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少し前になりますが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に、中国の強大な不動産・メディアコングロマリットである 『大連万達グループ』 が、『ツール・ド・フランス』 の主催者である 『ASO』 の買収に興味を持っているという記事が掲載されました。
『大連万達グループ』 は、1988年に中国・大連で不動産会社としてスタートし、その後、映画館の買収をきっかけに映画業界への参入を開始。
そして、近年では、リーガ・エスパニョーラの 『アトレティコ・マドリード』 への出資を行ったり、トライスロンの 『アイアンマン』 ブランドを所有する 『ワールド・トライアスロン・コーポレーション』 を約780億円で買収するなど、スポーツ業界への進出も加速しています。
また、国際的なスポーツマーケティング企業である 『インフロント・メディア(UCIやVelonとも契約している)』 の買収権も保有しているとされており、不動産 ⇒ 映画 ⇒ スポーツ といった、総合型エンターテイメントコングロマリットへの成長を模索している模様です。
『ASO』 の買収の噂がでる前には、『ジロ・デ・イタリア』 を主催しているイタリアの 『RCS』 にも触手を伸ばしていたとも報道されており、プロサイクリング界への参入の意思はどうやら本物のように感じます。
世界ナンバーワンスポーツであるサッカー界では、すでにこういったグローバルマネーが大量に流入してきており、もちろん、そこにはメリットとデメリットの両面が生まれているのでしょうが、確実に市場の拡大(雇用の拡大、関係者やプレーヤーの収入向上、スポーツエンターテイメントの質向上)は進んでいるはずです。
『ツール・ド・フランス』 を保有する一族企業の 『ASO』 としては、『ツール・ド・フランス』 のグローバル化は嬉しい現象である一方で、『ツール・ド・フランス』 というスポーツエンターテイメントの市場価値が高まれば高まるほど、買収を含めた様々な外圧に晒されるリスクも高まり、それらの対応には非常に気を遣っているようにも映ります。
スタジアムスポーツではない 『自転車ロードレース』 は、経済的な参入障壁が低いものの、一方で、ビジネスとしての仕組みが脆弱(人の繋がりや経験値の上に成り立っている部分が多々ある)なため、なかなかお金を持った人たちが真っ当なやり方で参入できない側面を持っています。
今回の噂がどの様に展開していくかはわかりませんが、一先ず今後の流れに注目していきたいと思います。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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