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サイクル ロードレース コラム 2024年10月15日

ポガチャルが4連勝を達成、初戦と最終戦を独走勝利、25勝で偉大なシーズン締めくくる【Cycle*2024 イル・ロンバルディア:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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イル・ロンバルディア

イル・ロンバルディア4連勝を達成したタデイ・ポガチャル

あの「カニバル(人食い)」エディ・メルクスについに「俺を超えた」と言わしめたタデイ・ポガチャルが、「カンピオニッシモ(チャンピオン最上級)」ファウスト・コッピと肩を並べた。ソルマノの上りでの切り裂くようなアタックと、全長48.4kmの独走勝利。75年ぶりのイル・ロンバルディア4連勝を達成し、トリプルクラウンの王者が、まさにモニュメント的な成功に満ちたシーズンを美しく締めくくった。

「最後の瞬間を大いに楽しんだ。最後の上りも、ファンたちも。素敵だった。こんな風に勝利でシーズンを終えることができて幸せだ。うん、だから、最後は1人で走れて最高だった」(ポガチャル)

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誰もがあらかじめ分かっていたけれど、誰にも止めることなどできなかった。

ライバルたちは決して指をくわえて眺めていたわけではない。必ずや振り下ろされるであろう一撃に向けて、多くのチームが、スタート直後から激しい飛び出し合戦に挑んだ。

40kmほどの攻防の果てに、まずは7選手が逃げ出した。その後も小さな塊がいくつか前方へと駆け出していき、スタートから80km過ぎで、22人の大きな先頭グループを作り上げた。バーレーン・ヴィクトリアスが3人、さらに5チームが2人ずつ選手を送り込んだ逃げは、一時はプロトンから5分近いリードを手に入れた。

ただメイン集団の先頭では、UAEチームエミレーツが完璧な制御を行っていた。上りでは常に厳しい速度を強い、集団に残るライバルたちの脚を着実に痛めつけつつ、下りでは少々緩める……の繰り返し。

残り距離も95kmを切ると、UAEはいよいよ本気の追走に切り替えた。まずは世界選アンダー23部門で長い独走を試みたヤン・クリステンが、わずか5kmで1分縮めるという凄まじい脚を披露。イル・ロンバルディア伝統のギザッロ詣ででは、頼もしいキャプテン役ラファウ・マイカが黙々とテンポを刻んだ。

レース前半にも集団先頭で監視の目を光らせてきたマルク・ヒルシは、ヘアピン満載でナーバスな下りを先導した。そして残り55km、約1分差でコルメ・ディ・ソルマノの山道に差し掛かると、アダム・イェーツが一段階スピードを上げ、ついにはパヴェル・シヴァコフが猛烈に先頭を引っ張り……。

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【ハイライト】イル・ロンバルディア|Cycle*2024

「今レースに参加したチームメイトは、自分でも成績が出せる選手ばかりだ。パヴェル(シヴァコフ)が6位に入ったように、もしかしたら他の選手だってトップ10、トップ5、さらには表彰台を狙えたかもしれない。でもチームの全員が、ただ1つの目標、『勝利』のためだけに働いてくれた。こんなチームメイトを持つことができて僕は本当に幸運だし、誇らしい」(ポガチャル)

最後まで逃げ続けたクサンドロ・ムーリッセとテイメン・アレンスマンを、メイン集団がとらえようかという瞬間だった。残り48.4km。まるで矢のように、ポガチャルが一直線に前へと躍り出た。

「だいたい作戦通り。すごく厳しいレースだったし、最後の40kmは、いわば1対1の戦いになる。だからソルマノ山頂で十分に差をつけさえすれば、フィニッシュまでその差を保てるだろうと分かっていた」(ポガチャル)

誰一人として反応しなかった。ポガチャルは後方に置いてきたライバルたちに早々と1分差をつけ、ソルマノからの下りに飛び込んだ。

イル・ロンバルディア

エヴェネプール(左)とポガチャル(右)

「どんな風に、どこで、タデイが行ってしまうのか、誰もが予測していた。僕が4年前に落車した橋を抜けて3km先のところだ。あそこが上りで最も厳しいところだから」(レムコ・エヴェネプール

他のあらゆる選手と同様に、エヴェネプールも、無理にはポガチャルの後輪に張り付こうとはしなかった。むしろ「タイムロスを最小限に抑えるために」、あくまでも「自分のペース」で上る方を選んだ。逆にソルマノからの下りに入ると「全速力」に転じた。同時にまるで協力体制にないエンリク・マスや、暫く先で合流してきたレナルト・ファンイートヴェルトを突き放した。

