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『ツール・ド・フランス』 は、前半戦の9ステージを終え、戦いの舞台を最初の山岳ステージとなるピレネー山脈へと移します。
ピレネーステージ初日は、『ラ・ピエール・サンマルタン』 にゴールする、いきなりの超級山頂フィニッシュとなります。
休息日という名の大移動を終えた選手たちは、フランス革命記念日にまず最初のテストを受けることになり、もしかすると優勝候補に挙がっていた選手のうちの何人かが、事実上の戦線離脱となってしまうかもしれません。
そんな、『最初の審判の日』 を前にした総合有力勢の順位とそれぞれのタイム差は以下の様になっています。
1位 Christopher Froome (GBr) Team Sky 31h34m12s
2位 Tejay Van Garderen (USA) BMC Racing Team +12s
5位 Alberto Contador (Spa) Tinkoff-Saxo +1m03s
6位 Rigoberto Uran (Col) Etixx - Quick-Step +1m18s
7位 Alejandro Valverde (Spa) Movistar Team +1m50s
9位 Nairo Quintana (Col) Movistar Team +1m59s
13位 Vincenzo Nibali (Ita) Astana Pro Team +2m22s
14位 Warren Barguil (Fra) Team Giant-Alpecin +2m43s
15位 Robert Gesink (Ned) Team LottoNL-Jumbo +2m52s
16位 Bauke Mollema (Ned) Trek Factory Racing +2m56s
17位 Jean-Christophe Peraud (Fra) AG2R La Mondiale +3m30s
18位 Joaquim Rodriguez (Spa) Team Katusha +3m52s
19位 Andrew Talansky (USA) Cannondale-Garmin Pro Cycling Team +4m17s
21位 Romain Bardet (Fra) AG2R La Mondiale +4m38s
29位 Thibaut Pinot (Fra) FDJ.fr +8m05s
4強といわれる選手たちのなかでは、明らかにフルーム(スカイ) が優位な位置につけているといって良いでしょう。
このあとはタイムトライアルステージがゼロであることから、総合優勝を争う上で重要になるのが、登坂力と安定感、そしてチーム力ということになります。
単純な登坂力でみると、クライマーのキンタナ(モビスター)とコンタドール(ティンコフ)が横一線、少し落ちて総合力のニーバリ(アスタナ)といった認識が一般的ですから、現状で最も不利な状況に置かれているのはニーバリともいえます。
それは本人もよく理解していることから、このあとのステージではニーバリのプロフェッショナルらしい攻撃的な走りが繰り広げられるはずです。
また、キンタナとコンタドールもすでに分単位の差がついていることから、ニーバリ同様に早めに仕掛け(サプライズを含む)を狙ってくることが十分に考えられます。
逆に言えば、フルームはチーム力でライバル勢の奇をてらった動きを封じ込め、力勝負のフィールドでライバルたちの後輪をしっかり抑え続ければ、2度目のマイヨ・ジョーヌがみえてくることになります。
しかし、強力な3人のライバルたちが、それぞれタイミングをズラした早めの仕掛けを選択してきた場合、それらをチーム・スカイ1チームで抑えこむのは決して簡単なことではありません。
そこでポイントになるのが、ヴァンガーデレンとBMCの存在となります。
彼らにとっては、パリでの2位表彰台も決して悪い結果ではないはずですから、フルームとの直接対決に挑んでマイヨ・ジョーヌは狙うものの、わざわざ2位から転落するようなリスキーな戦略を選択してくる可能性は極めて低いともいえます。
BMCがコンサバに走ることで、結果としてスカイ&BMCの連合軍が結成され、合計16名のアシストたちがレースを正常な流れへとコントロールし、勝負は全て 『勝負どころでの力勝負』 という展開に導かれるかもしれません。
そうなってしまうと、3人のライバルたちは残された大小7つの上りゴールのステージで、フルームとの差を地道に詰めていく必要がでてきます。
もし、今夜の超級フィニッシュで、フルームとヴァンガーデレンが良いクライミングをみせた場合、上記の様な力関係が明確に生み出されることになります。
今年のツールを占う上で、第10ステージが非常に重要な日になるのは間違いありません。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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