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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第4ステージ】ブエルタを知り尽くす男・ログリッチ 今大会1つ目の山岳を制しマイヨ・ロホに袖を通す「今日の僕は幸運で、脚にも力があった」
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介接戦はログリッチの勝利
開幕地・ポルトガルでの3日間を終えて、いよいよ主たる舞台スペインへ。その一発目が、今大会最初の本格山岳ステージ。1級山岳ピコ・ビリュエルカスの頂上を目指す行程は、マイヨ・ロホ争いの有資格者をはかる第1関門でもあった。力ある者だけが前線に残って、最後は急坂でのスプリント。制したのは、プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。ブエルタ・ア・エスパーニャの戦い方を知り尽くす男が、早くもマイヨ・ロホにも袖を通している。
「もともとはステージ優勝を目指していたわけではないのだけれど、チームメートの懸命な働きを見たら、僕に残されている選択肢は“勝利”しかないと分かったんだ。みんなの走りにお返しができてとてもうれしいよ」(プリモシュ・ログリッチ)
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その言葉通り、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが終始レースをコントロールしていた。今大会1つ目の山岳ステージを獲りに行く姿勢は、アシスト陣が集団前方を固める様子からも明白。おなじみのレッドブルロゴを配したネイビーの軍団は、20km地点を過ぎて形成された5人の逃げに対して2~3分のタイム差にとどめて進行する。
先頭では、シルヴァン・モニケ(ロット・デスティニー)が上りでたびたび仕掛けて、山岳ポイントを稼いでいく。2級カベサベローサ、1級ピオルナルと連続して1位通過。中盤の平坦区間を経て迎えた、ボーナスポイントを兼ねた3級ミラベテではブリュノ・アルミライユ(デカトロン・AG2Rラモンディアル)が先着したが、モニケも3位通過でポイントを加算。このステージが終わった時点で山岳賞のトップに立った。
「今朝、トーマス(トーマス・デヘント)が逃げるうえでのアドバイスをしてくれたんだ。その結果、山岳ジャージが手に入ったので成功だね。でも僕たちの目標は山岳賞ではなく、レナルト(ファンイートヴェルト)の総合成績なんだ。今日の走りが今後の成果につながると信じているよ」(シルヴァン・モニケ)
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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第4ステージ|Cycle*2024
ミラベテを上り終えた後に、アルミライユがアタック。パブロ・カストリーリョ(エキポケルンファルマ)が続き、2人逃げとして先を急ぐ。メイン集団はなおもレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが主導権を握って、先頭2選手と差を2分程度にとどめている。この流れのまま155km地点に設置された中間スプリントポイントに達して、カストリーリョが1位通過。少しおいてやってきたメイン集団は、ポルトガルステージで競り合ったワウト・ファンアールト(ヴィスマ・リースアバイク)とカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が上位通過をかけたスプリント。ここはグローブスが3位通過として15点を獲得。ワウトも13点を獲って、ポイント賞首位の座はキープしている。
すぐに最終登坂ピコ・ビリュエルカスの上り口を迎えて、メイン集団ではスプリンターを中心に役目を終えた選手たちが後方へ。その中にはワウトの姿もあって、この時点でマイヨ・ロホは別の選手へ移ることが決定的になる。
早めにアタックしたアルミライユと追いついたカストリ―リョ
登坂距離14.6km・平均勾配6.2%、最大勾配が20%を数える急坂が本格化すると、ティーレックス・クイックステップやリドル・トレックも集団前方へ上がって隊列を編成。路面がアスファルトからコンクリートに変わった残り5kmでは、UAEチームエミレーツが攻撃に出て、パヴェル・シヴァコフが抜け出しを図る。タイミングを同じくして、逃げで粘っていたアルミライユとカストリーリョを集団がキャッチ。残り4kmを前にログリッチがみずからシヴァコフの先行を封じたのをきっかけに、総合系ライダーたちによる勝負が本格化した。
