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サイクル ロードレース コラム 2024年8月19日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 レースレポート:第2ステージ】グローブスが1年ぶりの勝ち星「プレッシャーから解放された」ファンアールトは初のマイヨ・ロホ着用

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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スランプの日々を脱し、先頭でラインを駆け抜けたグローブス

ひどく長く待たされた果てに、ついに訪れた解放の時。昨ブエルタの最終ステージで両手を天に突き上げて以来、丸11か月も勝利から遠ざかってきたカーデン・グローブス (アルペシン・ドゥクーニンク)が、今大会最初のスプリントステージでスランプの日々を終えた。初日3位のワウト・ファンアールト (ヴィスマ・リースアバイク)は、区間2位に甘んじるも、狙い通り、自身初のマイヨ・ロホに袖を通した。前日のタイムトライアルで活躍し、総合8秒差で並んでいた6選手にとっては、明暗の分かれた1日だった。

「最高の形でブエルタをスタートさせることができた。僕にとってあまり素晴らしいとは言えなかったシーズンを変えるために、モチベーションはすごく高かった」(グローブス)

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スタート直後に飛び出した2選手

スタート直後にイボン・ルイス(エキポケルンファルマ )とルイス・マテ(エウスカルテル・エウスカディ)が飛び出していくと、プロトンは素早くコントロールモードに入った。強い向かい風の中、主導権を握ったのは、グローブス擁するアルペシン・ドゥクーニンクと、ファンアールトのヴィスマ・リースアバイク。今大会たったの5回しかないスプリント機会を絶対に逃したくない前者と、総合首位ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツ)との3秒差を逆転したい後者は、ただ黙々と集団制御を心がけた。

40歳の大ベテランで、ブエルタ出場は12回目というマテは、ステージ序盤の4級山岳で首位通過を成功させた。2018年大会も最初のラインステージで逃げ、15日間も山岳ジャージを着用した経験がある。その後も残り53.8km地点の中間スプリントまで、2人はなんとか逃げ続けた。やはりマテが先着した。

本音を言えばヴィスマは、中間スプリントの前に、逃げを回収したかったはずだ。上位通過の3選手には、6秒、4秒、2秒のボーナスタイムが配分されるからだ。ところがステージ中盤でチームの一員ディラン・ファンバーレ が落車し、直後に少々スピードを緩めざるを得なくなった。最終的には残り約60km、道が緩やかに上り始めたところで、ファンバーレは後方へと脱落。途中棄権が発表された。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ブエルタ・ア・エスパーニャ 第2ステージ|Cycle*2024

しかも肝心の中間スプリントで、残す1枠に、ファンアールトは滑り込めなかった。1年前にポイント賞ジャージを持ち帰ったグローブスが、3位通過の15ポイントを、黙って見逃すわけがなかったのだ。ファンアールトは4番手に押しやられ、ついでに前日2位2秒差のマティアス・ヴァチェク(リドル・トレック)は5位と……それぞれ緑ジャージ用ポイントは収集したものの、ボーナスタイムは取れなかった。

中間スプリントの1kmほど先で、抵抗もなく逃げを飲み込むと、集団内には再び淡々とした時が戻ってきた。強い向かい風のせいで、レースは遅々として進まない。序盤4時間の走行時速は35kmまでしか上がらなかった。

向かい風でなかなかスピードが上がらないレース展開に

ようやくレースが動き出したのは、残り30kmを切ってから。上りを利用してマウリ・ファンセヴェナント(ティーレックス・クイックステップ)が前方へと踊りだすと、マクナルティのマイヨ・ロホを守るために、マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が素早く後輪へ張り付いた。さらに3選手が後を追う。中には前日6秒差4位のシュテファン・キュング (グルパマ・FDJ)の姿もあった。

もちろんヴィスマが厳しく追走を仕掛け、速やかに5人の謀反は鎮められた。ただ一旦上がったスピードや緊張感は、もはや緩むことはなかった。総合系チームも次々と集団前方で隊列を組み上げた。フィニッシュ手前19kmに立ちはだかる4級山岳に、大量のファンが詰めかけていたせいで、ポジション争いはますます熾烈になった。

