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サイクル ロードレース コラム 2016年6月17日

事実は小説より奇なり

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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2月の 『ツアー・オブ・カタール』 で大腿骨骨折という大怪我を負った新城選手が、現在、UCIワールドツアーの 『ツール・ド・スイス』 を走っています。

連日の走りやリザルトをみる限り、4ヶ月前に大腿骨を折った人間とは思えないほどの回復ぶりをみせています。

そもそも、レベルが違うとはいえ、世界的にみてもコース難易度が高い 『ツアー・オブ・ジャパン』 を復帰戦に選び、そして、そのなかでも最高の獲得標高を誇る 『伊豆ステージ』 で勝利を挙げたことは、個人的には大袈裟な表現ではなくて 『本当に奇跡が起きた』 と考えています。

それでは、新城選手のこの回復力は、いったいどこから生まれているのでしょうか。

まずは、新城選手の 『強靭な精神力』 が根底にあるのはいうまでもありません。

カタールでの手術直後から強烈な痛みに耐えながらリハビリを開始した新城選手の姿がSNSなどを通じて伝わってきましたが、いくら強靭な肉体を持った新城選手といえども、カラダから発っせられる痛みに対する感度は常人と同じはずです。

恐らく、普通の人間であれば気を失うレベルの痛みが全身を襲っていたであろうにも関わらず、我々の知らないところで人知れずリハビリを黙々と続けてきた精神力は、到底真似のできるものではないと言いきれます。

痛みに耐える精神力がベースとなり、そして、その上に持って生まれた肉体的な資質がうまく作用し、普通では起こり得ない 『奇跡』 が目の前で起きたのです。

新城選手はこれまで何度も何度も観る側の我々の常識を覆すような偉業を成し遂げてきました。

慣れてしまうのは良くないな、と、自分でも思いますが、最初は驚異的に思えたことが次第に慣れに変わり、そして、いつしか当たり前になってしまうというようなことが、人間社会では多々あります。

しかし、『ツアー・オブ・ジャパン』 の現場でみた 『リアルな奇跡』 を決して当たり前と思わずに、新城選手の 『事実は小説より奇なり』 を地でいっている挑戦を応援していきたいと思います。

栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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