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1983&84年のツール・ド・フランス覇者で、他にもミラノ〜サンレモやジロ・デ・イタリアなどのビッグレースを制したフランスの元プロロード選手、ローラン・フィニョンが、8月31日に50歳という若さで癌により他界したとのことです。
フィニョンは、今年のツール・ド・フランスの現地中継でも最後まで解説を務め、多くのファンから熱い声援を受けていました。
私は、ツールなどの中継の際、現地放送の音声を片耳で聞きながら解説を行ないますが、今年はフィニョンの「かすれてしまった声」をずっと聞きながら3週間を過ごしました。
本来、前半のみの解説を担当する予定だったところを、結局、本人の強い希望により最後まで担当しつづけたとのこと…
熱のこもった解説を聞き、「体調は回復しているのかな?」と勝手に想ったりもしてました。
私がロードレースをはじめた頃のスター選手は、「ベルナール・イノー」と「グレッグ・レモン」、そして、「ローラン・フィニョン」の3人でした。
フィニョンは、過去の人になりつつあった1989年に、ミラノ・サンレモで連覇を飾ると、続けてジロ・デ・イタリアを制覇。
そして、その年の夏には、未だにツール・ド・フランスの総合1位と2位の最小タイム差(8秒)として記録されているグレッグ・レモンとの激闘をパリ・シャンゼリゼで繰り広げたのです。
この年、私(当時17歳)はフランスのジュニアカテゴリーでレースを走っていました。
フィニョンのジロ制覇を毎日「レキップ」で追っていたのを覚えていますし、マリアローザを着たフィニョンが表紙となった現地の自転車雑誌もすぐに買いました。
そして言うまでもなく激闘のツールは可能な限り毎日テレビで観戦し、シャンゼリゼでレモンがフィニョンを逆転したニュースは、自分が出場していたレースの会場で聞かされました。
ロードレースに対して最も熱くてピュアだった時の記憶というものは、時に強烈に蘇ってくるものです。
これまでも、多くのロード選手の「死」というものに遭遇してきましたが、ローラン・フィニョンという偉大な選手の死は、自分にとっては思いのほか強烈なインパクトを残しました。
「人生は長くない…」
「今やれることを必死にやろう…」
そんな感情が心を過ぎっていきます。
色々なものと戦い続けたローラン・フィニョン、どうか安らかに眠ってくだい。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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