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フォレリングの1強状態に待ったをかける選手が続々! 春のクラシックの構図を示すのはトスカーナの“白い道”【Cycle*2025 ストラーデ・ビアンケ ドンネ:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介カンポ広場へと至るサンテ・カテリーナでは名勝負が数多く生まれている
ウィメンズプロトンも3月に入ってワンデーレース中心のプログラムへ。例年大きな注目を集めるのが、イタリア開催のクラシックレース「ストラーデ・ビアンケ ドンネ」である。
ストラーデ・ビアンケとは“白い道”を意味する、イタリア中央部に位置するトスカーナ地方に伸びる未舗装路。レースでは実際に起伏のある白い路面の上を、土ぼこりを浴びながら選手たちが突き進んでいく。純粋な走力だけでなく、パワーやハンドリングもコース攻略に必要な要素だから、舗装路を行くレースとはまた違った雰囲気となるし、展開も異なってくる。
これまでの傾向として、伏兵が現れたり、予想を大きく覆すようなジャイアントキリングはあまり起こらず、力のある選手たちが順当に上位を押さえている。コースが特殊なのもあって、チーム戦の域を超えて、個々の力勝負になることが要因として挙げられる。
白い道にウィメンズプロトンが初めて足を踏み入れたのが2015年。昨年、第10回大会を盛況させ、今年は新たなフェーズへと突入する。
ストラーデ・ビアンケ ドンネ コース全体図
だから、なのかは分からないけど、前回より比較して格段にコース難易度が高まっている。レース距離こそ136kmと昨年から1km減だが、“白い道”の区間が25%増加しているのである。未舗装セクションが13カ所となり、総距離にして50.3km。全行程の4割近くが「土の上」ということになる。
ただでさえ、うねりのあるレイアウトで常に慌ただしいというのに、難度が高まったらプロトンにどんな化学反応が起こるのだろう。スタート後14.1kmで1つ目の未舗装に入ると、それからは舗装と未舗装とが断続的に繰り返される。59.8km地点から始まるセクター6のサン・マルティーノ・イン・グラニアは9.4kmと長く、その間に2カ所の12%勾配が待ち受ける。
ストラーデ・ビアンケ ドンネ 高低差図
中間地点を過ぎてからは、セクション距離は短くなるものの急坂の連続。セクター8のコッレ・ピンツーロは最大15%、セクター9のレ・トルフェは急降下した直後に18%を上る。この2つは終盤の周回コースにも組み込まれており、2回目のレ・トルフェが最終・第13セクターとなる。そこからシエナ・カンポ広場のフィニッシュラインまでが11.7km。カンポ広場へと続く500mの上りも名物で、最大勾配16%に達する最後の難所。上って、下って、上って、下って……勝負どころは数えきれない。
トスカーナの美しい風景が広がる
スケールアップしている難コースを真っ先に攻略する選手は誰か。
2年前の女王、デミ・フォレリングは昨年まで所属したチーム SDワークス・プロタイムを離れ、FDJ・スエズの絶対エースとしてトスカーナへと戻る。2月にスペインでシーズンインを果たし、順当に勝利。3月1日のオムループ・ニュースブラッドでは不覚を取ったが(後述)、コンディションそのものは上々。環境は変わっても、ジュリエット・ラブースやヴィットリア・グアジーニが脇を固めるから、これまで通り積極策を展開できそうだ。何より、地力でもって局面を変えられるだけに、今回も勝利に一番近い立場にあるのは確かである。
環境が変わったといえば、2017年にこのレースを勝っているエリーザ・ロンゴボルギーニもしかり。こちらも戦力が充実していたリドル・トレックを離れ、UAE・チーム・ADQへと移って新たなシーズンを戦っている。2月にはチーム本拠で開催されたUAEツアー・ウィメンで個人総合優勝。チーム力的にロンゴボルギーニをサポートできる選手がどれだけいるかが疑問視されていたが、その不安も払拭された。前回はフォレリングに先着しての2位で、今年は当然8年ぶりのタイトルを狙って走る。
フォレリングにストップをかけるべく、その存在感はロンゴボルギーニ以上とも評されているのがプック・ピーテルセ(フェニックス・ドゥクーニンク)。マウンテンバイク・クロスカントリー種目の世界女王にして、昨年のツール・ド・フランス ファムでも大活躍したヤングスター。今年に入ってシクロクロスシーズンを終えると、すぐにロードへとシフトして好調を維持している。前述のオムループ・ニュースブラッドではフォレリングのアタックに唯一反応し、評価を一気に上げた。みずから「かなり調子が良い」公言するあたりも頼もしい。
昨年のツールを勝ったカタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム・ゾンダクリプト)は、「大好き」だという白い道に照準を定めている。シーズンイン後の2レースはいずれも静かに終えたが、このレースに向けては数回試走を行うなど念入りに準備を進める。「未舗装区間の増加はきっと私に有利に働く」と前向きなコメントも。キャニオン・スラム・ゾンダクリプトには今季、前々回3位のセシリーウトラップ・ルドヴィグが加入。2枚看板で勝ちにいく構えだ。
ストラーデ・ビアンケ ドンネは3月8日(土)午後8:05〜放送!
そして、アンナ・ファンデルブレッヘン(チーム SDワークス・プロタイム)がいることも忘れてはならない。4季ぶりにレースシーンに戻ってきたかつての世界女王は、ストラーデ・ビアンケ ドンネでも2018年に優勝。現状については「イメージからは程遠い」と自己分析。ピークを7月開催のツールにもっていく意識だが、それでもこのレースでしっかり上位入りしておきたい。優勝争いに加わるようだと、先に控えるビッグレースへライバルに脅威を与えることができる。
なお、昨年勝っているロッテ・コペッキー(チーム SDワークス・プロタイム)は今回欠場する。
ちなみに、フォレリングやピーテルセが出場したオムループ・ニュースブラッドでは、フィニッシュまで50kmを切っても逃げとメイン集団との差が14分あるという予想外の流れに。結果的にリアルスタート直後から逃げていたロッテ・クラース(アルケアB&Bホテルズ・ウィメン)が優勝。やがて2人で追うことになったフォレリングとピーテルセは3分25秒差まで迫るのが精いっぱいだった。ストラーデ・ビアンケ ドンネではそんなことにはならないと見られるが、果たして。
213kmで争われる男子レースも同日に開催され、大部分で男女同じルートを走行。男子より3時間ほど先んじて、今年の女王が決まる見込みだ。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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