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フランスにおけるシーズン最後のラインレースはデマール、フィリプセン、ピーダスンなど強力なスプリンター勢が出場予定【Cycle*2024 パリ〜トゥール:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかトゥレーヌワインの産地の未舗装路を走る
かつてはスプリンターズクラシックとして愛されてきた。2018年にはグラベルという新しいアイデンティティをまとった。隣国イタリアのイル・ロンバルディアと並び「落ち葉のクラシック」と呼ばれ、フランスにおけるシーズン最後のラインレースとしての立場は変わらない。10月最初の日曜日、2024年パリ〜トゥールが、今季最後の熱き平地バトルを演出する。
時代と共に進化してきたレースだが、今年のコース自体は昨大会と完全に同じ。全長213.8km。パリ南西のシャルトルから走り出し、フランス中部のトゥールを目指す。
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パリ〜トゥール コースプロフィール
序盤3分の2に、地形的な難所は特に存在しない。ひたすら吹きっさらしのボース平原を突き進む。警戒すべきは風。時には集団を粉々に砕き、時に驚くべき逃げ切り勝利を演出してきた風こそが、1896年に今大会が誕生して以来の伝統だ。
追い風ならば、当然、とてつもなく高速勝負になる。1936年に創設された「黄色いリボン賞=200km以上のレースを史上最速で制した選手に与えられる」の歴代受賞者13人中、実に9人が、パリ〜トゥールの覇者だった。ただし2015年勝者マッテオ・トレンティンの時速49.641kmが最後で、その後、2019年ブエルタ第17ステージでの時速50.628kmに抜かれてしまったけれど。ちなみに天気予報によれば、今年の大会当日は向かい風。
パリ〜トゥール グラベル区間
秋の色に染まるロワール渓谷とその古城群を愛でつつ、戦いも残り70kmを切ると、いよいよトゥレーヌワインの産地に足を踏み入れる。……ようこそ現代版パリ〜トゥールの勝負地へ!
ぶどう畑の中を縫うように引かれたコース上では、あちこちに未舗装路が顔を出す。決して車輪走行向きではない、ごつごつと荒れた道……フランス語でそんな意味を持つ「シュマン」は、計10か所・通算10km。開催委員会の報告よると、地元の自治体やワイン農家さんたちは、どうやら今大会に向けて農道の整備に励んでくださったらしい。もちろん「危険を軽減するため」であり、同時に「『不快感』を損なわぬため」なんだとか。
未舗装路の間の短い上り坂もみもの
見どころは、なにもシュマンだけではない。未舗装路を前後するように──うち5つはセットで──短い上り坂も、全部で8つ散りばめられている。たとえば残り27.9km、コート・ド・ロシェール(登坂距離400m、平均勾配9.8%)からのヴェルヌーの白い道(第3セクター、全長900m)は、間違いなく、邪魔者を振り落とすのに最適なポイントになる。
フィニッシュラインは、昔から、トゥールの市街地を貫くグラモン大通りと決まっている。以前は、2kmを超える最終ロングストレートでのスプリント勝負こそが、最大の見ものだった。ただ道の北側にトラムが敷かれたせいで、2011年以来は800mの短距離決戦場に変わっている。
現行スタイルになってから、アルノー・デマールは2021年・2022年と連覇を成し遂げた。1年前は序盤に飛び出した5人の逃げ切りを許し、大会史上初の3連覇を逃したが、現役最多4度の表彰台乗りを誇るフレンチスプリンターは、今年も優勝候補の一角に挙げられる。
最大のライバルは、おそらくヤスペル・フィリプセンとマッズ・ピーダスンだろう。現役屈指の俊足スプリンターにして、この春ついにミラノ〜サンレモ優勝でモニュメントタイトルホルダーとなった前者は、大会3日前にドイツのワンデーを勝ち取った絶好調の脚で乗り込んでくる。5年前の世界王者である後者は、レースが厳しくなればなるほど、強さと速さが光るタイプ。初めてのジャパンカップに向かう前に、初めてのパリ〜トゥール獲りに挑む。
晩秋の景色が美しいパリ〜トゥール
アルノー・ドゥリーは、過去2大会は途中棄権に終わったが、今度こそ優勝候補としての馬力を見せたい。今年いまだ勝ち星なしのクリストフ・ラポルトは、勝利でシーズンを美しく締めくくりたいと意気込む。
1年前に「研修生」ながら勝利をさらったライリー・シーハンは、2年連続で衝撃を作り出せるか。また1年半前のひどい落車事故から、ようやく8月半ばに戦線復帰を果たしたタコ・ファンデルホールンが、ついに10月2日、自慢の独走で復帰初勝利。ぜひパリ〜トゥールでも、元気に逃げる姿を見せてほしいものだ。
シーズンの終わりのパリ〜トゥールは、多くの選手にとって今季ラストバトルであり……幾人のベテランにとっては人生最後の晴れ舞台。今回の出走予定選手の中では、ジュリアン・シモン、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン、そしてミケル・モルコフが今季限りでの現役引退を発表している。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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