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世界の目が宇都宮に注がれる大決戦 日本が誇るアジア最高位のワンデーレースがここに【Cycle*2024 宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース
長かったシーズンの終わりが目の前まで来ている10月のサイクルロードレースシーン。この時期といえば、やはりわれわれにとって外せないのが“ジャパンカップ”。日本が世界に誇るビッグレースである。
第31回目となる今回から、大会名に“宇都宮”を冠し、「宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース」に大会名を変更。開催地・宇都宮の名を世界に高らかに轟かせる。
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この大会の原点から紐解いていこう。それは1990年9月、その年の世界王者を決める一戦「世界選手権自転車競技大会」がアジアで初めて宇都宮で開催されたことにはじまる。そのときの激戦と熱気、そしてレガシーを継承するべく、2年後に始まったのが「ジャパンカップサイクルロードレース」である。毎年10月にはシーズン最終盤の重要レースとしてビッグネームが多数集結。そのバリューは日本で唯一、国際自転車競技連合(UCI)よりワールドツアーに次ぐカテゴリー「プロシリーズ」(通称UCIプロシリーズ)に認定された、アジア最高位のワンデーレースであると述べれば、そのすごさが実感できるのではないだろうか。
UCIプロシリーズの重要度を示す指標として、出場チームの属するカテゴリーやプライオリティが挙げられる。最高峰チームカテゴリーであるUCIワールドチーム(第1ディヴィジョン)、同プロチーム(第2ディヴィジョン)、同コンチネンタルチーム(第3ディヴィジョン)と、国際登録しているチームすべてに出場資格がある。世界中にいくつもあるチームの中から、ジャパンカップのスタートラインにつくことができるのは、わずか19チーム。日本に、宇都宮に、それはもうとんでもないレースが存在している……というわけだ。
今回について見ていく前に、昨年のレースを振り返っておきたい。第30回の節目だった前回は、それまでよりレース距離を延伸して164.8kmに設定されていたが、降雨のために距離を短縮。133.9kmで争われた。前半見せ場を作ったのは、初の宇都宮だったジュリアン・アラフィリップ(スーダル・クイックステップ)。大雨の中をひとり逃げし、山岳賞を2回獲得。中盤以降は先頭メンバーがシャッフルして、最後は3人による優勝争い。最後はベテランのルイ・コスタ(当時EFエデュケーション・イージーポスト)が勝負強さを見せて、初のジャパンカップ制覇を果たした。
宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース コースマップ
2024年大会も、舞台はおなじみ宇都宮市森林公園。ここを発着点とし、1周10.3kmのコースを今回は14周回する。レース距離は144.2kmに設定されると同時に、前々回までと同じ長さへと戻っている。大きなポイントは、周回前半で上る古賀志林道のつづら折り。これぞジャパンカップと言える世界に誇る名物区間で、ワールドクラスの選手たちがときに華麗なダンシングで、ときに苦しさに顔をゆがめながら急坂を駆け上がっていく。近年はレース前半から、この上りを使って集団を崩しにかかるチームが現れている。
古賀志の頂上から一気に駆け下りると、平坦区間と緩やかな上り基調を走って宇都宮市森林公園へと戻ってくる。前述したように、レース前半からチーム単位で動く傾向が見られるようになり、各チームの思惑次第で展開は大きく異なることだろう。
そんな宇都宮の名コースに挑む選手たち。今年も超ワールドクラスのライダーたちがこの大会の覇権をかけてやってきた。
ロードレースは宇都宮市森林公園を14周回
