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サイクル ロードレース コラム 2024年7月13日

【Cycle*2024 ツール・ド・フランス2024 レースレポート:第13ステージ】アタックとキャッチの繰り返し 消耗戦からのスプリントはヤスペル・フィリプセンが制す「今日はツールに入ってから一番調子が良かった」 前日落車負傷のログリッチはリタイア

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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スプリント勝負を制したヤスペル・フィリプセン

165.3kmにわたる熾烈な追いかけっこ。静と動がはっきりしていたこれまでの平坦ステージから一転して、アタックとキャッチの繰り返し。風による集団分断も起こった。大会半ばを走る選手たちにとっては、フィジカル的にも、メンタル的にも、厳しい1日だったことだろう。

そんななかで、「ツールに入ってから一番調子が良かった」というヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)。スプリント勝負になったステージ優勝争いを制して、今大会2勝目を挙げた。

「スタートから全力でプッシュし続けて、一度もペースをが落ちることはなかった。横風がレースを活発にさせたね。難しいレースだったけど、うまく走ることができたよ」(ヤスペル・フィリプセン)

ここ数日の不安定な天候は、強い風を呼んだ。1日のうちでも天気の変化が激しく、前夜には強い雨が降っている。その風は、第13ステージのレース展開にも影響することとなる。

嵐のごとく衝撃の情報がスタート地に駆けめぐった。プリモシュ・ログリッチ (レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の未出走。前日のステージ、フィニッシュ前12kmでのクラッシュに巻き込まれ、肩付近を負傷していた。前々日の第11ステージでも、終盤のダウンヒル区間で落車している。24時間以内に2度も地面に叩きつけられたのだ。チームによれば脳震盪や骨折の心配はないとしているが、複数の落車による心身のダメージを考慮。“ビッグ4”の一角が大会を離脱した。

ヘスス・エラダ (コフィディス)の未出走や、前日3選手のタイムアウトも関係し、レースに臨んだのは161人。

リアルスタートが切られてすぐに大人数の先頭パックが形成された。風の影響もありそうだ。分裂するかのように逃げの選手たちが前へと急いだ。リーダーチームのUAEチームエミレーツは個人総合8位につけるアダム・イェーツ を、最大のライバルであるヴィスマ・リースアバイクはヤン・トラトニクをそれぞれ先頭グループに乗せる。さらにマチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)も入って、最大22人まで膨らんだ。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ツール・ド・フランス 第13ステージ|Cycle*2024

ただ、そう易々と集団だって容認はしない。25km地点を過ぎようかというタイミングで、ワウト・ファンアールト (ヴィスマ・リースアバイク)が猛然とスピードを上げた。ヴィスマトレインが集団前方を固め、分断を図る。前のグループに乗り込んだのは10数人。マイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャル (UAEチームエミレーツ)や、マイヨ・ブランのレムコ・エヴェネプール (スーダル・クイックステップ)ら、個人総合上位陣も先頭交代に加わった。

落ち着く暇もないレース展開

とにかく慌ただしい。後ろではイネオス・グレナディアーズが大急ぎで追走。10kmもいかないうちに、なんとかポガチャルらを引き戻している。

これらのはるか後ろでは、フアン・アユソ (UAEチームエミレーツ)が苦しんでいた。検査で新型コロナウイルスの陽性反応を示しており、チーム本隊とは別で食事の席を設けるなど、すでに隔離状態にあったという。ウイルス濃度が低かったことから出走には至ったが、とても走れるような状態ではなかった。やがてバイクを降りてリタイア。ポガチャルは重要な山岳アシストを失うこととなる。

「彼のリタイアは本当に残念。チーム内で体調を崩していたのは彼だけなんだ。今のところ他のメンバーは順調だよ」(タデイ・ポガチャル)

レースに話を戻すと、やはり先頭グループが十分なリードを得るのは難しかった。一度は1分差まで広がったものの、再び数十秒にまで縮まっている。70km地点を前に、マグナス・コルト (ウノエックスモビリティ)、ジュリアン・ベルナール(リドル・トレック)、ミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ)、ロマン・グレゴワール (グルパマ・エフデジ)が新たな逃げグループを作って、ようやく1分30秒ほど前を走ることが許された。

この間、88.5km地点に設けられた中間スプリントポイントは逃げていたメンバーが15位通過までを占めている。のちに第2グループを走っていた選手たちは集団へと戻って、おおよそ1分のギャップで4人が逃げ続けている。

完走を目指す姿勢に切り替えたマチュー・ファンデルプール

吹き付ける強い風は、再び攻撃戦を誘発する。フィニッシュまで60km以上を残してヴィスマ・リースアバイクが再度のスピードアップ。当然ここもポガチャル、レムコ、ヨナス・ヴィンゲゴー (ヴィスマ・リースアバイク)ら上位陣が加わり、ペースアップに同調する。メイン集団は40人ほどまで減り、序盤から逃げていたマチューのほか、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン)らは後ろへ下がって完走を目指す姿勢に切り替えている。

この分断で前線に入ったメンバーは勢いのままに先頭4人に追いついたが、しばらくして後続選手たちも合流。カウンターでリチャル・カラパス (EFエデュケーション・イージーポスト)とトビアス・ヨハンネセン (ウノエックスモビリティ)がアタックした。

