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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2024 コースプレビュー】“クライマーズ・ブエルタ”健在 平坦ステージはわずか1つ、個人タイムトライアル2ステージが組み込まれ総合力が試される3週間に
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介前回大会はセップ・クスが総合初優勝。今年は誰が栄冠を掴むのだろうか
2024年シーズン3つ目にして、今季最後のグランツールとなるブエルタ・ア・エスパーニャが、8月17日から9月8日までの日程で開催される。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の「ダブル・ツール」に沸き、パリ五輪の激闘も記憶に新しいところだが、“●●ロス”なるものを感じる間もないままに、スペインをメインとする3週間の旅がやってくる。
そんな情熱の3週間を迎えるにあたり、注目のコースをチェックしていきたい。「スペインをメインとする3週間」と前述したが、今年は隣国・ポルトガルもコースに組み込まれ、イベリア半島を大きくめぐるルーティングであることがポイントに挙がる。
第79回ブエルタの開幕は、ポルトガルの首都・リスボン。同地からブエルタをスタートするのは27年ぶり。同国で3日間走ったのち、主たる舞台であるスペインへ。第1週を南部地域で走ったら、空路北部へ移動して東進する。そして、マドリードでフィナーレを迎える。
3週間・全21ステージの内訳を知ると、今大会が衝撃的なのを感じられるはず。主催者発表に忠実にお伝えするならば、山岳ステージ8、中級山岳ステージ5、丘陵ステージ5(うち頂上フィニッシュ2)、個人タイムトライアルステージ2、平坦ステージ1。
改めるまでもないが、平坦ステージが1つしかないのである。それが第5ステージに設けられていて、あとは丘陵ステージにカテゴライズされる第2・第3ステージが比較的スプリンターにもチャンスがあるか…という程度。言葉を選ばすに述べてしまえば、「ピュアスプリンターには出る幕がない」のである。スプリントもできて、ある程度総合系ライダーのために働ける、または逃げにもトライできる…といったタイプの選手がどうにか対応できるレベルといえよう。
今年も厳しい山岳ステージの数々が選手を苦しめる
また、個人タイムトライアルの総距離が34km(12km・22km)あり、個人総合成績にフォーカスする選手たちの総合力も試される設定になっている。
より深く見てみよう。リスボンでの12km個人TTで幕を開けると、第3ステージまでをポルトガル国内で。スペインへと移った初日に今大会最初の山岳ステージが設けられ、1級山岳ピコ・ビリュエルカスの山頂にフィニッシュする。フィニッシュまで2kmを切ったところから、20%・15%と急勾配が断続的に現れる。その後のステージでは3級山岳頂上フィニッシュをいくつかこなし、第1週最終日の第9ステージでは3つの1級山岳を越えてグラナダの街へと駆け下りるコースが用意される。
15%前後の急坂をよじ登る第13ステージ
1回目の休息日に空路スペイン北西部へ。いっそう山がちなルートを走ることになって、1級山岳マンサネダの頂上にフィニッシュする第12ステージ、フィニッシュまでの5.6kmにわたって15%前後の急坂をよじ登る第13ステージ、この2日間でおおよそのマイヨ・ロホ有資格者が見えてきそうだ。1級山岳2つ、3級山岳1つ、そして最後に今大会最初の超級山岳クイトゥ・ネグルにトライする第15ステージで、早くもジャージ争いの形勢が見えてくるかもしれない。クイトゥ・ネグルは登坂距離18.9km、平均勾配7.4%、フィニッシュ手前2kmで最大勾配24%を数える。
もちろん大会最終・第3週もハードだ。アストゥリアス州の険しい道へ足を踏み入れ、第16ステージでは超級ラゴス・デ・コバドンガの山頂へ。頂上へ近づくと現れる断続的なアップダウンは今年も何らかの展開をもたらすか。第19ステージでは最大勾配16%の1級山岳モンカルヴィッロ峠を目指し、カテゴリー山岳が7つも詰め込まれる第20ステージが山岳最終決戦。最後に上る1級ピコン・ブランコは中腹とフィニッシュ手前で17~18%の急勾配が待ち受ける。
山岳決戦の締めを飾る第20ステージ
そして、締めくくりはマドリードでの22km個人タイムトライアル。マイヨ・ロホ争いが僅差ならばTT能力が最終的な差となるだろうし、おおよそ勝負が決まっているならウイニングライドに。今回はフィナーレがスプリントではないあたりも押さえておきたい。
3週間の総距離は3265km。最長距離は第14ステージの200.5km。それでありながら総獲得標高が59279mと、山岳比重が高かったツール・ド・フランスの52230mを上回っているあたりで、このブエルタの過酷さが見えてくる。ちなみに、ステージ獲得標高が最も高いのが第20ステージの5064mとなっている。
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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