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サイクル ロードレース コラム 2024年8月22日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第5ステージ】唯一の平坦ステージでパヴェル・ビットネルが大金星! ワウトやグローブスに先着し「仲間の“今日はできる”との言葉を信じていたんだ!」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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第5ステージはブエルタ唯一の平坦ステージ

“クライマーズ・ブエルタ”にあって、唯一の平坦ステージ。今大会19あるロードレースステージで、カテゴリー山岳を上らないのはこの日だけ。ステージ優勝争いはセオリー通りスプリントになったけど、勝ったのは開幕以来ポイント賞を争うワウト・ファンアールト (ヴィスマ・リースアバイク)でも、カーデン・グローブス (アルペシン・ドゥクーニンク)でもなく、21歳の新鋭パヴェル・ビットネル(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)だった。

「仲間から“今日はできる”と言われていたんだ。僕もきっとうまくいくと思っていた。自分とチームのことを信じて走ったよ。だからチャンスがめぐってきた瞬間に思い切って踏み込んだんだ」(パヴェル・ビットネル)

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前日までと同様に、暑さがプロトンを悩ませていた。とりわけ、この日はスタート時で気温が36度。アスファルト上での体感は40度を優に超えているとの話もあって、その感覚はレース展開にも反映されていた。

スタートアタックを仕掛けた2選手

チョミン・フアリスティ(エウスカルテル・エウスカディ)とイボン・ルイス(エキポケルンファルマ)のスタートアタックを見送ったメイン集団は、彼らの逃げを約5分20秒差まで容認。スタートから1時間過ぎたのを機に少しずつペーシングをはじめて、フィニッシュまで100kmを残した段階で、その差は3分30秒。集団内はまだまだリラックスムードである。

アルペシン・ドゥクーニンクとヴィスマ・リースアバイクがコントロールを担って、着実に先頭2人との差を縮めていく。残り50kmで1分35秒差。完全に射程圏に捉えると、フィニッシュ前45kmから自然発生的に各チームが隊列を組んで、集団前方でポジショニング。こうなると当然のようにペースが上がって、フアリスティとルイスの背中が大きくなってくる。

追い風に乗った集団は結局、38kmを残して2人を吸収。フアリスティとルイスは互いの健闘を称え合い握手をしながら集団へと戻った。今大会3回目の逃げを演じたルイスは、レースを先導した総距離が441kmに到達。ほぼ毎日逃げているエキポケルンファルマとしても、ここまでの総走行距離の約80%にあたる583kmで先頭を走っている。

「逃げる以上は長い1日になることは覚悟できている。周りと協力してできるだけ長く逃げ続けられるよう努力するのは当然の仕事さ。エキポケルンファルマの力を最大限発揮するベストな方法でもあるからね」(イボン・ルイス)

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第5ステージ|Cycle*2024

プロトンの勢いは変わらぬまま、レース終盤に設定された中間スプリントポイントへ。このステージからマイヨ・ベルデを身にまとうワウトが先に仕掛けると、すぐにグローブスが反応。やはり両者の争いになって、先着したグローブスが20ポイントを加算。2位通過のワウトも17ポイントを加えている。

セビリアの街を駆け抜けるプロトン

フィニッシュ地・セビリアに近づくとともに道が広くなるも、集団内の緊張感は高まるばかり。残り10.5kmでは左コーナーでオウェイン・ドゥール(EFエデュケーション・イージーポスト)が落車。直後を走っていたチームメートのルイ・コスタ が巻き込まれ、路面に叩きつけられてしまう。ドゥールは何とか再出発したものの、コスタは打ち所が悪く再乗車できず。自国ポルトガル開幕にモチベーションを高めていたベテランが、思わぬ形でリタイアを余儀なくされてしまった。

こうしている間にも集団は最終盤を急いでいて、モビスター やdsmフィルメニッヒ・ポストNLが中心となって主導権争い。そこへリーダーチームのレッドブル・ボーラ・ハンスグローエも加わり、残り2kmを切ったところからはアルペシン・ドゥクーニンクも上がってきた。

最後の1kmを示すフラムルージュを通過すると同時に、アルペシン・ドゥクーニンクが満を持して先頭へ。アシスト4枚で引き上げるのはもちろんグローブス。スプリントへベストな状況を作り出したかに思われた。

しかし、ここで頭脳プレーを見せたのがヴィスマ・リースアバイク。グローブスの付き位置にワウトが入っていたが、別ラインからアッティラ・ヴァルテルやエドアルド・アッフィニがポジションを上げてアルペシン・ドゥクーニンク勢のリズムを崩しにかかる。グローブスがアッフィニの上がりに気を取られて右に目をやった隙に、反対側からワウトが猛進。グローブスの加速が遅れている間に、ワウトが先頭に立った。

このままワウトが突き進むかに思われたが、脇から伸びてきたのはビットネル。両者並ぶようにしてフィニッシュラインを通過すると、ほんのわずかにビットネルがワウトに先着。大金星の瞬間がやってきた。

21歳のビットネルが大金星

「信じられないよ。数日前にプロ初勝利を挙げたばかりなのに、初出場のブエルタで勝ってしまうなんて……。ロングスプリントで勝てたことにも驚いているよ。なにせ、相手は世界最高のロングスプリンターであるワウトだからね。実感できるまでかなり時間が必要だよ(笑)」(ビットネル)

ニューヒーローは、これがグランツールデビューの21歳。前哨戦のブエルタ・ア・ブルゴスでは、ステージ2勝を挙げてポイント賞を獲得していた。スプリントで進境著しいけど、今季前半はワンデーレースを中心にプログラムをこなしていて、パリ~ルーベでは29位。ジュニア時代にはタイムトライアルでも活躍し、独走力を生かすフィジカルも有する。

「自分をスプリンターとは考えていなくて、クラシック向きの脚質だと思っている。将来的にスプリントを狙っていくかはまだ分からない。いずれにしても大きな自信になるね。僕だけでなく、チョコ人ライダーがみんな“やれるんだ!”という思いを持ってくれるとうれしいよ」(ビットネル)

2位で終えたワウトは、最終局面で冷静さを失っていたことを認める。

「スプリントまでの動きは予定通りだった。カーデン(グローブス)の後ろから加速するところまでは良かったけど、スプリントをするにはタイミングが早すぎた。それに、誰が追ってきているのかが分からなくて、慌ててハンドルを投げてしまったんだ。エキサイトしすぎて大きなミスを犯してしまった」(ワウト・ファンアールト)

それでも、ワウトはポイント賞争いでグローブスとの得点差を広げることに成功。両者の差は13点となっている。

このステージは、150位までが集団でレースを完了。フィニッシュ前の救済は鋭角コーナーが連続した最後の4kmを対象とする特例がなされ、この間にパンクトラブルに見舞われていたミケル・ランダ (ティーレックス・クイックステップ)も同タイム扱いになっている。

第6ステージもレースリーダーとなったログリッチ

マイヨ・ロホでレースに臨んだプリモシュ・ログリッチ (レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)もトラブルなく走り終えて、ジャージをキープ。次の第6ステージもレースリーダーを務める。

「暑さにさらされながらもゆっくり走るのと、速く走って風を受けるのと、どっちが楽なのか分からなかったよ。それくらい今日は暑かった。いずれにしても、無事に走り終えられて良かったよ」(プリモシュ・ログリッチ)


文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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