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サイクル ロードレース コラム 2024年9月2日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第15ステージ】オコーナーが意地の首位死守…総合2位ログリッチは痛恨の20秒ペナルティ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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今大会2回目の勝利を飾ったパブロ・カストリーリョ

今大会2回目の勝利を飾ったパブロ・カストリーリョ

第79回ブエルタ・ア・エスパーニャは9月1日、インフィエスト〜バルグランデ=パハーレス クイトゥ・ネグル間の142.9kmで第15ステージが行われ、エキポケルンファルマのパブロ・カストリーリョ(スペイン)がアレクサンドル・ウラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とパヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)による3選手の競り合いを制し、第12ステージに続く2勝目を挙げた。

リーダージャージのマイヨ・ロホを着用するベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロン・AG2Rラモンディアル)は、4度目の総合優勝を目指すプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)ら総合成績の上位選手の攻撃に遭ったが、エンリク・マス(モビスター)とログリッチから38秒遅れでゴール。オコーナーは総合2位ログリッチに1分03秒差、同3位マスに2分23秒差まで詰め寄られたものの、首位を守って第2週を終えた。

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スペイン北部アストゥリアス州に用意された想像を絶する過酷な山岳コース。レースはまず、カテゴリー1級山岳コリャディエリャ(登坂距離6.4km、平均勾配8.2%、最大14%)を2回上る。中盤には2kmにわたって9%台の勾配が続く厳しい峠だ。しかもレース中盤に設定されたこの周回コースには、これとは別にカテゴリー3級の峠もある。

そしてラスト40kmはひたすら上りっぱなしで、最後は今大会最高地点である標高1847mのクイトゥ・ネグルまで駆け上がる。バルグランデ=パハーレススキー場はこれまでもブエルタ・ア・エスパーニャに登場してきたが、12年前にそれまでの山頂からさらに3km先まで上り坂が舗装された。これが悪名高きクイトゥ・ネグルだ。

過酷な山岳コースで競い合う選手たち

過酷な山岳コースで競い合う選手たち

距離18.9km、平均勾配7.4%となった山岳フィニッシュは、ラスト3kmから勾配値20%のゾーンが距離100mで5カ所に出現する。日本では道路構造令という法律があって一般の人たちが通行する公道では法外な激坂は認められないが、とにかくスペインは緩いのか。だからブエルタ・ア・エスパーニャには勾配値20%の激坂がひんぱんに出現する。もちろんそれがこのレースの面白さであるのだが、選手はたまったものではないだろう。獲得標高は3545mとなる。

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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第15ステージ|Cycle*2024

スタートからアタッカーたちが逃げを巡って激しい戦いを繰り広げた。ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)、カスパー・アスグリーン(ティーレックス・クイックステップ)、マルコ・フリーゴ、ライリー・シーアン(イスラエル・プレミアテック)、ヨナス・グレゴー(ロット・デスティニー)、マックス・プール(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)、ヨン・イサギレ(コフィディス)、カストリーリョが、1回目のコリャディエリャの頂上(37.6km地点)を通過した。しかし、残り95kmで彼らは追走してきた選手たちに追いつかれた。約21選手がカテゴリー3級の峠をクリアした。

一方、メイン集団を積極的に動かしたのがティーレックス・クイックステップ勢だ。ハイペースで先頭を引っ張ったため集団から抜け出そうとする選手はなかなかいなかったが、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が2回目のコリャディエリャ(87.6キロ地点)で揺さぶりをかけた。

レースの先頭はヴァイン、シヴァコフ、ウラソフ、シュテファン・キュング、カンタン・パシェ(グルパマ・FDJ)、カストリーリョらの7選手になった。最後のクイトゥ・ネグルの上り始めで、メイン集団との差は3分05秒だ。

クイトゥ・ネグルの麓でヴァインが抜け出す。シヴァコフがこれに反応してトップに立つと、すぐにウラソフとカストリーリョだけが追従する。ステージ優勝争いはこの3選手に絞られた。

