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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第20ステージ】ログリッチが大会最多タイ4度目の総合優勝に王手…最難関を制したのはダンバー
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸今大会2度目のステージ優勝を果たしたエディ・ダンバー
第79回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月7日、ビリャルカヨ〜ピコン・ブランコ間の172kmで第20ステージが行われ、ジェイコ・アルウラーのエディ・ダンバー(アイルランド)が最後に抜け出して2度目のステージ優勝を飾った。前日に首位を奪還したレッドブル・ボーラ・ハンスグローエのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)はわずか10秒遅れのステージ3位でフィニッシュ。総合2位ベン・オコーナー (デカトロン・AG2Rラモンディアル)との差を2分02秒と広げて、最終日の個人タイムトライアルに大会最多記録と並ぶ4度目の総合優勝に挑む。
最終日前日の第20ステージは、最後の山岳決戦だ。ビリャルカヨからピコン・ブランコまでのルートには7つの山岳ポイントがあって、獲得標高は4730mだ。
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カスパー・アスグリーン (ティーレックス・クイックステップ)がこの日の最初のアタッカーとなり、10選手がこの日の最初の峠から先行を始めた。山岳賞ポイント57点で1位のマルク・ソレル、同56点で2位のジェイ・ヴァインはUAEチームエミレーツのチームメート。クレマン・ベルテ(デカトロン・AG2Rラモンディアル)、マルコ・フリーゴ(イスラエル・プレミアテック)、シルヴァン・モニケ(ロット・デスティニー)、カルロス・カナル(モビスター)、ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)、トマ・シャンピオン(コフィディス)、アロルド・テハダ(アスタナカザクスタン)、パブロ・カストリーリョ(エキポケルンファルマ)。
ヴァインは休息日にソレルに、「僕はやり残したことがある」と話したという。ソレルはヴァインが山岳賞を獲得することに同意した。この日もソレルは、山岳賞ポイント獲得を目指していたライバル2人を疲れさせ、ヴァインをフレッシュな状態に保つ働きを見せた。
第20ステージは今大会最後の難関山岳ステージ
ソレルのアシストを受けたヴァインはこの日の最初の3つの峠、ラス・エスタカス・デ・トゥルーバ(カテゴリー3級、34.2km地点)、プエルト・デラ・ブラギア(カテゴリー3級、55km地点)、アルト・デル・カラコル(カテゴリー2級、74km地点)を制し、暫定山岳賞ランキングでトップに立った。
山岳賞ジャージを着用しているソレルもチームメートのヴァインをサポートするとともに、何度も攻撃を仕掛け、ポルティージョ・デ・ルナダ(1級、93km地点)とポルティージョ・デラ・シア(2級、111.4km地点)をトップ通過した。この時点でUAEチームエミレーツの2人は山岳賞ポイント76点で並んだ。ただしソレルはカテゴリー超級のラゴス・デ・コバドンガを制していることで山岳賞順位が上になっている。
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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第20ステージ|Cycle*2024
一方、イネオス・グレナディアーズとティーレックス・クイックステップがメイン集団のなかで競争を激化させてきた。55km地点で逃げている選手との差は6分にまで広がったが、この日6番目の峠、プエルト・デ・ロス・トルノス(1級、146.4km地点)でその差を一気に詰めていった。マイヨ・ロホを着るログリッチは、ニコ・デンツ、パトリック・ガンパー、ダニエル・マルティネスの3人のチームメイトをここで失う。デンツはタイムオーバー、ガンパーとマルティネスはリタイアを余儀なくされた。
パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)は、ゴールまで残り30km地点、プエルト・デ・ロス・トルノス頂上4.5km手前でアタック。頂上で20秒の差をつけた。ヴァインはこの峠で少なくとも1ポイント取らなければならないと指示されたが、4位通過して山岳賞ポイント2点を獲得。ソレルを上回って山岳賞トップになった。
