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昨今、『ブラック企業』 という言葉をたまに聞くことがあります。
一般的には過酷な勤務を強いる企業のことを指しますね。
ただし、この 『ブラック』 というのは、ある意味で 『セクハラ』 などのハラスメント系と一緒で、受け手がどう感じるかで、本質的な部分は変わってくるように感じます。
『もっと触ってください!』、『むしろもっと罵倒してください!』 と懇願された場合はハラスメントにならなさそうなのと同様で、自分の意志で 『たくさん働きたい!』 と社員全体が喜んで働き倒した場合は、いくら過酷な勤務形態でも 『ブラック企業』 には該当しないのかもしれません。
特に個人企業の場合、自分で仕事を受けて、自分でスケジュールを組んで、その結果ひたすら働き続けて苦しくなったとしても 『ブラック企業だあ』 と吠えるわけにはいきません...。
先日、京都・美山でのイベントに於いて、キッズサイクリスト向けに 『プロを目指す上で子供の頃にするべきこと、逆に気をつけること』 の話をしました。
その上で、なんとなく 『ブラック企業』 の話と、『キッズサイクリスト』 へのアドバイスには、若干似た要素があるように感じました。
自転車に乗ることが遊びの延長で、毎日乗っても疲れ知らずで、努力とかではなく、飽きることもなくそれこそ天職のように自転車に乗り続けられる子供であれば、好きなだけ自転車に乗っても良いのかもしれません。
一方で、親の意思や、子供なりに妙な 『責任感』 や 『義務感』 を感じることで一定期間必死にがんばった結果、良い成績がでても、あるタイミングでモチベーションが尽きてしまい、これからという時に辞めてしまうケースは実は少なくありません。
ハッキリ言いますが、自転車ロードレースの選手になるということは、その過酷さから考えると、ある意味で 『ブラック企業』 に勤めることと同様な部分が多々あります。
安定しない給料、大きな肉体的苦痛が伴う練習メニュー、一年の大半を自宅で過ごせない勤務形態、大怪我をするリスクがあっても 『前に上がれ~』 と無線で無理を強要する上司、お菓子を食べただけでレースのメンバーから外される理不尽さ。
『ブラック企業』 という発想が頭の中にある人は、もしかしたらプロ選手にはなれないのかもしれません。
プロというのはとても華やかで憧れる世界ではありますが、一方で、普通とは違う何かを持っていなければ決して務まることのない仕事でもあります。
そうやって考えると、いま 『ジロ・デ・イタリア』 を走っているすべてのプロ選手たちの偉大さを改めて実感します。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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