かつての炭鉱跡地で永遠のライバルが今季最初で最後の直接対決【シクロクロス2024/25 WC第11戦 マースメヘレン：プレビュー】

今季最初で最後の直接対決！

11月に幕を明けたUCIワールドカップ・シクロクロス2024/25シーズンも、いよいよ最後の週末2連戦を迎える。しかも1月25日（土）、第11戦マースメヘレン（ベルギー）大会を最後に、ワウト・ファンアールト（ベルギー）はシクロシーズンに幕を下ろし、来る春クラシックへ向けた調整へと切り替える。

つまりは待ちに待ったマチュー・ファンデルプール（オランダ）との、この冬2度目にして、今季ワールドカップにおける……最初で最後の直接対決だ！

事前の計画によれば、全部で4度の対決が予定されていた。ところが12月23日は、ワウトが体調不良で出場キャンセル。1月5日の第9戦デンデルモンデ大会は、逆に年末に肋骨を痛めたマチューが欠場した。結局は12月27日に、1度、顔をあわせたきり。しばらく粘ったワウトを、マチューが冷静に振り切ると、後はいつも通りに独走勝利をもぎ取っている。

貴重なマチューvsワウトの戦いは、2人がいまだかつて走ったことのないコースで繰り広げられる。舞台はずばり、かつての炭鉱跡地。コースを見下ろすように、巨大な立坑櫓が2つそびえたつ。

しかも産業遺産の背後には、風力発電塔が見え隠れする。さらには巨大な鏡の壁に、選手たちの走る姿が映し出されるセクションも。実はこれはハッセルト大学の施設で、全面鏡張りの建物の中では、気候変動が生態系に及ぼす影響についての研究が行われているのだとか。屋根には球体のドームも並ぶ。

不思議な人工建造物の間をすり抜けた先には、自然公園の森が広がっている。この一帯はTerhills地区と呼ばれるだけあって、小さなhills＝丘陵がコースにアクセントをつける。走り込んだ勢いそのままに上りきれそうで……なかなか上りきれない……そんなローラーコースター風の軽くツイストした激坂も待ち構える。

ところでマースメヘレン大会が初めて開催された2年前は、グラベル大会かと見間違うほどの大量の砂利が、選手たちを悩ませたそうだ。パンクが相次ぎ、特に下りが危険だった。幸いにも昨年の第2回大会で手直しが入り、代わりにシケインやサンドという、安全な障害物が組み入れられた。全体的にはスピードコースで、ただ舗装された直線路の長いベニドルム大会とは対称的に（ワウトの追い上げが見応えたっぷりだった）、今大会はほとんど追い越す場所がないらしい。

さて、少年時代から激しくやりあい、ともに高めあい、世界を分け合ってきたマチューとワウトだが、2人が一緒のレースに出場した場合、9割以上は2人のうちどちらかの優勝で終わっている。特に2018年11月4日以降の50試合は、勝率100％で、うち37回がいわゆるワンツーフィニッシュだった。すると今回もやはり、現役世界チャンピオンと元世界選3勝の王者による、2人きりのバトルになってしまうのだろうか？

……今回ばかりは、ちょっぴり異なる展開を期待したくなる。だって欧州チャンピオンのティボウ・ネイス（ベルギー）が、とてつもなく絶好調だ。2週前にはベルギーチャンピオンの座に駆け上がり、前週は第10戦ベニドルム大会で両手を上げた。今季はすでに3度マチューと共に表彰台に上がったし（もちろん3度ともマチュー優勝）、ワウトの表彰台乗りを2度も阻止している。シクロクス界のレジェンド、スヴェンの息子が、ビッグ2と仲良く表彰台を独占する日が、ついにやってくるのかもしれない。

ワールドカップ総合リーダージャージを巡る争いは、最終戦を待たずに決着がつく可能性あり。第2戦ダブリン、（第3戦キャンセル）、第4戦ナミュールと2大会連続で勝利を収め、その後も常にトップ10フィニッシュを保ってきたマイケル・ファントゥレンハウト（ベルギー）と、総合2位トゥーン・アールツとポイント差は33点。1試合あたり収集できるポイントは、最大で40点だ。

また日本からは、2月の世界選に向け代表に選考された織田聖、副島達海、柚木伸元を含む5人がエントリーしている。

文：宮本あさか