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サイクル ロードレース コラム 2024年7月10日

【Cycle*2024 ツール・ド・フランス2024 レースレポート:第10ステージ】ヤスペル・フィリプセンが今大会初勝利! 難産の末のステージ優勝に「信念を持ち続けて得た大きな1勝だよ」

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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今大会初勝利をあげたヤスペル・フィリプセン

今大会初勝利をあげたヤスペル・フィリプセン

第2週が始まった。史上初めてパリに達しないツール・ド・フランスにあって、第10ステージのスタート地・オルレアンが今大会で最もパリに迫る。フランスの政治・経済・文化の中心地を見ることなく、ツールはここから南進する。

この大会で最も高低の変化が少ない、レース距離187.3km・獲得標高950mによる第10ステージはセオリー通りのスプリント勝負になって、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)が快勝。今大会の初勝利は、マチュー・ファンデルプールとの名物ホットラインがついに機能したものだった。

「ようやく勝ててホッとしているよ。ここまでのステージでの走りは決して良いとは言えないものだったからね。でも、チームとして信念を持ち続けてきた。この1勝は大きな価値のあるものになったんじゃないかな」(ヤスペル・フィリプセン)

この日はレースに先立って、今年で10回目を迎える「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」(11月2日開催)に向け、アンバサダーのマルセル・キッテルさんがステージへ。日本の子供たちが折った千羽鶴を大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏に手渡し、クリテリウムの成功、そしてツールの安全と選手たちの活躍を祈念した。

ここからコースはフランスを南進

オルレアンを出発しサン=タマン=モンロンにフィニッシュするルートは、限りなくフラットに近いレイアウトが続く一方で、コースの大部分を占めるロワール=エ=シェール県の変わりやすい天候がレースにどう作用するかが見ものだった。今回と同じくサン=タマン=モンロンにフィニッシュラインが敷かれた2013年大会の第13ステージでは、風によってプロトンが分断。先頭には8人しか残らないという状況が生まれた。ちなみに、このときに勝っているのがマーク・カヴェンディッシュ (現アスタナカザクスタン、当時オメガファルマ・クイックステップ)である。

ただ、今回もコース上に風が吹き、ところどころで弱い雨が降ったりはしたけれど、結果として気象条件がレース展開に影響を及ぼすことはなかった。結論から言えば、プロトンが一団のまま行程の大部分を消化した。

J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル

【ハイライト】ツール・ド・フランス 第10ステージ|Cycle*2024

第9ステージで落車し、足首を骨折したアレクサンドル・ウラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)をのぞく172選手が出走。8.7kmのパレード走行を経てリアルスタートが切られたが、逃げの動きがないまま静かに進行した。

リラックスムードの選手たち

どこかツール最終日のパレード走行を見ているような空気感だった。集団内のそこかしこで談笑する姿が見られ、リラックスムードで進んでいく。とりわけ緊張感が走るような場面も見られない。40km地点を過ぎたところでようやく、マキシム・ファンヒルスとブレント・ファンムールのロット・デスティニー勢とコーベ・ホーセンス(アンテルマルシェ・ワンティ)のベルギー人ライダー3人が抜け出したが、さして焦る感じもなく、アルペシン・ドゥクーニンクが粛々と集団のコントロールを開始した。

57.1km地点に設置された中間スプリントポイントは、2人に人数を減らした先頭メンバーが上位を占め、その後やってきたメイン集団は3位通過を争う。フィリプセンが先着して3位とし、その後ろでマイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)も続いた。

先行していた選手たちは、65km地点を通過するまでに全員が集団へ戻った。その後はプロトンの形勢に変化は起きず、一団のままフィニッシュを目指していくこととなった。この間に、ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)やギルマイがバイクトラブルで止まる場面があったものの、労せずに集団復帰。なかなかに難しい判断となったであろうステージ敢闘賞は、少しばかり独走する時間帯のあったホーセンスに贈られることが決まった。

終盤に入ってからは、いつもの平坦ステージ同様に多くのチームがトレインを編成し、前方での位置取りを開始。しばらくはチーム間で足並みをそろえながら少しずつスピードを上げた集団だったけど、残り10kmを切るといよいよスプリントへの主導権争い。デカトロン・AG2Rラモンディアルやアスタナカザクスタンなどに加えて、UAEチームエミレーツやヴィスマ・リースアバイクといった総合系ライダーを要するチームも混ざって前方に位置取り。フィニッシュ前3.5kmでは、EFエデュケーション・イージーポストが先頭に立った。

フラットなルートを進むプロトンの一団

そして、残り1.5km。アルペシン・ドゥクーニンクが満を持して牽引を開始。もちろん、フィリプセンでのスプリント態勢だ。

「残り1kmを切ってからの連続コーナーがトリッキーなのは把握していた。先頭に出たことでうまく対処できたね」(フィリプセン)

その連続コーナーを抜けると、最後の500mは一直線。ここでリードアウトを務めたのはマチュー。パーフェクトな形でフィリプセンを引き上げると、あとはエーススプリンターみずからのタイミングで加速するだけだった。