彼らの後ろでは総合グループが活性化。ミケル・ランダ(ティーレックス・クイックステップ)の最後のアシスト役、マティア・カッタネオが残り6kmで任務を終えた時点で、その差は2分に縮まっていた。

総合成績の上位選手からリードをとったカストリーリョ

総合成績の上位選手からリードをとったカストリーリョ

カストリーリョは残り3kmで攻撃を仕掛ける。しかし、最後の1kmに入るとウラソフがその差を埋めてきた。それでもカストリーリョが何度も加速すると、ウラソフは抵抗できなかった。23歳のカストリーリョは今週2度目の勝利を挙げた。

「正直に言うと、予想していなかった。今朝は逃げ切りがどうなるか見てみようというつもりで参加したが、勝てる位置につけるとは思っていなかった。最初の勝利は信じられなかったが、2度目の勝利は夢のようだ。最高のブエルタ・ア・エスパーニャになった。他になにを言えばいいのかわからないくらいだ」とカストリーリョ。

カストリーリョは「2度目の勝利は夢のようだ」と語る

カストリーリョは「2度目の勝利は夢のようだ」と語る

総合優勝候補の中では、ログリッチが最後の3kmで最初に動き出すが、マスが追いつき、2人で後続選手に差をつけた。最終的に2人はカストリーリョから1分04秒遅れ、オコーナーに38秒差をつけてゴールした。ただしログリッチは20秒のペナルティを受けて、オコーナーとのタイム差は18秒しか縮まらなかった。

この違反は最後のクイトゥ・ネグルに上り始める前、シングルチェーンリングをセットした激坂対応のロードバイクにログリッチが乗り換えた後、チームのサポートカーの後ろについて集団復帰したことがドラフティング(空気抵抗軽減)違反とみなされたものだ。この20秒がどれほど大きなものかは最終週になってみないとわからないだろう。

「そうだね、今日は楽観的だった。僕がジャージを失うだろうと思っていた人たちが間違っていたことが証明されたと思う。かなりいい一日だった。最後に少し差が開いてしまったのは残念だけど、あれは今まで経験した上りの中で最悪の結末の一つだった」とオコーナー。

「最悪だったよ! アタックはプリモシュ(ログリッチ)の1回だけで、すごく印象的だった。その後の上りはまさに男同士の戦いだった。どこにも行けないような気がしたし、霧でなにも見えなかった。大変だったよ。まだ総合成績でリードしているので、これでいい。明日は休んで、できれば楽しもうと思って、火曜日にラゴス・デ・コバドンガに挑む。マイヨ・ロホは今日で10日目。コースのほぼ半分を走ったことになるので誇りに思う。私は自分自身に満足し、息子たちと一緒に幸せになれる。私にとって本当に魔法のような瞬間だ」

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのアシスト役、フロリアン・リポヴィッツはステージ12位と好位置でゴールし、ヤングライダー賞の1位にカムバックした。

「1日中、とてもハードだった。最初からとてもハイペース。最後の上りでは、総合上位の選手たちについていくようにした。そして、最後の3kmでプリモシュ(ログリッチ)のためにアタックを開始した。その後、戦いが本格化したので全力を尽くした。できるだけいい走りでフィニッシュしようとしたが、最終的には完全に限界。でも、プリモシュはいい走りをしてくれたと思うし、ウラソフもステージ優勝争いに加わったので、今日はうまくいったと思う。マイヨ・ロホにかなり近づいている」(リポヴィッツ)

ブエルタ・ア・エスパーニャは9月2日に2度目の休息日を過ごし、いよいよ最終週へ。残り6ステージは非常に激しい戦いが予想される。レースは依然としてアストゥリアスでの山岳決戦。第15ステージはクイトゥ・ネグルに登ったが、休息日明けの第16ステージはラゴス・デ・コバドンガの山頂フィニッシュとなる。痛恨の20秒ペナルティを受けたログリッチがここで逆転をしかけるのか? オコーナーが再び意地を見せるのか?

文・山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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