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サイクル ロードレース コラム 2012年12月10日

成長するサラブレッド

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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本日は、12月30日にJスポーツにて放映予定の『検証!第100回ツール・ド・フランス』の収録のため、久しぶりにお台場にあるJスポーツスタジオまで行ってきました。

来年、記念すべき100回目の開催となるツール・ド・フランスの見どころなどを中心に、Jスポーツ解説陣の皆さんとあれやこれやと語り合ったのですが、その中でランス・アームストロングの一件も話題に挙がり、我々の置かれている現状などを再認識する良い機会となりました。

何はともあれ来年のツール開幕がとても待ち遠しいです

話は変わりまして、先週末に静岡県富士宮市の朝霧高原にて開催された『第18回シクロクロス全日本選手権』に於いて、宇都宮ブリッツェンのシクロクロスチームに所属する小坂光選手が、トップと3秒差の2位という素晴らしいリザルトを残しました。

小坂選手自身は非常に悔しがっていましたが、一つの壁を乗り越えつつある彼の姿をみて個人的に小さな安堵感を覚えました。

小坂選手は、2012年シーズンから宇都宮ブリッツェンのロードチームを離れ、シクロクロスの専属選手として新たな活動を開始しているのですが、その方向性(ロードチームから外す)を決めたのは私自身でした。

二世選手として学生時代(大学に通いながら宇都宮ブリッツェンに所属していた)から優れた才能をみせる一方で、卒業後の進路として彼が選んだ道は『就職』。

一年間働きながら宇都宮ブリッツェンでロードレースを戦ったものの、成長するチームのなかに於いて、彼の居場所というのは徐々になくなりつつありました。

小坂選手自身闘志を内に秘めるタイプではありましたが、就職一年目の彼は完全に『自分の道』を見失ってしまっているように私には映りました。

そして、偉大なシクロクロスライダーを父に持つ(49歳ながら今回の全日本でも3位)サラブレッドは、まずは尊敬する父親と同じ道(フルタイムで働きながらシクロクロスに専念する)に進むべきだとも感じました。

小坂選手のフィジカルの才能は多くの関係者が認め、私自身もどこかで小坂選手がロードレースに夢を懸けてくれることを期待した時期もありました。

しかし、人は自発的な行動を開始しない限り、大きなパワーを生み出すことはできません。

小坂選手の今回のリザルトは、彼自身が望む道へ進み、そしてそこで多くの困難を乗り越えて手にした結果です。

レース後に小坂選手から送られてきたメールにはこう書いてありました。

『凄く悔しいけれど、自信にもなりました』

ここに書かれていた『自信』とは、恐らく2位でゴールできたという自信ではなく、『自分が選んできた道は間違いではなかったんだ』という意味だったのだと理解しています。

人生に於いて、『遠回りこそが一番の近道であった』という状況は決して少なくありません。

小坂選手の戦いははじまったばかりです。

栗村 修

中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。

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