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[ジャパンカップ前夜にバッソやサガンといったビッグネーム達と共に壇上へ上がる増田選手]
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS


ジャパンカップ前日の10月20日(土)に、宇都宮ブリッツェンに所属する増田成幸選手が、来季から名称を変える世界ランキング3位のイタリアのプロチーム『キャノンデール・プロサイクリング(現リクイガス・キャノンデール)』と2013シーズンの契約を結びました。
今シーズン(宇都宮ブリッツェンとして)の増田選手の最終レースは、10月28日(日)に開催されるJプロツアー最終戦の『JBCF輪島ロードレース』となります。
今回の契約の話が増田選手へ最初に持ちかけられたのは今年の夏頃だったと思います。
Jプロツアーチームの『キャノンデール・スペースゼロポイント』を率いている佐藤氏から、あくまで「可能性があるかもしれない」というレベルの話しとして本人に直接打診がありました。
すぐに増田選手から相談を受けましたが、「増田本人にチャレンジする意志があるならば断る理由はないと思う」と、ブリッツェン側としても移籍へ前向きである旨を本人へ伝えました。
正直なところ、この段階ではまだこの話がまとまるとは思っていませんでした。
今回のオファーは、増田選手個人に対してというよりかは、グローバル化を目指す『キャノンデール・プロサイクリング』のチーム方針が根底にあり、「よい日本人選手はいないか?」というものがまず先に存在していたからです。
当然、候補に上がった日本人選手というのは増田選手だけではなく、他の有力選手たちの名前も数多く上がっていたと聞いています。
しかし幸運にも、その中から増田選手に白羽の矢が立ったのです。
増田選手のビッグチームへの加入というのは、彼の実力だけで勝ち得たものではありません。
既に説明したように、2013年以降のチーム方針というものが根底にあり、また近年本場欧州で素晴らしい活躍をみせている、別府選手、新城選手、土井選手、宮澤選手などの存在も大きく関係していることでしょう。
ですので、増田選手にとってはいくつもの大きな責任を背負ってのチャレンジとなります。
ただ一方で、これまで欧州でプロとして活躍してきた日本人選手のなかで、その選手個人への純粋なオファーとしてプロのキャリアをスタートした例というのはまだあまりないというのも現実ではあります。
チーム側からの純粋なオファーでプロ入りしたのは、恐らく1980年後半から1990年前半に活躍した市川雅敏氏だけかもしれません。
他の選手に関しては、日本のマーケットや企業というものが、スタートの段階では多少なりとも関係していたのは既に周知されているところです。
要は、増田選手自身が、このチャンスを今後どう生かしていくかということになっていくでしょう。
参考までに、増田選手のフィジカル能力を単純に示すデータを紹介します。
それは今年のツアー・オブ・ジャパンの富士山ステージのリザルトです。
1位 BALIANI Fortunato チームNIPPO 40m23s 16.9km/h
2位 ARREDONDO MORENO Julian David チームNIPPO +19s
3位 BUTLER Christpher チャンピオンシステム +58s
4位 DABROWSKI Jaroslaw アモーレエヴィータ +1m44s
5位 LEBAS Thomas ブリヂストン +1m58s
6位 増田成幸 宇都宮ブリッツェン +2m10s
7位 YEUNG Ying Hon Ronald 香港チーム +2m16s
8位 SONNERY Blaise ブリヂストン +2m42s
9位 清水都貴 ブリヂストン +3m01s
10位 平塚吉光 シマノレーシング +3m25s
この時の増田選手の体重は62kgほど。
同じくらいの体重で増田選手以上のタイムをだす選手は世界中にはたくさんいるでしょう。
ちなみに上記リザルト内でグランツールを走っている選手は3人います。
BALIANI 2000〜2008ジロ8回出場7回完走 総合12位 山岳賞2位など(Selle Italia、Panaria、CSF、Micheなどに所属)
BUTLER 2011ジロリタイヤ(BMC所属)
SONNERY 2008&2009ジロ完走(AG2R所属)
もちろんこれらは単なる参考にしかなりませんが、スプリンターでもパンチャーでもない増田選手が『キャノンデール・プロサイクリング』に加入後にできる仕事の種類というのが自ずと見えてきます。
増田選手、というよりか、現在の宇都宮ブリッツェンに所属しているある一定以上の年齢の選手やスタッフ(私も含めて)は皆、欧州で活躍するという夢を持って選手を続けながらも、それぞれどこかの段階で挫折を経験した者ばかりです。
なので、自虐的な表現をするならば、増田選手は『負け犬集団から生まれたチャレンジャー』と言ってもいいかもしれません。
正直、既に29歳となった増田選手へ過剰な期待をするつもりはありません。
しかし、来季が彼にとってのラストチャンスになるのは間違いありませんから、力の限り挑戦して欲しいと思っています。
私の先輩世代の選手たちが世界への挑戦を開始し、私自身も相当に無茶なチャレンジをしてきました。
自分で言うのはおこがましいですが、これまでのそうしたチャレンジの積み重ねが今を創りだしているのだと自負しています。
増田選手のチャレンジが、未来に繋がる階段となっていくことを心から願います。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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