しばし先行した2人だったが、残り20kmを前に集団へと戻される。また新たなアタックがかかって、ヤスペル・ストゥイヴェン(リドル・トレック)、ブレント・ファンムール(ロット・ディステニー)、ファビアン・グルリエ(トタルエネルジー)が逃げる。のちにグルリエと入れ替わってクリストフ・ラポルト (ヴィスマ・リースアバイク)とマチュー・ビュルゴドー (トタルエネルジー)が先頭に加わったが、ほどなくして集団がキャッチ。その後の散発するアタックもすべて封じられている。

80人ほどの集団で最終局面へと向かう。勝負はスプリントへ。残り2kmを切って、マイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイ 擁するアンテルマルシェ・ワンティのトレインが上がってきた。それに呼応するように、アルケア・B&Bホテルズもアルノー・デマールを引き上げる。

フィニッシュ前600mで発生したクラッシュで、集団が崩れる。先頭に残ったのは15人程度。ワウトが先頭からスプリントできる態勢を整えるが、リードアウト役のラポルトが残り300mで外れ、早掛けを余儀なくされた。これをチェックしていたフィリプセンが最後の250mで先頭に立つと、そのままフィニッシュまで突き進んで今大会2勝目を決めた。

ツール史上8番目の高速レースとなった

「ラポルトとワウトをチェックしながらスプリントのタイミングを探っていたんだ。特にラポルトは完璧な仕事をしていたけど、彼らの後ろのポジションを押さえられたのが勝利につながったね」(フィリプセン)

2位にはワウト、3位にパスカル・アッカーマン (イスラエル・プレミアテック)と続いて、ギルマイは4位。前日終了時に100点以上の開きとなっていたマイヨ・ヴェール争いは、フィリプセンのステージ優勝で75点差まで縮まった。ただ、スプリンターにチャンスのあるステージは実質残り1つ。第16ステージしか残されていない。

「マイヨ・ヴェールのことはあまり考えていない。スプリンターのチャンスは1つしか残っていないし、ギルマイがかなり強い。大会前はジャージ防衛が目標だったけれど、調子があまり良くなかった時点で別のねらいに切り替えたんだ」(フィリプセン)

フィニッシュ前のクラッシュによって崩れたメイン集団は、救済措置によってトップと同タイムに。個人総合上位の並びはログリッチとアユソが離脱した分の変動のみで、ポガチャルのトップは変わっていない。マイヨ・ジョーヌみずからスプリントに挑んでいて、ステージ9位で終えている。

「調子が良かったからスプリントをしてみたんだ。平坦ステージでトップ10フィニッシュは悪くないよね。重要だったのはトラブルなく走り切ることで、今日はその目的を果たせたから満足だ」(ポガチャル)

ちなみに、このステージの平均時速48.821km。ツール史上8番目の高速レースであった。

いよいよ、ツールはピレネーへと足を踏み入れる。トゥルマレ、プラ・ダデ、伝説の2つの超級山岳を上る。そして今大会初めての頂上フィニッシュ。マイヨ・ジョーヌをかけた争いは、新たな局面を迎えることとなる。

●ステージ優勝 ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)コメント
「とても満足している。今日はスプリントで勝つ自信があったんだ。狙い通りに勝てて本当にうれしいよ。ツールの前半は調子が良くなかった。失敗を取り戻せたかどうかというとまだ足りないような気がするけど、ステージ2勝は悪くないね。

マイヨ・ヴェールについてはあまり考えていない。スプリンター向けのステージは残すところ1ステージしかないし、いまある点差を埋めるのはさすがに難しいと思う。ギルマイはステージ3勝していて、ここまでは素晴らしい走りを見せている。ツール前はマイヨ・・ヴェールを目標にしていたけど、調子が良くなかった時点で別のねらいに切り替えたんだ。

チームからリタイア者が2人出ていることはとても悲しい。6選手でのレースに適応していくほかないね。シャンゼリゼでフィニッシュしないこともスプリンターとしてはとても惜しいよ。第16ステージでスプリントをしてから、残る5ステージ…そのうち4つが山岳と丘陵のステージだから、気持ちをどう持って行こうか正直悩んでいるんだ」

調子の良さを見せたタデイ・ポガチャル

●マイヨ・ジョーヌ タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)コメント
「調子が良かったからスプリントをしてみたんだ。平坦ステージでトップ10フィニッシュは悪くないね。

アユソがリタイアしたのはとても残念。でも、僕たちは強いチームを維持できている。チームメートは僕が必要だと感じたときに、いつもそばにいてくれるんだ。本当に心強いよ。ジョアン・アルメイダアダム・イェーツ はそれぞれの順位を狙いながら走ることも可能だ。1人欠けるのは残念だけど、だからと言ってパニックになることはないよ。

山岳ステージに関して、僕たちは防衛的に走ることができる。ステージ優勝をしたいけれど、それのために必要以上のエネルギーを注ごうとはまったく考えていないよ」

●個人総合3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)コメント
「ピレネーは僕に合ったコースレイアウトだと思っている。明日からの2ステージが楽しみだよ。今日のステージで消耗したけど、明日までには回復できるよ」

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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