただ単に「楽をするための法律」と都合よく解釈するひとの数は減るように感じます。

栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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