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サイクル ロードレース コラム 2024年7月8日

【ツール・ド・フランス2024 レースレポート:第9ステージ】アントニー・テュルジスがグラベルステージでチームに7年ぶりツール勝利をもたらす「ツールの伝説になるであろうステージを勝ってしまった!」 総合勢は変動なく第1週を終える

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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大接戦の第9ステージを制したのはアントニー・テュルジス

大接戦の第9ステージを制したのはアントニー・テュルジス

昨年秋にツール2024年大会のコースが発表された際、大きな注目をもって見られたのが第9ステージだった。199kmのコースに、計14セクター・総距離32.2kmのグラベル区間が組み込まれる。セクションごとの距離はまちまちで、アップダウンが激しかったり、鋭角コーナーが含まれていたり。それも、行程の前半から後半までたびたび未舗装の白砂の道を行くという。

発表当時の見立て通り、レースは激しさを極めた。第1週の最終日ということも関係していただろうか。ステージ優勝争いは逃げメンバーによる争いとなって、6人による勝負をアントニー・テュルジス(トタルエネルジー)が制した。156kmを逃げた末に、つかんだ勝利は、自身初、そしてトタルエネルジーとしてはディレクトエネルジー時代の2017年以来となるツールの白星だった。

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「これまでいろんなレベルのレースを勝ってきたけど、UCIワールドツアーではなかなか勝てなかったんだ。それが、ツールの伝説になるであろうステージで勝ってしまったよ! チームとしても最高の結果。目標が達成されたよ!」(アントニー・テュルジス)

ロードレースと未舗装路との関係は、この数年で急速に高まっている。3月に開催されるストラーデ・ビアンケがその最たる例だし、シーズン終盤の主要レースであるパリ~トゥールもグラベル区間でいつも展開が変化する。2022年のツール・ド・フランス ファムでも採用された。ついに、男子ツールでもグラベルが組み込まれる。

砂ぼこりが舞うコースを駆け抜ける選手たち

砂ぼこりが舞うコースを駆け抜ける選手たち

普段はぶどう畑の作業用として使われている道だという。本来はもっと荒れていて、どこかしこに穴が開き、大きな石が転がっているのだそう。でも、ツールがやってくるからドレスアップ。自転車でも走行ができるよう、大会前に路面を固めている。とはいえ、砂ぼこりが舞い、視界がさえぎられる状況に陥るのは間違いない。前日に降った雨の影響はあるだろうか。ちなみに、例年より雨が多く、ワイン用のぶどうが不作になるかもしれないのだとか。

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【ハイライト】ツール・ド・フランス 第9ステージ|Cycle*2024

ステージ優勝争いはもとより、マイヨ・ジョーヌ争いにおいても大事な1日。タイムを失おうものなら、それが致命的にもなりかねない。この日を迎える時点で、マイヨ・ジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)から個人総合2位のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)までが33秒差。3位ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)が1分15秒差、4位プリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が1分36秒差。

レースを前に、前日のツアー・オブ・オーストリア第4ステージの事故で亡くなったノルウェー人ライダー、アンドレ・ドレージ選手の死を悼み、スタートラインに全選手がそろって黙祷を行った。同国の仲間である、ウノエックスモビリティの選手たちが先頭に立った。

いよいよレースへ。緊張感漂うプロトンから、リアルスタート同時にいくつものアタックがかかる。一時は5選手が数十秒先行したが、集団ではなおもアタックが繰り返される。30km地点を過ぎてアップダウンが本格化すると、さらに集団のペースが上がる。最大で20人ほどまで膨らんだ先頭パックは、全員集団へと引き戻された。

トーマス・ピドコックらが先頭集団に追いつく

トーマス・ピドコックらが先頭集団に追いつく

やがて逃げ切ることとなる選手たちが集団を飛び出したのは、グラベルが始まる直前のこと。10人で始まった先頭グループは、遅れてトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)やベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)なども加わって、最大で14人に。

グラベルに突入してからは、めまぐるしく流れが変わった。最難関3つ星に指定された第13セクターでは、バイクを押して駆け上がる選手が続出。頂上に4級山岳ポイントが置かれる白砂の登坂に、多くの選手が苦戦を強いられる。メイン集団後方は完全に止まってしまった一方で、前方ではヴィスマ・リースアバイク勢が急加速。集団を分断すると、残ったのは25人ほど。ポガチャルやヴィンゲゴー、レムコは入ったものの、ログリッチが後方に取り残されてしまう。集団復帰こそしたものの、おおよそ20kmを費やしている。

