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パリ五輪明けUCIワールドツアー再開 新城幸也参戦のバスクレース、新コース採用でフィニッシュ前7kmに待つ27%の激坂が勝負の行方を左右する【Cycle*2024 クラシカ・サンセバスティアン:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介ラ・コンチャ湾に浮かぶサンタ・クララ島を望むロケーション
ツール・ド・フランスではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の「ダブル・ツール」達成に沸き、パリ五輪ではレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)のロード・TT2冠に驚いた夏のロードレースシーン。UCIワールドツアーは五輪による中断期間を経て、8月10日開催にスペイン・バスク自治州で開催されるクラシカ・サンセバスティアンで再開する。
独自の文化・言語を有するバスクにおける大会名は、「ドノスティア・サンセバスティアン・クラシコア」。大会は1981年に初開催され、今年で44回目を迎える。その名の通りサンセバスティアン(バスク名:ドノスティア)を基点とし、昨年のツール第2ステージのフィニッシュ地にもなった。余談だが、芸術・文化に優れた街としても知られていて、毎夏の「サンセバスティアン音楽週間」や「サンセバスティアン国際映画祭」は日本のアーティストやキネマとも強いつながりを持つ。
クラシカ・サンセバスティアンを一言で表すなら、「アップダウン」。連続する厳しく急な上りはクライマーやパンチャー向けで、これまでの勝者リストにはグランツールやクラシックレースで主役を張るような選手たちの名が多く記されている。
コースマップ
前回大会ではコース刷新がトピックとなったが、今回はさらにアレンジが加えられた。昨年プロトンがチャレンジした登坂区間のうち、今大会での継続採用は3カ所だけ。今回上る7つのカテゴリー山岳のうち、5つは2年前と同じで、コースそのものは2022年大会に近いレイアウトになっている。
全行程236kmのルートは、序盤から上りの連続。27.7km地点の3級山岳アンダザラテ(登坂距離5.9km、平均勾配5.7%)を皮切りに、無印の上りイツィアル(6.1km、2.9%)を経て、86.9km地点で3級アズカラテ(4.3km、7.1%)へ。立て続けに2級ウラキ(8.5km、6.9%)、アルキザ(4.5km、5.8%)を越えると、レースは後半戦へ。
コースプロフィール
レースが動くのは170kmを過ぎてからか。名物の2級山岳ハイスキベル(7.9km、5.5%)は、決定打でなくとも何らかのアクションが起こるであろう重要ポイント。唯一の1級山岳、エルライツ(3.8km、10.7%)の頂上はフィニッシュまで42km。2年前はレムコがここで仕掛けて、驚異の独走劇が生まれた。
エルライツ頂上からのテクニカルなダウンヒルをこなし、いったんサンセバスティアンの街を通り抜けたら、最終登坂・2級山岳ピロテギを迎える。登坂距離こそ2.1kmだが、平均勾配が10.7%。頂上までの1kmだけを見れば平均で14.5%、最大27%と恐ろしい数字である。
ピロテギの頂上からフィニッシュまでが7.6km。この上りまでに独走を決める選手が出ていれば、サンセバスティアンまでの帰路はウイニングライドに。大なり小なり集団であれば、フィニッシュに向けた駆け引きが一層激化し、スプリントで勝負が決まることも想定される。
出走は全25チーム・175選手。前回・前々回と連覇し、過去3回このレースで勝っているレムコは欠場。スーダル・クイックステップは、2018年に勝っているジュリアン・アラフィリップと地元レースに意欲を燃やすミケル・ランダの両輪でタイトル防衛に挑む。
ランダに限らず、ロードレース王国バスクの雄たちが20人近く出走を予定。前回2位のペリョ・ビルバオはバーレーン・ヴィクトリアスのエースとして、初優勝を目指す。
アップダウンの激しいレースが特徴のクラシカ・サンセバスティアン
モビスターはアレックス・アランブルを軸に展開するだろうし、コフィディスにはゴルカとヨンのイサギレ兄弟が切り札として控える。次世代を担うバスク人ライダーとして期待を集めるイゴール・アリエタ(UAEチームエミレーツ)は、経験豊富なマルク・ヒルシとマルク・ソレル、若手有望株のイサーク・デルトロらと共闘する。
今大会随一のチーム力に挙げられているのが、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ。先に控えるブエルタ・ア・エスパーニャに向け調整を続けるセルヒオ・イギータと、ジロ・デ・イタリア個人総合2位が記憶に新しいダニエル・マルティネスの両コロンビアンがWリーダー態勢を整える。ヴィスマ・リースアバイクはレース開催前日にヨナス・ヴィンゲゴーのメンバー入りを発表。ツールを終えたこの夏は精力的にレース活動を継続していく意欲を見せており、落車負傷した4月のイツリア・バスクカントリー以来となるバスクレースで悪いイメージを払拭しようと意気込む。ツール回避から復調しているセップ・クスとの双頭体制をとる公算だ。
前回大会覇者レムコ・エヴェネプールは欠場
2021年大会勝者のニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)は相性抜群のレースにもちろんフォーカスし、マキシム・ファンヒルス(ロット・デスティニー)はツール途中離脱から調子を取り戻しているとの情報も聞かれる。サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルウラー)やジョナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアーズ)、ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、レニー・マルティネス(グルパマ・FDJ)あたりも、本調子であれば上位争いに加わってくるはず。
そして、われらが新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も事前エントリーに名を連ね、参戦が決定的。パリ五輪ロードレースを56位で終え、充足感に満ちた中で迎える今大会。ビルバオやサンティアゴ・ブイトラゴといった計算できるエースを擁するチームで、新城にはレース構築という重要な役割が課されることだろう。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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