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自慢のグラベル区間は15から16セクターに増加!出場選手の豪華さも勝者の格の高さもモニュメント級【Cycle*2025 ストラーデ・ビアンケ:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかストラーデ・ビアンケは今年第19回大会
霞に煙るトスカーナに、色とりどりのジャージが集結し、丘陵地帯を縫うように走る白い道の上で、この春最初のときめきが蠢き出す。長く厳しい季節も終わりに近づき、いよいよヨーロッパに本格的な自転車ロードレースシーズンがやってきた。
新しくて、古い。ストラーデ・ビアンケは、今年2025年3月8日(土)に第19回大会を迎える。ヨーロッパで開催されるUCIワールドツアーのワンデーレースの中では、今年新設されたコペンハーゲン・スプリントを除いて、最も若い。ただし、小砂利の未舗装路と厳しい起伏とに彩られたレース自体は、まさしくクラシックそのもの。いや、スタートリストの豪華さも、勝者の格の高さも、ファンの熱気も、風景の美しさも……もはや単なる古典の域を超えている。だからこそ「第6のモニュメント」と推す声も多い。
ストラーデ・ビアンケ全体図
昨年は距離が初めて200kmを超え、よりモニュメント風味を強めた。同時に自慢の「ステラート(グラベル)」セクターは11から15に増加し、累積標高差も3200mから4000mへと一気にアップ。新たに最終盤に周回コースを組み込み、フランドリアンさながらの熱狂さえ作り出した。
進化は止まらない。シエナ発シエナ着で南東へ大きく輪を描くコース基本形も、レース距離213kmも、昨年とほぼ変わりはないが、2025年大会は新たに1つ未舗装路が仲間入りした。それが第7セクターの「セッラヴァッレ」(全長9.3km)で、いわゆる白い道は計16セクター・全長81.7kmに増えた。
ストラーデ・ビアンケ高低差図
新セクターの影響は小さくないはずだ。おかげで第5セクター以降、今大会最長レベルのセクターを5つ連続でこなさねばならない。第5セクター入口から第9セクター出口までの全長67kmだけで、未舗装路はトータル50kmにも及ぶ。しかもフィニッシュ手前85kmから始まる第9セクターこそが、最大勾配19%という激坂とテクニカルな下りが待ち受けるおなじみの勝負地であり、2024年大会のタデイ・ポガチャルが勝利へ旅だった「モンテ・サンテ・マリエ」である。
シエナを目指す200km超えの行程
短いセクターが散りばめられた最終盤は、昨年と完全に同じ。30.2kmの輪をぐるりと周り、第11・15セクター「コッレ・ピンズート」(全長2.4km)、第12・16セクター「レ・トルフェ」(全長1.1km)をそれぞれ2回ずつ通貨する。前者は入口に最大15%の、後者は中盤に最大18%の激勾配が立ちはだかる。
2度目のレ・トルフェをこなしたら、土の道とはおさらば。残す11.7kmはほぼほぼアスファルト路を突っ走り、古都シエナを目指す。……ただ、ご存知の通り、ストラーデ・ビアンケ(白い道)のクライマックスは、石畳の激坂なのだ!
過去2年は、この激坂で、2位争いのデッドヒートが繰り広げられた。なにしろフィニッシュ手前約1kmで、急激に勾配は跳ね上がる。そこからの500mは平均勾配12.4%という凄まじさで、てっぺん間際で最大16%に達する。また残り900mで城門をくぐり中世都市へ侵入すると、道幅は恐ろしく狭まり、さらに残り750mから、足元の舗装は石畳に変わる。
がむしゃらに上り詰めたら、栄光のカンポ広場はすぐそこ。ラスト500mは意地悪なカーブとテクニカルな下りに注意すべし。最後の最後まで、決して気を抜くことはできない。
これほど特別な道の終わりに、ストラーデ・ビアンケを勝ち取った者は、誰だって英雄になる。ただ1年前のポガチャルは、伝説になった。フィニッシュ手前81kmで鮮やかに加速を切り、たった独り、栄光へと突き進んだ。
その後のジロ・デ・イタリアでピンクを、ツール・ド・フランスでイエローを、世界選手権で虹色を手に入れたディフェンディングチャンピオンこそが、今年も間違いなく、唯一絶対の優勝大本命。2月半ばのUAEツアーで2つの山頂フィニッシュと総合とを勝ち取り、いつも通り絶好調で、シエナの町へと乗り込んでくる。
昨季前半戦のポガチャルはグランツールモードで、見事に1998年以来となるダブルツールを成し遂げたが、今年の春は徹底的にワンデー強化キャンペーン。ステージレースには目もくれずに、ストラーデ・ビアンケから4月末のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュまで、ひたすらビッグクラシックのみを転戦する。
2025年の春はワンデー強化キャンペーンのタデイ・ポガチャル
もちろん狙いは、ミラノ〜サンレモ初制覇で、自身にとって4種類目のモニュメントタイトルを手に入れること。ロンド2勝目とリエージュ3勝目も貪欲に取りに行くし、2年前に取りそこねたアルデンヌ同一年3戦全勝も欲しい。仮にサンレモを制した場合には……今年早くもパリ〜ルーベ獲りに向かう可能性さえあるという。
まずは、その前に、ストラーデ・ビアンケで2022年、2024年に続く勝ち星を確実に回収しておきたい。もしも3勝目を手にした場合、ファビアン・カンチェッラーラ(2008・2012・2016年)の大会史上最多勝利に並ぶ。ポガチャルは2023年を欠場しているから、つまり自身が出走した大会においては2連覇中なのだけれど、2025年大会を勝った暁には、正式に、史上初めての連覇達成となる。
マイヨ・アルカンシエルの爆走を、果たして、止められる勇者は現れるだろうか。ポガチャル不在の2023年大会を23kmの独走で制したトム・ピドコックは、新しいチームジャージに着替え、モチベーションに燃えている。すでに今季3勝+総合1勝と、やはり調子は上々の様子。
今季母国スイスのチームに合流したマルク・ヒルシは、「カンチェッラーラのチーム」のエースとして、ポガチャルの記録を止めねばならない。実はストラーデ・ビアンケを自ら勝ちに行くのは生まれて初めて。これまで3度出走し、自己最高位は、ポガチャルのアシスト役として走った昨春の68位だ。
ストラーデ・ビアンケは3月8日(土)午後10:05〜放送!
昨大会2位のトム・スクインシュには、今大会を愛して止まない同僚クイン・シモンズと共に快挙の更新が期待される。残念ながら昨大会3位マキシム・ファンヒルスは、発熱で今回はお休み。また優勝経験者のマチューとワウトは不在だが、2014年と2017年に栄光をつかんだミハウ・クフィアトコフスキーは自身9度目のスタートラインに並ぶ。
いずれも参加した過去2大会をひと桁で終えているマテイ・モホリッチ&ペリョ・ビルバオのバーレーン・ヴィクトリアスコンビにも注目だし、グルパマ・FDJは表彰台経験者ヴァランタン・マドゥアスを筆頭に、2年前8位ロマン・グレゴワールと初出場ダヴィド・ゴデュのフレンチエーストリオで戦いに挑む。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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