100kmアタックの末の51kmもの独走で世界王者に上り詰めたポガチャルと、パリ五輪&世界選個人タイムトライアル王者エヴェネプール。ソルマノの山頂から延々15kmほどにわたって、両者のタイム差は1分15秒前後で動かなかった。まさに「1対1」の綱引き。

「ダウンヒルの後のアップダウンで、僕は攻め続けた。さらなる秒差を稼ぐためであり、このチェイスの心理戦を制するためでもあった」(ポガチャル)

残り20kmを切ると、ついに均衡が崩れた。最終盤は「もはや死んでいた」というエヴェネプールに対して、精神的な余裕を得たポガチャルは、「オフシーズンのことを考えながら」悠々とフィニッシュへ突き進んだ。最終的にタイム差は、3分16秒にまで広がった。

「シーズンを始めた時と同じやり方で、シーズンの終わりも祝いたかった。だからバイクを持ち上げたら素敵だなと思ったし、最高の写真が撮れたんじゃないかな」(ポガチャル)

イル・ロンバルディア

イル・ロンバルディア 優勝ポガチャル、2位エヴェネプール、3位チッコーネ

2024年初レースとなった3月2日、81kmもの独走の果てにストラーデ・ビアンケを制し、カンポ広場で自らのバイクを天に突き上げた時のように、2024年最終レースとなった10月12日、コモ湖のほとりのフィニッシュラインで、ポガチャルは愛車コルナゴを高々と掲げ上げた。これにてイル・ロンバルディア4戦全勝。2年連続シーズン初日&最終日勝利というおまけ付き。……もしもシーズン初戦のステージレース総合優勝を「初戦優勝」と数えるならば、4年連続シーズン初戦&最終戦勝利となる。

シーズン25勝は、2005年アレッサンドロ・ペタッキと並ぶ21世紀最多記録。内訳はワンデー6勝、ステージレース総合3勝、ステージ16勝。また個人タイムトライアルを除き独走勝利は18勝で、うち9勝が10km超の大アタックによるものだった。ちなみに今季のポガチャルにとって明らかに「負け」と言えるのは、ミラノ〜サンレモ(12人によるスプリントで3位)、ジロ第1ステージ(3人によるスプリントで3位)、ツール第11ステージ(ヴィンゲゴーとの一騎打ちスプリントで2位)くらいのものか……。

またモニュメント7勝目は、マチュー・ファンデルプールを1つ上回って現役単独最多に。9月29日にマイヨ・アルカンシェルを着てから負けなしの2連勝(10月8日出走のトレ・ヴァッリ・ヴァルジーネはレース中止でニュートラル)は、2005年世界王者のトム・ボーネン(年をまたいで4連勝)、年をまたがなければ1977年のフランチェスコ・モゼール(3連勝)以来となる快挙である。

もちろん、2024シーズンに1987年以来史上3人目の「トリプルクラウン(ジロツール世界選手権同一年制覇)」を成し遂げたポガチャルは、今回のイル・ロンバルディア4連覇で、ファウスト・コッピが1946年から1949年にかけて成し遂げた記録に75年ぶりに追いついた。

「今年の僕が成し遂げたことを、理解する必要があるのだろうか?僕はただ……この瞬間を生きている。今はバカンスが楽しみでたまらなくて、この素敵だったシーズンの後に、休息を欲しているだけ。そして次のシーズンに、次の目標に、次なる挑戦に向かいたいだけさ」(ポガチャル)

やはり初出場ツールで総合3位、パリ五輪ダブル金メダル、さらには世界選個人TT2連覇と大成功のシーズンを過ごしてきたエヴェネプールは、2位で感涙に浸った。

「正直に言えば、個人的には勝利を得たような感覚だ。前回ベルガモからコモへと走った際に、僕がどんな風に終わってしまったか、みなさんご存知だと思うけど、今回はこうして『その他の中のトップ』で終えることができたんだから。うん、だから僕個人にとっては勝利に等しいし、自分を誇らしく思う。今日は2位ですごく気分がいい」(エヴェネプール)

イル・ロンバルディア

チッコーネ(先頭)が3位入賞

過去15年間で最速だったイル・ロンバルディアの3位には、ジュリオ・チッコーネが滑り込んだ。ソルマノの上りでいち早く仕掛け、すでに調子の良さを示していたイタリアンクライマーは、前を行くマスやファンイートヴェルト、さらにはシヴァコフが顔を見合わせている隙を突き、最終サン・フェルモの上りで表彰台への加速を決めている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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