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世界的酷暑と無縁の“納涼レース” 北極線以北で繰り広げられる4日間の戦い、誰に「白夜の太陽」が注ぐか【Cycle*2024 アークティックレース・オブ・ノルウェー:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介美しい大自然に目も心もくぎ付け!アークティックレース・オブ・ノルウェー
ときに40度に迫ろうかという気温は日本に限らず、ヨーロッパ各国も同様で、実際に先のツール・ド・フランスは暑さとの戦いでもあった。しかし、このレースだけは事情が異なる。地球上、最も北で開催される国際ステージレース「アークティックレース・オブ・ノルウェー」は、多くの人々を悩ませる世界的な猛暑とは無縁だ。
レースが実施されるノルウェー領土の北緯66度33分以北、つまりは北極線より北の地域は今夏、例年より気温が高いとはいえ、それでも最高気温は20度前後。毎年このフレーズを使っているけれど、やはり“納涼レース”で間違いなさそうだ。
第11回目となる今回の舞台は、北極線からすぐ北に位置するヌールラン県。自然豊かで、同地の長い海岸線は野生動植物の宝庫。高緯度でありながら温暖な気候がその要因となっていて、冬も雪が降り積もることは少ないという。一方で、季節を問わずノルウェー海(大西洋の一部)から吹き付ける風が強いのだとか。それがレース展開に何らかの影響を与えるかもしれない。
今大会の基点となるのが、ヌールラン県の県都にあたるボーデ(現地発音では「ブーデ」に近い)。今年は欧州文化首都にも制定されている北部ノルウェーの歴史・文化の中心都市は、第1ステージではスタート地としてプロトンを見送り、第4ステージではフィニッシュ地として4日間の戦いを終えた勇者たちを出迎える。
コースマップ 第1ステージ
コースプロフィール 第1ステージ
より詳しくコースを見ていこう。第1ステージ(155.5km)は、今大会で唯一平坦にカテゴライズされるも、フィニッシュ前20km前後に連続する3級と2級の上りへの対応が求められる。
コースマップ 第2ステージ
コースプロフィール 第2ステージ
第2ステージ(178.5km)では、終盤にグラベル区間が登場。コース図だけでは見えにくい細かなアップダウンも多い印象で、フィニッシュでは案外集団の人数が絞り込まれているかもしれない。
コースマップ 第3ステージ
コースプロフィール 第3ステージ
第3ステージ(156km)が今大会の最難関。隣国スウェーデンとの国境近く、1級山岳ヤコブスバッケンは登坂距離7.1km・平均勾配6.5%。本格山岳さながらの上りで、ステージ優勝とリーダージャージをかけたバトルを展開する。
コースマップ 第4ステージ
コースプロフィール 第4ステージ
もちろん最後まで気を抜くことは許されない。ボーデへ帰還する最終・第4ステージは、登坂距離1.1km・平均勾配9.2%の2級山岳頂上のフィニッシュラインへ向かっての猛アタック。個人総合争いが僅差なら、ここが最終決戦の地となる。
アークティックレース・オブ・ノルウェー コース全体図
今回は、5つのUCIワールドチームを含む全18チームがエントリー。主催者によれば出走ライダーの約半数が25歳未満の選手になると見込んでいて、ネクストブレイクが待たれる次世代ライダーの登竜門的コンペティションともなりそうだ。
そうしたなかで、並々ならぬ意欲を見せているのが地元の雄・ウノエックスモビリティだ。2年前の大会覇者アンドレアス・レックネスンを総合エースに、スプリントではアレクサンダー・クリストフ、パンチが求められるステージではマグナス・コルトの両ベテランがトップ獲りを狙う。
そんな彼らのライバルとなり得るのが、前回大会で個人総合2位を収めたクリスティアン・スカローニ(アスタナカザクスタン)、今季ステージレース3大会で個人総合優勝に輝いているジョセフ・ブラックモア(イスラエル・プレミアテック)あたり。ブラックモアはこの5月にトップチームに昇格したばかりの21歳で、4月にはU23版のリエージュ~バストーニュ~リエージュでも勝っている逸材だ。
また、イスラエル・プレミアテックからはクリストファー・フルームの参戦も決定。初めて乗り込む北極圏でのレースで、ブラックモアらチームメートを盛り立てる走りができるか。
シャレの利いた各賞ジャージ
アークティックレース・オブ・ノルウェーといえば、シャレの利いた各賞ジャージでも毎年盛り上がる。個人総合のミッドナイト・サン・ジャージは、その名の通り「白夜の太陽」。ヤングライダー賞はホワイトジャージ、ポイント賞はブルージャージ。そして、絶対的な人気を誇るのが山岳賞の「ピーコックジャージ」で、孔雀の羽をあしらったデザインだ。
また、最も献身的なアシストを見せた選手に贈られる「ヴァイキングジャージ」にも、表彰の場面では注目したい。北欧神話の民「ヴァイキング」のように屈強で、チームの勝利のために身を粉にして働いた選手が選ばれる。
大会は、「関係する全車両が電気自動車である初のプロサイクリングレース」を標榜しており、環境ならびに社会貢献活動を通じてイベントの持続可能性を測っている。クリーンな都市交通を促進するノルウェーの事情に則しながら、レースを運営する姿勢をアピールする。
4日間の短期決戦で、“白夜の太陽”は誰に降り注ぐか。北の大地が壮大なドラマを演出する。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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