レースは最後の山岳ピコン・ブランコへ。シヴァコフのリードは山麓で1分だった。ダンバーが残り5kmでアタックし、先行していたシヴァコフに追いつく。ダンバーは残り2.5kmで単独走行を開始するが、ログリッチ、ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・FDJ)、エンリク・マス(モビスター)、リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)らが追いかけてくる。それでもダンバーは、マスに7秒、ログリッチに10秒差をつけて、第11ステージに続く2度目のステージ優勝を飾った。
ダンバーは「全員が素晴らしい走りを見せてくれた」とチームメイトに感謝
「今回の勝利は間違いなく、少し甘い気持ちだ。先週にステージ優勝するまでは、グランツールのステージで勝つなんて想像もしていなかった。山岳でトップフィニッシュすることをイメージしているんだと夢を語ったこともある。今日は後半の部分がとにかくよかった。峠では自分を信じた。ペースもすごくよかった」とダンバー。
「最後の峠は数年前に走っていたから知っていた。2020年のブエルタ・ア・ブルゴスで経験しているんだ。急な部分はかなりペースを上げて、平坦な部分は完全にエネルギーを使い果たさないように気をつけながら走った。今日は持ちこたえられて本当にうれしい。ここ数日、みんなが素晴らしい仕事をして、トラブルから遠ざけてくれた。彼らは本当にサポートしてくれた。完走するのはたった5人だけになったが、全員が素晴らしい走りを見せてくれた。いい時もあれば悪い時もあったが、これはすべてプロセスの一部。このような瞬間はそう頻繁に訪れるものではない。友人や家族と一緒にこの瞬間を共有し、祝うことを楽しみにしている」(ダンバー)
マスには3秒遅れたものも大勢に影響なくゴールしたログリッチは、「チームはこの日いい結果ではなかったが、全員がベストを尽くした。敬意を表したい。全員が持てるすべてを出し切った。幸い、私は今のところ体調も悪くないので、いい1日だった」とゴール後にコメント。
「この3週間でかなり大きな仕事をしたので、あとはそれをきちんと締めくくるだけだ。間違いなくフィナーレに1日近づいたし、正しい方向に進んでいるので、明日は本当の総合優勝の日だ。私はいつも、自分はタイムトライアルのスペシャリストではないと言っているけど、最後は全力を尽くして走るだけだ」
総合3位のマスは同2位オコーナーに7秒差をつけるとともにボーナスタイムも獲得し、オコーナーとのタイム差をわずか9秒に縮めて最終日のタイムトライアルに挑むことになった。
マドリードでの最終ステージは距離24.6kmの個人タイムトライアル。ポイント賞と山岳賞の設定はないので、ポイント賞1位のカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)と山岳賞1位のヴァインは無事にゴールすれば受賞が決まる。総合優勝もログリッチが同種目の2020東京五輪金メダリストだけに逆転される可能性は少ないだろう。
山岳賞を獲得したヴァインは、「大会も大詰めとなってチーム総合優勝も確保することができた。イサーク(イサーク・デルトロ)が僕より先にゴールしていたので、その必要はなかったけど、ボクが上位でゴールできるようにソレルが助けてくれた。ソレルの脚はとても強くて、本当に素晴らしいチームメイトだ」と感謝の言葉を語った。
ヤングライダー賞(マイヨ・ブランコ) はマティアス・スケルモース(リドル・トレック)がフロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)に1分08秒差をつけて最後の勝負に挑む。
マイヨ・ブランコをキープしたマティアス・スケルモースも最終日に向け気合十分
「ここ3週間ほど調子が悪い。今日も最初からかなり痛くて、体調はあまりよくなかった。ホワイトジャージをキープできればいいな。フロリアン・リポヴィッツが本当に優秀なタイムトライアル選手だということは知っている。僕もそうだから、なんとかキープしたい」とスケルモース。
「僕だってタイムトライアルには自信がある。デンマークのチャンピオンになったことはかなり大きな意味があると思う。でも、どうなるかはわからない。明日は3週間の厳しいレースの最終日で、脚の調子が悪いと大きな影響が出るけど、前向きに取り組んでいるので、最後になにが起こってもこのブエルタ・ア・エスパーニャには満足している」
文・山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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