勾配20%区間で集団の人数が大幅に絞られると、フィニッシュまで3.8kmを残したところでフェリックス・ガル(デカトロン・AG2Rラモンディアル)が単独で先頭に立つ。これでペースが上がると、アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)やリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)がついていけず後退。ログリッチが追走態勢に入ると、レナルト・ファンイートヴェルト(ロット・デスティニー)、エンリク・マス(モビスター)が続いた。
1kmほど逃げたガルをログリッチら3人が捕まえると、そのままパスして先へ進む。残り2kmではマスがペースアップを試みたが、ログリッチもファンイートヴェルトも難なく対応している。
少しばかりの緩斜面を抜けて、再度急坂区間に入ったフィニッシュ前1.4kmでは、猛追したガル、ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、マシュー・リッチテッロ(イスラエル・プレミアテック)が先頭合流。さらにはミケル・ランダ(ティーレックス・クイックステップ)も追いついて、7選手によるステージ優勝争いとなった。
ハイウェイのような広い道幅はスペインの特徴の一つ
残り1kmを示すフラムルージュを通過して、数回リッチテッロが仕掛けるも失敗。残り600mではガルが仕掛けたが、これも決まらず。そして最後の200m。ランダのアタックにカウンターで反応したファンイートヴェルトが先頭へ。他の6人からリードを得たかに見えたが、ここは百戦錬磨のログリッチが冷静に対処。フィニッシュ前数十メートルでファンイートヴェルトを緩やかな右カーブの外側からかわして、そのままステージ優勝を決めた。
「コンクリートの上り坂は得意にしていて、急勾配も含めてブエルタらしくて気に入っているんだ。周りに大差をつけるのは確かに難しいけど、一番にフィニッシュできれば満足だよ。今日の僕には運があったし、脚にも力があったんだ。だから勝てたんだと思う」(ログリッチ)
“ビッグ4”の一角として挑んだツール・ド・フランスで落車負傷。傷めた背中はまだダメージが残っている。不安要素こそあれど、序盤から総合で優位に立つのは大会3連覇を成し遂げた2019年から2021年と同様。“ブエルタ・マエストロ”が、まずは流れをつかんだ。
「今はまだ体がどう反応するか見ながら走っている段階。ブエルタを走りながら、背中の痛みが癒えると信じている。マイヨ・ロホ? 僕としてはライバルを追うより“少し前にいる”くらいの方が好きだから、この状況は悪くないね。ただ、まだ大会は始まったばかり。毎日を楽しみながら、ベストを尽くすこと。それが今の僕とチームにできることだよ」(ログリッチ)
ランダが仕掛けて始まったスプリント
かたや、大金星を逃したファンイートヴェルトは収穫と反省のレースに複雑な心境。何より、フィニッシュ前で手を上げかけたアクションに頭を抱えた。
「勝ったと思ったかって? その通りだよ。失敗してしまった。フィニッシュ前で確信するのではなく、フィニッシュまで全力で踏み続けなければならないんだよね。大事なことを僕は忘れてしまっていたんだ。でも、結果そのものは悪くないし、この先勝つチャンスがめぐってくると思う。目標は総合成績だから、コンディションの良さを実感できて満足だよ」(レナルト・ファンイートヴェルト)
今大会最初の本格山岳ステージを終えて、個人総合成績は大シャッフル。首位ログリッチから8秒差でアルメイダが続き、32秒差でマスが3番手に位置。4位のアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)はヤングライダー賞争いで先行するが、このステージで好走のファンイートヴェルトも3秒差で追っている。
マイヨ・ロホ防衛がかかっているセップ・クス(ヴィスマ・リースアバイク)はこの日、28秒差のステージ11位。総合タイム差ではログリッチから1分14秒差となっていて、ここからの追い上げを誓っている。
「暑さもあって、正直なところベストではなかった。それでもタイム差を30秒以内でまとめられたので満足しているよ」(セップ・クス)
次に控える第5ステージは、今大会“唯一の”平坦ステージ。ブエルタらしい「歪な」ステージ構成に、ちょっとしたアクセントが加わる1日を迎える。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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