そんな山道を覆う熱狂が、ヴァチェクの落車を引き起こした。観客と接触し、新人賞ジャージ姿で地面に転がり落ちてしまったのだ。

バイク交換を余儀なくされるも、ヴァチェクは大急ぎでして走り出した。集団とは一時45秒近くも離された。総合エース、マティアス・スケルモース のために走っているリドル・トレックの仲間たちは、おそらく待つことを許されなかった。幸いなことに、前日のTTで披露した驚異的な脚は、この日も健在だった。たった1人で粘り強く追走し、4級山岳の下り途中で、見事に集団復帰を果たした。

「脚の調子は良かったから、全力を尽くした。残念ながら、それ以上のパワーは残っていなかったから、フィニッシュでマイヨ・ロホ争いに混ざることは出来なかったけどね。とにかく無傷で、上手く切り抜けることができてホッとしてる」(ヴァチェク)

ちなみに本来ならば持ち主がいないはずの山岳ジャージを身にまとっていたキュングは、4級山頂で2ポイントを回収。同ポイントで並んだマテを、当然ながら総合順位で上回ったため(4位、マテは129位)、晴れて正当なる青玉シャツの所有者となった。なんとジュニア時代以来、実に13年ぶりの山岳ジャージなんだとか。

沿道に詰めかける大量のファン

4級山岳を越えれば、フィニッシュまでは下り基調。大会最初のスプリントへ向けて、集団は猛スピードで突き進んだ。「タイム救済ゾーン」は特別に4kmに拡大され、ラスト3.5kmに入るジョシュア・ターリング(イネオス・グレナディアーズ)が巻き込まれた。もちろん救済措置が発動したため、区間勝者と同じタイムが与えられたが、左半身を大きく打ち付けてしまった。

一方で同じく前日8秒差5位のエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)は、ファンアールトのための発射台役を務めた。残り1.5kmを強烈に牽引し、先頭のまま、エースを前線へと解き放った。……その直後、グローブスもすかさずスプリントへと打って出た。本来の発射台2人をメカトラで失ったスプリンターは、ファンアールトの後輪にじっと潜んでいた。

「本来なら僕らがスプリント列車を先行させる予定だった。でも残念ながら人員が足りなくなってしまった。だからワウトが僕の列車に乗っかるはずだったのに、その逆になってしまったというわけ」(グローブス)

左に流れたファンアールトに対して、グローブスは道のど真ん中を突き進んだ。もがくライバルを抜き去り、そのまま先頭でラインを駆け抜けた。フィニッシュラインに到達する前に、ペダルを踏みやめるほどの余裕さえあった!

2日目のスタート地点、今後の展開に注目

今年のジロは区間2位2回、3位3回、ポイント賞2位……と決して悪くはなかったものの、スプリンターとしては失敗に終えたグローブスだったが、このブエルタでは、一回目のチャンスで勝利を射止めた。自身にとっては5回目のブエルタ区間優勝。フィニッシュラインで50ポイントを積み重ねたおかげで、1年前は4日目の終わりから最終日まで着続けたポイント賞ジャージをも、2日目の終わりに早くも羽織った。

「今年のコースは本当に難しい。スプリンターにとっては、実質、今日と明日くらいしかチャンスがない。だから今日は本気で結果を出す必要に迫られていた。本当にいい気分だ。おかげでプレッシャーから解放された」(グローブス)

初めてマイヨ・ロホにそでを通したファンアールト

2位ではあったけれど、ファンアールトにとっては成功だった。ボーナスタイム6秒のおかげで、前日の首位マクナルティを3秒差で逆転し、念願のマイヨ・ロホ表彰台に臨めたのだから。

「もちろん勝ちたかったけど、でも、今日の最大の目標は、区間上位3位以内に入ってマイヨ・ロホを着ることだった。だから、うん、いい1日になった。明日もまたチャンスがあるし、足の調子もいい。だから何度でも繰り返しトライするさ」(ファンアールト)

2022年ツールでのファンアールトは、初日から2位を3回続け、2日目にマイヨ・ジョーヌを獲得し、4日目にとうとう区間勝利を手に入れたものだ。今ブエルタでは果たして、何日目に、2年ぶりのグランツール区間勝利をつかみ取れるだろうか。

総合勢は誰1人としてタイムを失うことなく、無難にスプリントステージを終えた。総合ではボーナスタイムの分だけ……つまり誰もが3秒ずつ後退し、たとえばプリモシュ・ログリッチ (レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は20秒差の総合8位につけている。

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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