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サイクル ロードレース コラム 2024年9月20日

グレース・ブラウンが五輪との2冠で有終の美なるか 女王クロエ・ダイガート筆頭に前回上位ライダーが続々参戦で激戦必至!【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 女子エリート個人タイムトライアル:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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UCI世界選手権大会

昨年はクロエ・ダイガートが女子エリート個人タイムトライアルで世界一に

活況のまま進行するロードレースシーンは、いよいよ2024年シーズンの世界王者・女王を決める戦いを迎える。今年のUCI世界選手権大会の開催地は、スイス・チューリッヒ。UCI(国際自転車競技連合)のお膝元で世界最高峰の国別対抗戦が行われる(UCIの所在地は250kmほど南西の街・エグル)。

大会は9月22日から29日までで、パラサイクリングの世界選手権と併催される。男女のエリート種目を通じて最初に行われるのが、女子エリートの個人タイムトライアルである。

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UCI世界選手権大会 女子エリート個人タイムトライアル

女子個人タイムトライアル

レース距離は29.9kmに設定され、ゴッサウの街を出発して主会場のチューリッヒを目指すルート。コースレイアウト的には色の異なる2つのパートで構成される印象で、前半が丘陵パート、後半が平坦パートといった趣き。この間、スタート・フィニッシュ地も合わせると9つの街を通過する。

丘陵パートでは10.4km地点の第1計測ポイントまで、高度にして約200mを5kmかけて上り、その後も細かなアップダウンが連続。これを抜けるとチューリッヒ湖岸の道路に出て平坦パートへ。おおよそ10km北上すると、チューリッヒの街に到達する。全体的にみるとTTスペシャリスト向きのコースと言えるが、丘陵パートでいかにリズムを崩さずに走り抜けるかが重要になる。前半から飛ばしていくのか、後半にペースアップを図るのか、選手によって走り方が異なりそう。また、前半は大小無数のコーナーが連続することから、バイクテクニックも重要な要素となりそうだ。

タイムトライアル女王を決める一戦には、事前エントリー段階で50カ国(難民選手団含む)から83選手がリストに名を連ねている(最終的な出走人数の変動もあり得る)。

一番の注目は、グレース・ブラウン(オーストラリア)がパリ五輪との2冠なるか。今シーズン限りでの現役引退を表明しており、2冠達成で有終の美を飾りたいと意気込んでいる。これまでタイトルを数々手にしているが、世界選手権の勝利には恵まれていない。最高の舞台で最高の走りができるか、最後の挑戦が近づいている。

UCI世界選手権大会

一番の注目は、グレース・ブラウン(オーストラリア)

そこに立ちはだかるのが、昨年の女王クロエ・ダイガート(アメリカ)。パリ五輪ではこの種目の銅メダルを獲った後にトラック競技で金メダルをゲット。その後は活動をロードにシフトして今大会に合わせてきている。

五輪銀メダルのアンナ・ヘンダーソン(イギリス)は、その後レース数をセーブしながら今大会に向けて調整を進めてきた。パリではブラウンに1分以上の大差を許したが、今回はその差をどこまで縮められるだろうか。世界選手権では初の表彰台を目指す。

世界大会でコンスタントに上位を押さえるジュリエット・ラブース(フランス)も初の表彰台を視野に入れる。前回銅メダルのクリスティーナ・シュヴァインバーガー(オーストリア)は、前週行われたヨーロッパ選手権のこの種目で銅メダルを獲り、状態を上げてきている。

そのヨーロッパ選手権を勝ったのが、いまのウィメンズプロトンを引っ張っているロッテ・コペッキー(ベルギー)。このときは31.1kmの平坦コースで2位以下に40秒以上の差をつけて圧勝。トラックで培ったスピードと、レイアウト問わず対応するロードでの走りを考えると、チューリッヒのコースも問題なくこなせるだろう。パリ五輪以降はロードにフォーカスしており、目指すところはロード連覇だが、その前にTTで脚見せする。

選手層の厚さは群を抜くオランダは、スーパーエースのデミ・フォレリングと産休から完全復帰を果たしているエレン・ファンダイクで勝負。フォレリングはツール・ド・フランス ファムでのTTステージ快勝が印象的。世界大会でも確実に上位進出をしており、今回も当然メダル候補に挙がってくる。過去3度世界女王に輝いているファンダイクは、ヨーロッパ選手権2位でいよいよ最前線へ還ってきた。優勝争いに食い込んでくるようだと、その水準は一気に上がることとなる。

前回大会、パリ五輪それぞれの上位選手が大多数エントリーしており、誰かひとりが完全に抜け出すような展開とはならず、混戦になるものと思われる。10.4km地点の第1計測、20.5km地点の第2計測、そしてフィニッシュと、細かく変動するであろう上位争いから目が離せない。勝者には白地に5色の帯が施されたマイヨ・アルカンシエルが贈られ、向こう1年間同種目での着用資格を得る。

なお、ツール・ド・フランス ファムを勝ったカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)は、ロードレースに集中するため個人タイムトライアルには出場しない(そもそもタイムトライアルを得意としていない)。

日本からは、トラック競技でパリ五輪を走った垣田真穂がエリートとしては初出場を果たす。五輪後にEF・オートリー・キャノンデールに加わって、フランスとベルギーでレースをこなしている。2年前にはジュニアで世界選手権のこの種目13位。今度は最高峰の舞台で世界における自身の位置を測る機会になる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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