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昨年11月、WADA(世界反ドーピング機関)が、ロシア陸上競技界の組織的ドーピング疑惑を調査してきた独立委員会の報告書を公表して、IAAF(国際陸上競技連盟)がロシア陸連に対して 『資格停止処分を科すべき』 と勧告したという衝撃的なニュースが流れました。
そして、現在、IAAFから無期限の資格停止処分を科されたロシア陸連については、来年のリオデジャネイロ五輪までに復帰できないのでは?という見方が有力となっているようです。
もし、ナショナルチーム丸ごと五輪に出場できないような事態となったならば、文字通り大きな代償を支払う形となります。
一方、先んじてドーピングとの戦いに身を投じてきた自転車ロードレース界については、2015年のツール・ド・フランス期間中に行われたドーピング検査の詳細をUCI(国際自転車競技連盟)が公表し、ツール期間中に計656回のドーピング検査が行われ(血液検査が482回、尿検査が174回)、陽性反応が検出されたのはルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)の1件のみという結果となりました。
1件の陽性が良い結果なのか悪い結果なのかは判断が分かれるところではありますが、厳しい検査下に置かれている現在の状況でこの数字は前向きに捉えても良いのではないか?とも感じております。
ちなみにパオリーニから検出された薬物は能力向上系の薬品ではなく、彼自身の精神疾患が原因で摂取したものだといわれています。
そんな中、イタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙に、2014年シーズンにEPO陽性で2年間の謹慎処分となったラボッティーニのインタビューが掲載されたようです。
『私には何もない。私は地獄のなかにいて、すべてに見捨てられている。陽性反応のニュースが流れたのち全てが崩壊した。両親は口をきかなくなり、妻と子供も私から離れていった。私には誰もいない。』
2012年のジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾り、その後、イタリアのトッププロとしての自分の居場所を確保するために薬に手を出してしまったというラボッティーニは、多額の罰金を払うためにクルマなども売り払ったといいます。
不正の代償は決して小さくないはずなのに、なぜ、薬物に手を染めてしまう選手が一定数存在するのか。
『不正をしてまで勝ちたくない』
全てとは言わないまでも、日本人の心のなかには未だに 『武士道精神』 のようなものが宿っています。
『不正の先には大きな代償が待っている』 ということを、これからの若い日本人選手たちにもしっかりと理解しておいて欲しいと感じます。
『不正に得た勝利よりも、クリーンに戦って負け続けた選手人生の方がよっぽど美しい』
心からそう思います。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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