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ドイツブンデスリーガの『ボルシア・ドルトムント』に所属し、ブンデスリーガ2010-11シーズン&2011-12シーズン、更にカップ戦のDFBポカール制覇に貢献したサッカー日本代表FWの香川真司選手が、イングランドプレミアリーグの名門クラブ『マンチェスター・ユナイテッド』へ移籍するというニュースが流れています。
香川選手の凄いところは、ドイツ移籍直前の2ヶ月半(J1出場11試合)を除いてはずっとJ2(3シーズン)でプレーしており、それでも本場欧州へ移籍後すぐにトップリーグの優勝争いを演じるビッグクラブのスター選手となってしまったことです。
これは、運や才能だけでは成し遂げることのできない事実なだけに、改めてJリーグを頂点とした日本サッカー界の育成システムの素晴らしさを物語っていると感じます。
事実、現サッカー日本代表監督のアルベルト・ザッケローニ氏も、日本の選手育成システムは既にイタリアを凌駕しているとインタビューで語っていました。
日本のプロリーグから即戦力としての選手が『輸出』されることについては既にプロ野球界では当たり前になっており、日本に将来のメジャーリーガーを夢見る少年がいたとしても、中学を卒業してすぐに渡米する選択肢はまず選ばないでしょう。
同様にサッカー界についても、現在はJのクラブからタダ同然で即戦力になり得る人材が世界各地へ『輸出』されはじめています。
これは、野球やサッカー界が、まず日本国内で才能のある人材をかなりの数の中から発掘する器を有した上で、更に選ばれた選手たちに対して日本人の特性にあった独自の理論で育成するシステムを構築しているからです。
かつてのサッカー界は、海外でプレイするためには若いうちに海を渡って本場で何シーズンも修行し、様々なことを学んでいって、そしてプロクラブとの契約に辿り着くというのが最も近道と言われていました。
しかし、現在は国内に優れたシステムを有しているので、若いうちに無計画に海を渡ることは下手をすると遠回りになってしまうことを指導者を含めて皆が理解しています。
現在の日本ロードレース界を見てみると…
残念ながら野球やサッカーの様な優れたシステムは構築されていないので、海外で通用する才能を持った選手については、心の準備が出来次第早めに海を渡るのが近道になります。
しかし、もしこの先、日本のロードレース界が野球やサッカーの様な発展を求めていくのであれば、同様のシステムを国内に構築しなくてはならないのは明白だったりもします。
本場に渡れば皆プロ選手になれるのか…?
答えは当たり前ですがNoです。
本場で生まれて、本場で自転車競技をはじめた若者の、その殆どがプロ選手になれずに自転車競技を辞めていっています。
必要なのは、本場での経験以前に、プロ選手になるための肉体及び精神的な才能と準備です。
サッカーの香川選手がそうだった様に、優れた才能を持った選手を星の数ほどの人材の中から発掘し、その選手の特性にあった基本的なトレーニングを積ませて心身ともにある程度の準備を積ませれば、ビックリするような結果がすぐに生まれてしまいます。
現在、プロの自転車選手が世界中に1,000人いるとして、彼らを生み出した分母はいったい何人だったのでしょうか?
上記の割り算を行えば、単純にプロの自転車選手が生まれる確率がはじき出されます。
同時に、日本で毎年何人の子供たちが自転車競技をはじめれば、メジャーな国と同等の実力を『運』に頼らずに生み出すことができるかもなんとなく見えてきます。
おそらくこの数字は、10人や100人といった少ない数字ではないのは明らかです。
仮に、毎年1,000人(かなり少なめに見積もってます)の子供たちが日本中で自転車競技をはじめれば、ツール・ド・フランスなどで安定的に活躍できる選手を輩出する目処がつくとします。
しかし、毎年1,000人の外国人を受け入れてくれる国などありませんし、そもそも毎年1,000人を海外へ派遣するための経済的な仕組みがまったく思いつきません。
毎年1,000人の子供たちが自転車競技をはじめたいと思い、また、親御さんもその気持を理解してサポートするためには、まず国内に最低限のシステムを構築しなくてはならないでしょう。
ロードレースの魅力を日本人全般に宣伝し、そして、興味を持った子供たちが簡単に入り口にたどり着き、時間をかけずに平等な指導と機会(レース)に巡り合えるシステム。
その中から選ばれた選手たちが、本場行きのチケットを手にし、更に生き残った選手がプロチーム入りという栄冠を手にする。
現在の日本ロードレース界は少々頭でっかちになり過ぎているというか、優れた材料を確保する目処も立っていないのに、一流エンジニアやデザイナーを集めて高級スポーツカーを開発しようとしている様な感じです。
いま、欧州で活躍している日本人選手は4名います。
しかし、その後ろの世代には、若干の間が空いてしまっています。
日本人選手の海外挑戦は一昔前よりむしろ増えているのにです…
海外での日本人選手受け入れ体制を必死に構築してくれている方々のためにも、より有効で効率的な選手発掘&育成システムを創りあげる必要があるのです。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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