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“白夜の太陽”を輝かせたウノエックスモビリティ マグナス・コルトはガールフレンドに捧ぐ個人総合優勝【Cycle*2024 アークティックレース・オブ・ノルウェー:レビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介総合表彰 優勝コルト、2位シャンプッサン、3位ヴェルマーク
北極圏の8月にしては少々気温が高めの中で行われた2024年のアークティックレース・オブ・ノルウェー。とはいっても、全4ステージを通して気温は20度前後。世界的な酷暑を思えば、“納涼レース”としての趣きは今年も変わらなかった。
地球上、最も北で開催される国際ロードレース。その第11回大会は、マグナス・コルト(ウノエックスモビリティ)が初の個人総合優勝。第3ステージで手にしたリーダージャージ「ミッドナイト・サン・ジャージ」を最後までキープ。最終・第4ステージではみずから勝利を挙げて、大会制覇に花を添えた。意外や意外、プロキャリア12年目にして初めての総合制覇である。
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「本当に素晴らしいチームワークで走り切った4日間だった。今までのアークティックレース・オブ・ノルウェーと比較しても、ここまで強く戦えたチームはないんじゃないかと思うよ。僕たちは最強チームだったんだ!」(マグナス・コルト)
コルトが自賛するように、ウノエックスモビリティは大会を通して終始レースをコントロールした。開催地ノルウェーが誇るワールドクラスのチームである。ツール・ド・フランスを戦う彼らからすれば、自国最大級のステージレースでは勝つだけでなく、レースそのものを支配するくらいの力を見せなければならない。その使命を果たすべく、第1ステージからプロトンを統率した。
大会前半はクリストフがスプリントで圧勝
チーム一丸となって作った流れを、ベテランが最高の形でクローズさせる。大会前半は、アレクサンダー・クリストフがその役目を担った。第1・第2ステージともに丘越えに苦しんだというけれど、ツールを終えてからの約2週間もトレーニングを継続していたことが奏功。コルトとのホットラインからスプリントで2連勝だ。
「トレーニングで出していた数値を考えると、2日間ともスプリントまで集団に残れると思っていた。どんな状況にあってもチームとしてコントロールできていたし、ベストメンバーでこの大会に挑んでいたから、僕も自信を持って走ったよ」(アレクサンダー・クリストフ)
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【ハイライト】アークティックレース・オブ・ノルウェー 第4ステージ|Cycle*2024
大会後半に入ると、クリストフからコルトにバトンが渡る。1級山岳ヤコブスバッケンの頂上にフィニッシュした第3ステージはカミル・ボヌー(フランダースバロワーズ)の逃げ切りを許し、自身の詰めの甘さを嘆きながらもリーダージャージはゲット。最後の1日に大会制覇を賭けた。
最も難儀したのが最終の第4ステージだった。6人の逃げが終盤までリードを続け、フィニッシュまで10kmを切っても1分以上先行していた。それでも、百戦錬磨のコルトである。焦ることなく、最終局面に向けて集中し続けていた。
「状況次第では中間スプリントでボーナスタイムを狙う必要があると思っていたけど、逃げのメンバーがすべて押さえていたから、レース中は最後の2kmだけにフォーカスできた。チームメートが素晴らしい働きをしてくれていたから、リーダージャージは守り切れると確信していたよ。それだけでなく、ステージ優勝もしたかったんだ。前を走る選手とのタイム差が縮まっていくにつれて、少しずつ緊張感が増していったね」(コルト)
平均勾配9.2%の2級山岳頂上が今大会のフィナーレ。主催者発表による登坂距離は1.1kmとされていたが、実際は最後の2kmが上り基調。逃げ切れば個人総合で逆転の可能性もあったヨナス・グレゴー(ロット・デスティニー)を上りで一気に追い込むと、フィニッシュ前200mで敢然とアタック。ミッドナイト・サン・ジャージみずからステージを制し、個人総合優勝を確定。白夜の太陽が、高らかに光を放ったのだった。
最終日には区間優勝で総合優勝を確定させたコルト
「6人のメンバーでこれだけの成果を挙げられるなんて、本当に信じられないよ。僕たちはどうしてもこのレースを勝ちたかったんだ。チームの地元でこれだけの結果を残せたのが誇らしいよ」(コルト)
コルト自身も、このレースに並々ならぬ意欲を持って臨んでいた。今大会の基点となった街・ボーデはガールフレンドの故郷なのだという。2週間後にはこの街に戻って、病院での勤務を始めるのだとか。デンマーク人であるコルトだけど、ボーデはこれから縁深い土地になる。
美しい風景がずっと続く
「僕にとってもここでの4日間はホームレースだった。この勝利を彼女に捧げるよ」(コルト)
クリストフやコルトが述べるように、現状のベストメンバーで今大会を戦ったウノエックスモビリティ。みずからも総合成績を狙える力を持つアンドレアス・レックネスンや、ツールでたびたび逃げたヨナス・アブラハムセンはもとより、レース全体の統率役という重責を担ったラスムス・ティレルはMVP級の働き。マルクス・フールゴーのノルウェーチャンピオンジャージも集団前方で映えた。
「ラスムス(ティレル)は長時間の牽引を見せたけど、彼にとってそれはとても珍しいことなんだ。なぜならスプリントやパワーが必要なコースを得意とする選手だからね。でも、今回のような役割を与えてもしっかり仕事ができる。それくらい彼は強いんだ。すごく印象的な走りをしてくれたよ」(クリストフ)
ウノエックスモビリティの強さが際立った今大会だけど、その状況を打ち破ろうとトライした選手たちの走りも見過ごすわけにはいかない。25歳以下の選手が多く出場し、20歳代後半の中堅クラスまで視野を広げても、今後の走りが期待できるライダーばかり。観る側もチェックすべき逸材を見出す絶好の機会だった。
第3ステージを勝ったボヌーは一時コルトに総合タイム差1秒まで迫ったし、第4ステージでコルトを追い込んだクレモン・シャンプッサン(アルケア・B&Bホテルズ)は個人総合でも2位と上々の走り。グレゴーは最後に力尽きたけど、あわや大逆転かという走りはインパクト大。当然ながら、大会最終日の敢闘賞が贈られている。
ノルウェーサーモン500kgが副賞の山岳賞
そして、アークティックレース・オブ・ノルウェーの目玉である山岳賞は、第1ステージから逃げ続けたイェーレ・ヨハニンク(TDT・ユニベット)が獲得。「ピーコックジャージ」に袖を通して今大会の“孔雀王”(筆者が勝手に命名)となり、ノルウェーサーモン500kgを副賞として受け取っている。
「北極圏から、世界のトップへ」をテーマに開催された4日間は、大盛況のうちに閉幕。ロードレースシーンは引き続き、シーズン後半戦を走り続ける。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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