シクロクロス一行はジュラ山脈へ、「7つの丘に囲まれた町」で高速バトル予想【シクロクロス2024/25 WC第8戦 ブザンソン：プレビュー】

フランスチャレンジの会場ブザンソンへ

世界王者がまたしても無双するのか。それとも、独走を止める勇者が、ついに現れるのか。2024年を最高の形で締めくくりたい。年の瀬迫る12月29日（日）、UCIシクロクロス・ワールドカップ第8戦は、フランスのブザンソンにて繰り広げられる。

ベルギーでクリスマスシーズンを過ごしたシクロクロス一行は、ジュラ山脈へと飛ぶ。スイス国境からそれほど遠くないブザンソンの町は、文豪ヴィクトル・ユーゴーの生誕地であり、シクロクロス界では長年フランスチャレンジの会場として愛されてきた。2016年にはフランス選手権の開催地として、地元ドーブ県出身フランシス・ムレーの、史上最多9回目の優勝を見事に演出している。

そのムレーも、実は同コース設計者のひとり。ブザンソンは「7つの丘に囲まれた町」と呼ばれるが、「マルコンブ（不幸の谷）」のスポーツ公園に描かれた全長3050mの周回は、それほど起伏は厳しくはない。むしろケインやブリッジ、連続バンプが盛り込まれた、テクニカルなコースとして知られている。

なにより、2つの階段セクションが、選手たちの行く手に立ちはだかる。7段の短い階段は、各ステップの奥行が深いせいか、時にサドルにまたがったまま強行してしまう選手も。一方で35段前後のステップは、長く急で、1周ごとに確実に脚の力を削っていく。

悪天候が多いのも、見逃せない特徴だ。なにしろブザンソンは、フランス本土でも、トップ5に入るほど雨の多い町。だからこそ2018年フランス選手権や2021年ワールドカップ第1回大会では、路面はまさにスケートリンクと化し、凄まじい落車祭となった。ところが前回2023年大会は、砂埃が舞うほどお天気が良く、ハイスピードなレースが展開された。雨の2021年大会が7周回・平均時速21.7km、晴れの2023年大会は9周回・平均時速26.9km……と、コンディションの違いがまったく異なるレースを作り出した。

そんな高速バトルを制したのが、おなじみ、マチュー・ファンデルプール（オランダ）。祖父レイモン・プリドールの母国で、クレイジーなまでの熱狂を巻き起こしつつ、余裕の独走勝利を飾った。今冬のフランスで史上最多タイ7度目の世界制覇を目論むマチューは、もちろん今戦も不動の優勝候補に挙げられる。この冬も4戦4勝と勝利街道を突っ走る絶対的チャンピオンにとって、路面状況などどちらでも構わないのかもしれないが、ちなみに天気予報によれば、今年もまた乾いた戦いになるとのこと。

前回大会2位に食い込んだローレンス・スウィーク（ベルギー）は、ジャイアントキリングの可能性を追い求める。なにしろ23日の大会では唯一マチューの加速にしがみつき、27日には一旦は遅れながらも、やはりたった1人でマチューに追いつく調子の良さを披露したのだ（その後改めて振り払われたが）。果たして3度目の正直なるか。

2024年最後のワールドカップレースだからこそ、総合争いを繰り広げる選手たちのポイント争いも見逃せない。これまでの6戦で2勝・表彰台2回を含み、全戦で着実にポイントを積み上げてきたマイケル・ファントゥレンハウト（ベルギー）が170ポイントで総合首位を堅守しているが、2位トゥーン・アールツ（ベルギー）が134ポイントで追いかけ、さらに3位ピム・ロンハール（オランダ）＆4位ラルス・ファンデルハール（オランダ）が115ポイントで続く。

日本からは、昨U23世界選手権に出場した鈴木来人が、ブザンソンへと乗り込む。グルパマ・エフデジ所属のブザンソンっ子ロマン・グレゴワールもまた、会場入りするそうだが、あくまで「親善大使」として。アルケアB＆Bホテルズのクレマン・ヴァントゥリーニ（フランス）と、トタルエネルジーのファビアン・ドゥべ（フランス）は、自転車大国フランスの誇りを背負ってスタートラインに並ぶ。

文：宮本あさか