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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第3ステージ】翼を取り戻したファンアールト。「僕にとってパーフェクトなスプリントだった」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかワウト・ファンアールトが自身初のブエルタ区間勝利を獲得
翼をあらん限り広げて、才能が、再び大きく羽ばたいた。3月末の落車で複数の骨折を負って以来、どうしても勝てずにきたワウト・ファンアールトが、ついに勝者としての地位を取り戻した。マイヨ・ロホ姿で大集団スプリントを鮮やかに制し、自身初のブエルタ区間勝利を手に入れた。
「我慢強くいた甲斐があった。ずいぶんと長い間、両手を挙げることができなかったから、今はとても気持ちがいい」(ファンアールト)
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前日と同じく、主催者ワイルドカードで出場権を得た地元2チームが、ステージを長らく盛り上げた。しかもエウスカルテル・エウスカディからはルイス・マテとシャビエル・イササが、エキポケルンファルマからはイボン・ルイスとウナイ・イリバールが……つまり前日も逃げた2人が、それぞれチームメイトを引き連れて逃げ出した。
中間スプリントポイントでイササが飛び出し先頭通過
逃げのご褒美は、エウスカルテルが独り占めした。ステージ半ばの2級山岳では、前日に山岳賞を取り損ねたマテが、きっちり先頭通過を果たした。続く中間ポイントでは、イササがダッシュを成功させた。すでに山岳賞首位を確保していたマテは、終盤の4級山岳でも、改めて山頂へ向けてスプリント。最後はそこからの下りを利用して、イササが独走に打って出て……残り20kmまで粘った挙句、敢闘賞を競り落とした!
2018年ブエルタで、15日間にわたり山岳賞首位を守ったマテにとって、青玉ジャージとの懐かしい再会だった。今大会最年長の40歳は、今季限りで、17年間のプロ生活に幕を下ろすと決めている。
「本当に嬉しい。山岳賞はブエルタ開幕時からの目標だった。ずいぶん苦労したよ。2日も長い逃げを打つ必要があったからね。第1の目標はクリアしたから、これからは、全力で守っていかなきゃならない。僕にとって、逃げに乗るのは、道徳的義務のようなもの。だから、体力のある限り、毎日戦っていくつもり」(マテ)
4人の逃げの背後では、やはり前日と同じく、2チームが集団コントロールの主導権を握った。赤ジャージ姿のファンアールト擁するヴィスマ・リースアバイクに、ポイント賞ジャージをまとうカーデン・グローブス率いるアルペシン・ドゥクーニンク。静かに、ひたすら黙々と、作業に励んだ。
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【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第3ステージ|Cycle*2024
ステージ序盤にシュテファン・キュング、カスパー・アスグリーン、ヴィクトル・カンペナールツが、ちょっとした飛び出しを企てたこともあった。ただ上記2チームが厳しく対応し、強脚ルーラートリオの謀反はあっけなく鎮圧された。
残り51.4kmの中間スプリントは、前日と同じようにステージの最終的な行方を占う指針でもあり、それでいて前日とはまるで反対に物事が進んだ。第2ステージではグローブスがプロトン内で1位を取り(全体の3位通過)し、ファンアールトのボーナスタイム収集を阻んだ。この第3ステージでは、逆に、ファンアールトが先行した。全体の5位通過で、グリーンジャージ用に10ポイントをまんまと懐に入れた。ブエルタでは、中間ポイントは上位5人にしか与えられないから、グローブスにはなんの取り分も残っていなかった。
幸いにも、前日とは異なり、落車に苦しめられる選手はいなかった。またメカトラで発射台2人を失った前日とは異なり、この日のアルペシンは、最後まで理想的な列車を走らせた。序盤に賭けを失敗させたカンペナールツが、残り1.8kmで再びアタックを仕掛けると、アルペシン隊列が先頭に立って穴を埋めた。
さらには残り約800mでカンペナールツを封じ込めると、そのままラスト200mまで、アルペシン列車が最前列を堅守し続けた。エースのグローブスは、しっかり最終発射台の後輪に乗っていた。計画通りのはずだった。
チームメイトと共に前方へ飛び出していくファンアールト
一方のファンアールトは、前日はラスト1.5kmから発射台とともに先頭を突っ走ったが、今区間は残り500m前後で、ようやく前方へとポジションを上げた。しかも、そのまま、グローブスの背後に滑り込んだ。前日は逆にライバルに自らの後輪につかれ、何度も後方を振り返る必要に迫られたが、この日のファンアールトはただ前だけに意識を集中していれば良かった。
「僕の計画は、昨日とは正反対の動きをすること。それから、僕の強みを活かして、早めに仕掛けること。残り200mより手前で飛び出すことで、相手を驚かせられたと思ってる」(ファンアールト)
ファンアールトは右側にひらりと飛び出すと、一気をスピードを上げた。即座にグローブスも反応したが、左側のフェンスに行く手を阻まれ、思い通りには抜け出せなかった。軌道を修正してもがいた頃には、とっくにファンアールトは勝利への飛翔を始めていた。
「軽い上り基調で、でもスピードはすごく上がっていた。僕にとってパーフェクトなスプリントだった。昨日と同じく、今日もステージの間中、調子の良さを感じていた。しかもチームはとてつもなく強くて、最後は僕を完璧な場所まで導いてくれた。おかげで、僕は、自信をもらった」(ファンアールト)
「手を挙げるのは久しぶりだし、とても気分がいい」と語るファンアールト
初日3位、2日目2位、そして3日目にしてついに手にした一等賞。ブエルタ初出場のファンアールトにとっては当然、初めての区間勝利であり、グランツール全体なら10勝目に到達した。
つまり初日2位、2日目2位、3日目2位と着て、4日目にようやく勝った2022年ツールよりも、1日早くステージを勝った。もちろん2年前と同じように、2日目には、早々に総合リーダージャージを着ている。今区間のボーナスタイム10秒を合わせて、ファンアールトの総合リードは13秒に開いた。ただし、この先は、緑色のジャージこそが、ファンアールトにとっての大切な目標だ。
「残念ながら、楽しい時間は終わり。明日はチームリーダーの役割を、セップ(セップ・クス)とキアン(キアン・アイデブルックス)に喜んで引き渡すつもり。厳しい山岳が待っているし、総合勢にとっては最初のテストになるだろう」(ファンアールト)
マドリードでのマイヨ・ロホを目指す主な総合勢には、この2日間、タイム差の変動はなかった。つまり初日の個人タイムトライアルでついた順列そのままに、第4ステージ、今大会初の山頂フィニッシュへと乗り込んでいく。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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