「ジャパンカップの戦い方を知っている」という観点では、ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)が一歩も二歩も他を引き離している。2年前には圧倒的な強さを見せて優勝。宇都宮のコースを把握しているだけでなく。直近のレースでの強さも目を見張るものがある。グラン・ピエモンテを独走で勝ち、イル・ロンバルディアでは8位。絶好調で迎える今回は、期待の留目夕陽らが脇を固め、チームとしてのレベルの高さも見せることだろう。
チーム力では、ジェイコ・アルウラーも負けていない。前回激闘の末に2位だったフェリックス・エンゲルハートがリベンジをかけてやってくるし、絶対エースのサイモン・イェーツも投入。完全に勝ちパターンのオーダーを組んできた。
UCIプロチームながら、今季は同ワールドツアーでも多くの成果を挙げたイスラエル・プレミアテックも本気だ。ブエルタ・ア・エスパーニャで1勝したマイケル・ウッズ、ワンデーレースに絶対的な強さを見せるディラン・トゥーンスがメンバー入り。そこに百戦錬磨の大ベテラン、ヤコブ・フルサンも加わってどこからでも戦える態勢を整えた。
スーダル・クイックステップは、イラン・ファンウィルデルやマウリ・ファンセヴェナントの登坂力で勝負に出る。ビッグレース経験も豊富で、新たなタイトル獲得に執念を見せることだろう。
2023年ジャパンカップを走る新城幸也
われらが日本のエース、新城幸也は今年もバーレーン・ヴィクトリアスのリーダーとして大会に乗り込む。10月17日付のチーム発表で、同チームの一員として走る最後のレースになることが明かされた。2015年には3位に入賞した相性の良いレースで、今回も力を見せることだろう。新城以外の来日メンバーも充実していて、エースのひとりであるマテイ・モホリッチやステージレースを中心に結果を残しているエドアルド・ザンバニーニも優勝争いに加わってきそうだ。
ジャパンカップ常連のリドル・トレックは、2019年ロード世界王者のマッズ・ピーダスンが参戦。スプリントや逃げ、クラシックレースでの勝負強さが目立つが、古賀志の上りはどう攻略するだろうか。最後まで前線で展開するようだと、絶対的な武器のスプリントで勝負する。今年の世界選手権4位のトムス・スクインシュや初出場のアンドレア・バジオーリにもチャンスは十分。
これらチーム・選手を迎え撃つ日本勢は、8チームが出場。ホームチーム・宇都宮ブリッツェンは恒例のスペシャルジャージでホスト役を務める。ベースのイタリアで結果を残しているJCL TEAM UKYOは、昨年の日本王者・山本大喜や直近のツール・ド・ランカウイで個人総合2位となったトーマス・ペゼンティが軸。今年ついにロード日本王者に就いた小林海(マトリックスパワータグ)は、持ち前の登坂力とスピードでその力が世界レベルにあることを証明したい。アンダー23カテゴリーの寺田吉騎(シマノレーシング)、個人タイムトライアルの金子宗平(日本ナショナルチーム)の両日本王者の活躍にも期待がかかる。
宇都宮ジャパンカップ クリテリウム
ロードレース前日の10月19日には、宇都宮市中心部の目抜き通りで「宇都宮ジャパンカップクリテリウム」も行われる。1周2.25kmのコースは2つのヘアピンコーナーをのぞけばほぼ一直線。ロードレースに出場する選手の大多数が顔見せかつ脚慣らしとして走るので、毎回ハイスピードバトルになる。
クリテリウムレース 昨年勝者はエドワルト・トゥーンス
そのクオリティは、プレイベントに位置づけるには贅沢すぎるほど。前回まで同レースを3連覇したエドワルト・トゥーンスに代わり、リドル・トレックはピーダスンで勝ちに来るだろうか。前回3位のアクセル・ジングレ(コフィディス)、同4位のハミッシュ・ビードル(チーム ノボ ノルディスク)も再び上位をうかがう。日本勢最上位の6位に入った岡篤志(JCL TEAM UKYO)にも、表彰台の期待がかかる。
“世界vs.日本”の構図が楽しめる唯一の機会ともいえるジャパンカップ。ワールドクラスのチーム・選手による力強い走りに、日本勢がどこまで太刀打ちできるのか。これまでの歴史を見ていても、ジャイアントキリングの可能性は大いにある。世界の目が注がれる宇都宮で、われわれは決定的な瞬間を目撃することとなる。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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