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昨日、全日本実業団連盟の定時総会が開催されました。
一般の方は、実業団レースの存在をあまりご存知ではないと思いますので、この機会に簡単にご説明したいと思います。
全日本実業団連盟というのは43年の歴史を持つ団体で、現在はJCF(日本自転車連盟)傘下に位置づけられています。
現在の主な運営レースは、国内最高峰のシリーズ戦である「Jサイクルツアー」が全16戦、クラブチームの日本一を決める「Jグランプリ」が全23戦、女子の国内最高ランクのシリーズ戦である「Jフェミニン」が全22戦、そして、トラックレースを全4戦と、かなりのレース数が開催されています。
我々が戦う「Jサイクルツアー」は、歴史ある実業団レースを時代のニーズに合った形に変化させるために2006年にスタート、今年で5年目のシーズンに突入しました。
かつて実業団レースは、文字通り企業対抗のレースとして繁栄し、最盛期には国内の自転車関連企業の多くがチームを持ち、それぞれの企業がプライドを賭けて戦う気合の入った大会として盛り上がりました。
聞くところによると、大手企業チームはバスをチャーターし、社員をレース会場へ運んで皆で応援していたとのこと。
現在、日本のレース界で活躍されている役員の方々や、各チームの監督さん、関係者の殆どが、この実業団連盟のレースを経て成長していったと言っても過言ではありません。
そして、その後、時代の変化とともに実業団レースは過渡期を迎えます。
選手たちの海外挑戦がはじまり、やがてチームレベルでの海外遠征が主流になって、実業団レースからの有力選手離れがはじまりました。
世界を目指すためには、世界で揉まれる必要があり、この傾向は当然の方向性である一方、「実業団レースは所詮記録会」、「日本のレースを走っても意味がない」など、海外偏重思想が生まれ、一時、実業団レースは消滅の危機に直面する状況にまで衰退します。
そして、ほぼこのタイミングで「Jサイクルツアー」が誕生し、それまで観客の数が非常に少なかった実業団レースにも「レースを観戦する」という発想が生まれ、お客さんが集まりだし、また、普及カテゴリーの創設で、登録者数もここ数年右肩上がりに増えてきました。
一方で、歴史ある社会人のためのレースである「実業団」という形態と、時代のニーズに合わせた「魅せるレース」というカタチの間にいくつかの矛盾が生まれ、問題を抱えながらの運営が続きます。
資金面では、業界内での補助金がかなりの勢いで減少したため、これまでの運営資金の確保と、更なるレースのグレードアップのための新たな資金調達方法が必要になり、必然的に「スポンサーの獲得=エンターテインメント面の強化」という命題に行き着きました。
しかし、選手強化面にプライオリティを置く現場からは、「エンターテインメント=軟派」的な発想も生まれ、「レースの維持&発展→他のプロスポーツの様な興業化」vs「レースは選手を強化するために存在する→レースの内容を重視」という壁も生まれます。
そんな中、昨年、これまで「個人参加形式」だった登録制度を、最高カテゴリーのJサイクルツアーのみ「チーム登録制」へ移行し、世界のエントリー方式に準ずるとともに、チーム対抗戦の色を濃くする制度改革が実行されました。
変更時には多少の混乱がありましたが、この結果、トップチームの同シリーズへの回帰の流れが生まれ、また、Jサイクルツアーのステイタスアップにも貢献しています。
そして今期、実業団連盟内で新たな改変があり、更なる変化が生まれようとしています。
歴史のある団体だからこそ、厳しい状況下でも多くのレースを開催し続けられた事実がある一方で、変化に対しては逆にアレルギーが存在したのもまた事実でした。
現状、決して大改革が行われているわけではありませんが、この「可能性を秘めたコンテンツ」に既に国内大手のメディアが接触をはじめ、正しい方向に進みはじめていると思います。
ブログレベルでざっと書いたので、矛盾点や不足項目、間違った表現もあるかもしれませんが、この様な感じで現在の状況に至っています。
様々な場所で言い続けていますが、現在の「宇都宮ブリッツェン」の価値向上には、国内レース界の発展が必要不可欠です。
我々は、魅力ある地域(レース)を求めて移動を繰り返すのではなくて、何もない場所に魅力ある文化(レース)を創造しようとしています。
非常に大変なことではありますが、新たな文化を創造すれば価値が生まれ、価値を求めて行動する人たちが逆流をはじめるでしょう。
「価値の創造と提供」がこれからの実業団連盟の課題であり、このことの発展が地域密着型チームの「価値の創造」に繋がっていくのだと思います。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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