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新女王誕生はあるか!? フォレリングやロンゴボルギーニら登坂力に長ける選手が有利のコース 2連覇狙うコペッキーも好調キープ【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 女子エリートロードレース:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介昨年はロッテ・コペッキーが世界制覇
スイス・チューリッヒを基点に、日々熱戦が展開されているUCI世界選手権大会のロードレース競技。大会前半はタイムトライアル種目をカテゴリー別に行い、後半はロードレース種目へと移る。大会最終日前日の9月28日には、女子エリートのロードレースを催され、2024年シーズンの世界女王が決まる。
ウィメンズプロトンの水準向上を示すように、世界選手権大会における女子エリート種目のレベルは年々上がる一方。昨年はロッテ・コペッキー(ベルギー)による独走劇が見られるなど、アグレッシブな戦いぶりはファンを魅了し続けている。
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UCI世界選手権大会 女子エリートロードレース コースマップ
迎えた今回、チューリッヒのコースでもわれわれの予想をはるかに上回る熱いレースが展開されることだろう。シーズン終盤の大一番がやってくる。
レーススタートは、チューリッヒから東に位置する街・ウスター。グライフェン湖に沿って1周半ほど走るとちょうど30km地点を通過。そこからチューリッヒを中心とする周回コースに途中区間から合流する。これを「0周回」として、最初のコントロールライン通過から4周回走ることに。1周あたり26.8kmで、この間にチューリッヒベルク通りの急坂をはじめとする丘陵区間を行く。高度にして250mほどを一気に駆け上がり、周回後半にはチューリッヒ湖岸へ向かってのテクニカルなダウンヒルも控える。
レース距離は154.1kmに設定され、その間の獲得標高は2384m。クライマーやオールラウンダー、クラシックハンター向きのコースレイアウトとの見方がなされており、ワンデーレースに強さを発揮する選手たちが優勝争いの中心になると予想されている。
このコースの主役候補もしっかりとチェックしておこう。
女王の証マイヨ・アルカンシエル防衛に挑むのが、押しも押されもせぬベルギーのスーパーエース、コペッキー。スピードとパンチ力が要求された昨年のグラスゴー大会では圧倒的な強さを見せたが、チューリッヒのコースにもしっかり対応するだろう。今季はストラーデ・ビアンケ ドンネやパリ~ルーベ ファムといったビッグレースを制覇。一方で、メダル量産をもくろんだパリ五輪でロードレースの銅メダル1つに終わる悔しさを味わい、今大会でリベンジしようとモチベーションは高い。
UCI世界選手権大会 女子エリートロードレース
リベンジといえば、デミ・フォレリング(オランダ)も同様だ。ツール・ド・フランス ファムでクラッシュをきっかけにタイムを失い、最終的に総合タイム差4秒でマイヨ・ジョーヌを逃す大きな悔しさを味わった。彼女も「世界選手権はリベンジの場」と公言しており、この一戦にフォーカスしている。先だって行われた個人タイムトライアルでは大満足の銀メダル。調子の良さを実感しており、ロードレースではマイヨ・アルカンシエルしか見ていない。
群を抜いて戦力が充実しているオランダは、戦術的にフォレリング一択にならないあたりも強み。“クイーン・オブ・クイーン”のマリアンヌ・フォスは勝てば4回目の女王の座。終盤にかけて展開がもつれるようなら、経験と勝負強さが発揮されることだろう。ツールで印象的な走りを見せたプック・ピーテルセやパウリーナ・ローイヤッカースらも控えている。
コペッキーとフォレリングに対抗できる一番手は、エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア)で間違いない。今季はジロ・デ・イタリア ウィメンで悲願の個人総合初優勝。オリンピックこそ振るわず、ツールも負傷の影響で回避したが、その後は復調傾向。25日に行われたミックスドリレーでは銅メダル獲得に貢献しており、状態は上向きだ。イタリアも戦力が整っており、ガイア・レアリーニもエースクラスの走りが期待できる。
劇的なツール制覇が記憶に新しい、カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)は1カ月以上戦線を離れたが、その甲斐あって好調との情報。優勝争いに名乗りを上げる可能性が高い。グランツール制覇でより自信に満ちた走りを見せることだろう。
五輪金メダルのクリステン・フォークナー(アメリカ)は、2冠に挑戦。パリで見せたクレバーな戦いぶりの再現はあるだろうか。得意の個人タイムトライアルで7位に終わったアンナ・ヘンダーソン(イギリス)は、立て直してロードでの上位進出を目指す。前回銅メダルのセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク)も調子を合わせてくるだろう。個人タイムトライアル、ミックスドリレーと、今大会すでに2つの金メダルを手にしているグレース・ブラウン(オーストラリア)は、これが世界大会最後のレースになる。
UCI世界選手権大会 女子エリートロードレース
力のある選手がそろったフランスにも大きな注目が集まっている。五輪マウンテンバイク金メダルのポーリーヌ・フェラン=プレヴォが、ロード復帰戦にこのレースを選んだのだ。来シーズンからの本格カムバックを前に、今大会でその脚を見せる。ここ数年はオフロードに傾倒したが、ロードでも2014年にアルカンシエルを獲得。経験と実績は申し分ない。セドリーヌ・ケルバオルやジュリエット・ラブースらとの共闘で、どこまで上位に近づくか見ものだ。
3選手で臨む日本チームは、長くワールドクラスとして走り続ける與那嶺恵理を筆頭に、先の個人タイムトライアルを走った垣田真穂、「サイクルビレッジ宅トレ部」にも参加した“鈴なり妖怪 鈴”こと木下友梨奈がエントリー。垣田は併催のアンダー23部門も対象となるほか、木下は競技歴1年で世界大会の代表入りを勝ち取っている。
このレースの勝者には、純白に虹のラインが施されたスペシャルジャージ「マイヨ・アルカンシエル」が贈られ、次回大会までのおおよそ1年間の着用資格が与えられる。誰がその走りに虹を架けるだろうか。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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