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一強の圧勝かそれとも二強による一騎打ちか、ファンアールト参戦でファンデルプールの後輪に食らいつく【Cycle*2025 UCI世界選手権大会 男子エリート:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかシクロクロス世界選手権は今週末!
冬の虹を追い求めて。待ち望まれた頂上決戦が、北フランスのリエヴァンにて繰り広げられる。2月最初の日曜日、UCIシクロクロス世界選手権・男子エリートで、2024/25シーズンは壮大に幕を下ろす。
一強の圧勝か。それとも二強による一騎打ちか。
ディフェンディングチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(フランス)は、今シーズンを7戦全勝で駆け抜け、しかもそのすべてで鮮やかな独走勝利を飾ってきた。世界一決定戦に関しても、近年は出走した5大会連続で負けなし。史上最多タイ7枚目のマイヨ・アルカンシエルを狙う30歳に、死角はない。
ただ、もしかしたら、それほど簡単には勝てないかもしれない。なにしろ急遽、ワウト・ファンアールト(ベルギー)が、レインボー争奪戦への参加を決めたのだから!
本来であれば、1月25日のワールドカップ第11戦を最後に、ファンアールトはロードシーズンへと移行する予定だった。ところがレース直後にコーチと話し合いを持ち、「ロードにおける目標達成に向けて、さらなる後押しになるはず」と、シクロシーズンを1週間延長。2年ぶりに世界選のスタートラインに並ぶ。
たしかに今季これまでの直接対決(12月27日と1月25日)は、単に、いずれもファンデルプールが自らの優位をひけらかす機会にしかならなかった。キャンバーの不器用なライン取りや泥の下りでの落車など、ファンアールトはシクロクロス特有の技術を完全には取り戻せていないとの指摘の声も上がる。
それでも、2回ともに……ほんの短い時間ではあったけれど、ファンアールトは絶対王者の後輪に食らいついた。それにワールドカップ第10戦で披露した直線路での追い抜きや、第11戦での単独ブリッジなど、走行力とスピードではやはりずば抜けていた。
もちろんファンアールトは、2016年から世界選3連覇を成し遂げた、真のシクロクロスチャンピオンなのだ。ファンデルプールにとっては、少年時代からの永遠のライバルでもある。ジュニア時代から通算すると、2人が同時に世界選を戦ったのは通算10度。この10大会すべてが、いずれかの優勝で終わっている(マチュー6勝、ワウト4勝)。また2人によるワンツーフィニッシュは6回、1位と3位も2回。最後の世界選対決は2023年、2人によるスプリントで勝敗が決した。
Puck Pieterse
2025 CYCLOCROSS WORLD CHAMPIONSHIPS LIEVIN | course recon
「世界選手権にワウトがいるといないとでは、間違いなく状況は異なる。より素晴らしい戦いになるだろうし、なにより、何が起こるか分からない。ワウトは常に警戒を要する選手だ」(ファンデルプール)
マチューとワウトがまたしても表彰台の上から2段を独占してしまうのかもしれないが、だからこそ、残された1つのメダルを巡る争いはますます熾烈になる。
1年前の世界選で銀メダルを射止めたヨリス・ニューエンハイス(オランダ)は、帯状疱疹で長らく休養を強いられたが、1月半ばついに復帰。1週間前のワールドカップ第11戦では表彰台乗りを果たし、どうやら調子は右肩上がり。その第11戦はウィルス感染で欠場、翌日の第12戦は早々にリタイアのティボウ・ネイス(ベルギー)は、人生2度目のエリート世界選に向け「理想的な準備は詰めなかった」。ただ不幸中の幸い、「体力はそれほど削られなかった」とのこと。現ベルギー国内&ヨーロッパ王者の本来の脚を、取り戻していてほしい。
もちろんワールドカップ総合覇者マイケル・ファントゥレンハウト(ベルギー)も、2年連続の世界選表彰台が期待される。ベルギー代表監督によれば、コースはずばり彼向き。しかも今回リエヴァン世界選の大会責任者は、2023年欧州選を模範に周回を作り上げたと語っている。つまりはファントゥレンハウトが欧州チャンピオンに輝いたコースだ。
すでに金曜日の大会初日にはミックスリレーが行われ、2年ぶり2度目のエリート世界選に挑む織田聖(日本)も、同コースを走っている。男女、ジュニアからエリートまでの6人制で争われた同種目は、英国が勝ち取ったが、最も早いラップタイムを記録したのは、ワールドカップ総合2位トゥーン・アールツ(ベルギー)の7分16秒だった。
さて、コース責任者がこだわったのは、まずなにより「テレビ中継に映えるレース」を演出すること。実は同地で2年前にフランス選手権が開催されているのだが、その時の反省をもとに、大幅に手を入れ直したのだとか。おかげでよりスピードの出るコースに生まれ変わった。フランスU23代表監督によれば「スピードが落とせぬままテクニカルなカーブに突っ込まなければならない」のが恐ろしいのだとか。
アップダウンを繰り返すこなせる脚も欠かせない。勝負の舞台は炭鉱跡地の捨石集積場、いわゆるボタ山。さらに天然の起伏だけでなく、人工的なブリッジさえ2つ加えられた。なんと15段前後の階段だって2つも待ち構える!全長約2.8kmのコースで、獲得標高差は約70m。ブリッジには勾配25%ゾーンが潜んでいるとの噂も。
ちなみに、ここの炭鉱の土は、雨が降ると粘り気が出てひどく重くなるらしい。幸にも晴れの予報だが、湿り気は、ところどころに残っているのだろう。
そしてフィニッシュラインは長い長い舗装路の果てに引かれた。……もしも一騎打ちにもつれこんだ場合、手に汗握るロングスプリントが繰り広げられるに違いないのだ。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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