「ベストコンディションで開幕を迎えられなかったのは仕方ない。徐々に調子が上がってきている実感があったので、今日こそはと思ってスプリントしたよ」(フィリプセン)

ギルマイやパスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック)らの追い込みをかわして、一番にフィニッシュラインを通過。昨年マイヨ・ヴェールを獲り、ナンバーワンスプリンターの称号を勝ち得た男が、今大会はようやく初勝利。今年はミラノ~サンレモを勝ち、ツールまでに4勝を挙げていたが、開幕以降なかなか勝てず。第6ステージにおいては、他選手のスプリントラインを侵害したとして降着処分にもなっていた。

「ここまでのスプリントチャンスはことごとく失敗だったからね。この勝利は本当にうれしいよ」(フィリプセン)

1勝までに時間がかかったとはいえ、ノッてくればそのスピードは他を圧倒する。2年連続のマイヨ・ヴェールの可能性もまだまだ残されている。レース後には、当然のごとく取材陣からジャージ獲得への意欲を問われている。

「今日まではステージ優勝を目標にしてきた。マイヨ・ヴェールは…今すぐには分からないけど、獲得に向けて何ができるかを考えてみたい」(フィリプセン)

その緑のジャージを保持するギルマイは、このステージ2位。フィリプセンに敗れたとはいえ、ポイント差の縮小は最低限にとどめた。

「僕のようなタイプの選手がステージ2位は勝利に匹敵すると思うよ。フィリプセンからポイントを大きく失うことがなかったのも大成功。ここから先、山岳ステージが控えているけど、ポイントを稼ぐ術をいくつか考えている。僕はいま、良い状況にあるんじゃないかな」(ビニヤム・ギルマイ)

ポイント差の縮小は最低限にとどめたビニヤム・ギルマイ

実質ギルマイとフィリプセンに絞られつつあるマイヨ・ヴェール争い。両者のポイント差は74点。“その気”になっている両者の本気がこれからもっと見られるはずだ。

このステージでは、137位までがトップと同タイムでレースを完了。個人総合上位陣は誰ひとりこぼれることなく走り終えていて、タデイ・ポガチャル がマイヨ・ジョーヌを引き続き着用する。

次の第11ステージは、今回唯一の中央山塊を行くルート。最後の約50kmは、短いながらも急な上りが4連続。レース距離211kmで、獲得標高は4350mを数える。ステージ優勝争いはもとより、マイヨ・ジョーヌ争いにも何かアクションはあるだろうか。

「何もなく終わることはないだろうね。ピュイ・マリー・パ・ド・ペイロル(1級山岳)は2020年に上っているのだけれど、今でも覚えているくらい厳しい山岳だった。いずれにしても、長くて厳しいステージになることは間違いないね」(タデイ・ポガチャル)

それぞれの持ち場でトップを目指す選手たち。覇権争いは、加速度を増す。

●ステージ優勝 ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)コメント
「第2週にアプローチした方法がうまくいった。昨日(休息日)はリラックスして過ごせたこともコンディションの向上にはプラスに働いたと思う。僕も含めて、チームのみんなが好調だと思うし、それが結果に表れて本当にうれしい。マチュー? 彼はもっと良い仕事ができると思うよ(笑) まぁそれは冗談だけど、彼は僕が思った通りにリードアウトをしてくれたね。ご存じの通り、彼は世界チャンピオンなんだ。そんな選手が最後の500mでリードアウトするなんてなかなか想像ができないよね。今日の勝利は彼のおかげだよ。

プレッシャーは正直なところ高まっていた。勝てなかった分、あらゆることを試さないといけなかったし、その結果として今日勝てたので、明日からはもう少しリラックスして走れると思う。

今日のプロトンは全体的にリラックスしていた。みんなで冗談を言い合いながら走っていたよ。テレビで観ていたみんなはソファで昼寝をしながらスプリントを待っていたかもね(笑)」

「明日のステージは美しいレースになることを約束するよ」タデイ・ポガチャル

●マイヨ・ジョーヌ タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)コメント
「明日のステージは美しいレースになることを約束するよ。長くてハードなステージだけど、フィニッシュに向けては走りがいのあるコースだよ。僕は中央山塊のコースが大好きなんだ。だから、あとはコンディションが良いことだけを願いたいね。(ヴィンゲゴーについて)彼は調子が良いと僕は見ている。第1週の走りを見る限りは確実に強いね。

勝負はピレネー山脈だと思うけど、今年はいつもとステージ設定の違うツールだから、何が起きても不思議ではない。ひとつ確かなのは、毎日がとても楽しいことだよ。」

●マイヨ・ヴェール ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)コメント
「今日の走りには満足している。大満足だよ。休息日明けで、みんながフレッシュな状態だった。僕のようなタイプのライダーがピュアなスプリントで2位になれたことは勝利に値するよ。フィリプセンとのポイント差もそれほど埋まらなかったので、その意味でも成功だと思っている。明日以降はスプリントの機会が少しずつ減っていくので、ポイントを稼ぐためのあらゆる方法を考えている。スプリントの調子は今までのキャリアの中でも群を抜いて良い状態にある。このツールのために全力でトレーニングをしてきたので、その成果が表れていてとてもうれしいよ」

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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