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サイクル ロードレース コラム 2024年8月24日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第7ステージ】大会前からフォーカスしていたステージを勝ったワウト・ファンアールト 前回王者セップ・クスのアシストに応える「チーム哲学を表した最高のレースだ」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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第7ステージ後半には2級山岳アルト・デル・カトルセ・ポル・シエントが待ち構えている

終盤に待ち受けた急坂区間をクリアし、最終局面でメイン集団に残ったのは33人。フィニッシュに向けてはアタッカーと集団の追いかけっこになったけど、最後はスプリント勝負になって、ワウト・ファンアールト (ヴィスマ・リースアバイク)が今大会2勝目となるステージ優勝。大会前からフォーカスしていたといい、前回王者のセップ・クス の献身的なアシストに応える勝利になった。

「僕たちはただ勝つだけでなく、チームとしてパフォーマンスするために、誰もが自分を犠牲にすることができる。見ての通り、ディフェンディングチャンピオンが僕をサポートしてくれたんだ。これこそが、ヴィスマ・リースアバイクのチーム哲学を表した最高のレースだよ」(ワウト・ファンアールト)

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単独で逃げ中間スプリントを獲ったイササ

先史時代からの遺構を誇るアルキドナを出発したブエルタ一行は、リアルスタート直後のシャビエル・イササ(エウスカルテル・エウスカディ)のアタックを容認し、まずはイージーな序盤。ひとり逃げになったイササは、50km地点で9分ものリードを稼ぎ出して、快調に進んでいく。しばらくすると、メイン集団ではアルペシン・ドゥクーニンクとヴィスマ・リースアバイクがペーシングを本格化。それぞれ、カーデン・グローブス とワウト、両エーススプリンターを立てるべくレースを中盤へと進めた。

順調にタイム差をコントロールするメイン集団は、中間地点を過ぎる頃にはその差を4分台に。残り50kmを切ったところで2分台として、イササを完全に射程圏にとらえた。さらに10km進むと、フィニッシュ地・コルドバの街を一度通過。集団は一層ペースが上がって、前日にマイヨ・ロホを手放したプリモシュ・ログリッチ 擁するレッドブル・ボーラ・ハンスグローエと、そのジャージを奪ったベン・オコーナー を盛り立てるデカトロン・AG2Rラモンディアルとが前方を固める。イササは141km地点に設定された中間スプリントポイントまではトップを走り続けたが、ほどなくして集団がキャッチ。140kmに及んだひとり旅が終わった。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第7ステージ|Cycle*2024

このステージの大きなポイントと目されたのが、唯一のカテゴリー山岳にして、最大勾配16%超の2級山岳「14%坂」。なぜ最大勾配が14%じゃないのか……という疑問はさておいて、集団の人数を絞り込むには最適なポイントであることは確かだ。まず引っ張ったのが、ヴィスマ・リースアバイク。エドアルド・アッフィニを前に送り出してペースを上げる。頂上まで2kmを切って16%区間を迎えると、今度はレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが前に出て、アレクサンドル・ウラソフが牽引役。集団を絞るには効果的なアクションだった一方で、前日好走したフロリアン・リポヴィッツが遅れてしまうなど、自チームの枚数を減らしてしまう格好にもなった。マイヨ・ロホのオコーナーは、前方にポジションを構えてこの状況をやり過ごしている。

頂上に置かれたボーナスポイントに向けては、個人総合8位でスタートしていたレナルト・ファンイートヴェルト(ロット・デスティニー)らがアタックするも、ここは冷静に対処したログリッチが1位通過。6秒ボーナスを得て、オコーナーとの総合タイム差を縮める。ログリッチが先頭のまま下りに入るが、テクニカルなレイアウトを利用してソレルがアタック。これを受けて、集団牽引役を引き受けたのがクス。フィニッシュを狙えるワウトが急坂をこなして、集団に残っていたのだ。

厳しい暑さを少しでも緩和しようと行われた放水

「ワウトがこのステージを狙っていることは知っていた。ただ、上りが簡単ではないので、僕個人としてはワウトの走り次第で対応を変えるつもりだった。だけど、彼がトップに近い位置で上り切ったのを見て、調子が良いことを確信したんだ。彼のために大きな役割があることを自覚したよ」(セップ・クス)

後方グループではグローブスが落車し、メイン集団への復帰が難しい状況になっていた。ヴィスマ・リースアバイクとしては、ワウトがステージ優勝する大きなチャンス。ソレルが20秒前後の差で逃げる間、ワウトみずから追走を試みたりもしたけど、集団の勢いを見てひとりで追うのは得策ではないと判断。再びクスを頼りに、最終盤へ状勢を整えた。

ゴール前スプリントで文句なしの伸びを見せたファンアールト

残り3.5kmで、ついにソレルをキャッチ。一瞬ペースが緩んだ隙にダヴィド・ゴデュ(グルパマ・FDJ)やパヴェル・シヴァコフ (UAEチームエミレーツ)が飛び出したけど、集団でのレースクローズを図ったレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが逃げを阻止。勝負はスプリントにゆだねられた。

こうなると、スピードで群を抜くワウトのターン。今大会好調のマティアス・ヴァチェク(リドル・トレック)らがマークするべく上がってきたけど、それらをすべてかわしてのスプリント。ライバルが前に出る余地を与えず、ワウトが一番にフィニッシュラインを通過した。

「もう少し大きな集団でスプリントすることになるだろうと想定していた。思っていた以上に上りで人数が減っていて、僕にとっては良い状況になったよ」(ワウト)

ポイント賞のマイヨ・ヴェルデに違わぬスピードを見せた後ろでは、クスも拳を掲げる。紛れもなく、このステージ最高の男だ。それなのに、レース後に語られた言葉は謙虚さと優しさに満ちている。

「ソレルを捕まえた後にペースを緩めてしまって、数人がアタックした状況は個人的には失敗だった。でも、僕以上にワウトが冷静で、勝つためにベストな対応をしたあたりはさすがだと思ったね。ワウトが勝ったのが自分のことのようにうれしいよ」(クス)

ゼッケン1番クスの好アシストに感謝するファンアールト

ワウトは改めて、クスの驚異的な走りを強調する。

「上り終えた時点で、僕たちは2人になっていたんだ。そこからのセップの働きには驚かされた。体重が60kgを切る選手が平坦であれだけ牽けるのは本当にすごいことなんだよ。彼のためにも勝たなきゃと思ったら鳥肌が立った。チームとしても、とても大きな勝利だ」(ワウト)

マイヨ・ロホを着て走ったオコーナーも、メイン集団で走り終えてリーダー初日をまっとう。総合で2番手につけるログリッチがボーナスタイムを獲ったことで、タイム差は4分45秒となったけど、このステージだけ見れば問題ではない。

「今日も調子が良くて、楽しんで走ることができたよ。僕のマイヨ・ロホを見てチームメートも一層やる気になっていたように感じた。レッドブルが攻撃的だったって? 予想通りだよ。この先のステージでも彼らは仕掛けてくるだろうけど、僕としてはどうするべきか理解できている。プロライダーとして8年目だし、経験も積んできた。リードを守ることは、何も世界で一番困難なことではないよ」(オコーナー)

大会第1週は残り2日。第8ステージは、最大勾配20%超の3級山岳を上った先にフィニッシュラインが敷かれている。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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