フィニッシュ前100kmで迎えた第12セクターでは、ヴィンゲゴーがメカトラブル。素早くヤン・トラトニクとバイク交換し、集団内のもとの位置へ。

ポガチャル、ヴィンゲゴー、レムコらがメイン集団で張り合う

ポガチャル、ヴィンゲゴー、レムコらがメイン集団で張り合う

メイン集団が動いたのは、最長・第10セクター。フィニッシュまで77km、4.2kmの未舗装区間でレムコが仕掛けた。すぐには誰も反応しなかったが、少し時間をおいてポガチャルが追いかける。すかさずヴィンゲゴーもチェックして、2kmほど進んだところでレムコに合流する。3人パックになってからは、ポガチャルとレムコは先頭交代をするものの、ヴィンゲゴーが回らない。数十秒前を走っていた先頭グループに追いついたけど、こうした状況を嫌って3人そろってメイン集団へと戻った。

「どういう判断だったのは分からない。でもヨナスには協力してほしかったと思っているよ。フィニッシュまでの距離は長かったけど、この3人なら何かを起こせるようにも感じていたからね」(レムコ・エヴェネプール)

残り60kmを切って迎えた、これまた3つ星の第8セクターでは、レムコのバイクに異変。すぐに立て直して前へと戻って事なきを得る。この頃には先頭グループは8人になっていて、さらに残り40kmを目前に集団からマイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)や、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・ドゥクーニンク)らによる追走グループが生まれる。メイン集団はUAEチームエミレーツやヴィスマ・リースアバイクがコントロールを担い、総合に関係しない選手の攻撃はやり過ごしながら残り距離を減らしていった。

マイヨ・ジョーヌの攻勢は、残り24kmで迎えた第4セクターだった。アシスト陣のペースメイクから猛然とスピードアップを図ると、反応が遅れたヴィンゲゴーやレムコらを引き離しにかかる。ここでヴィスマ・リースアバイクはマッテオ・ヨルゲンソンとクリストフ・ラポルトがチェック役を務め、ポガチャルの独走を許さない。同時に、両者はヴィンゲゴーの引き上げ役にも従事。第3セクターを抜けたところでポガチャルまで導いた。直後にレムコも合流し、さらにメイン集団も追いついた。

その先の先頭グループでも、ステージ優勝をかけた駆け引きが佳境を迎えていた。残り11kmでヤスペル・ストゥイヴェン(リドル・トレック)が飛び出すと、他の逃げメンバーはお見合い。これで10秒のリードを得たストゥイヴェンは、14のセクションすべてを終えて、フィニッシュへと急ぐ。メイン集団では決定打が出ず、個人総合上位陣を中心にまとまってレースクローズへ。最前線のメンバーによる逃げ切りが濃厚となった。

逃げ切るかに思われたストゥイヴェンだったが、残り2kmを切ってヒーリーとデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)がペースを上げると、他選手も追随して急速にストゥイヴェンに迫った。そして残り1kmでついにキャッチ。

「ストゥイヴェンがアタックするのは読んでいて、彼が先行してからは他選手の力をうまく使いながら追いつこうと考えていたんだ。今日の勝負は誰が一番スマートに戦えているかを決めるレースになったね」(デュルジス)

ステージ優勝の可能性は、テュルジス、ピドコック、ジー、ヒーリー、アレクセイ・ルツェンコ(アスタナカザクスタン)、アレクサンデル・アランブル(モビスター チーム)の6人。残り750mでのヒーリーのアタックは失敗。カウンターでルツェンコが仕掛けるも決まらず、ジーの加速をきっかけにスプリントに入った。

最後の直線。ジーの番手につけていたテュルジスが腰を上げると、抜群の加速でトップへ。迫るピドコックをかわして、一番にフィニッシュへ飛び込んだ。

ツール・ド・フランスで勝つことの難しさを実感したというテュルジス

ツール・ド・フランスで勝つことの難しさを実感したというテュルジス

「ツール・ド・フランス出場は7回目。常に目標はステージ優勝だった。今日を重要視していて、先頭グループに入ることができた時点で絶対にあきらめないと心に決めたんだ。改めて思うのは、ツールで勝つことの難しさ。本当に長かった」(テュルジス)

30歳のテュルジスはワンデーレースを得意としていて、2019年にはドワルズ・ドアー・フラーンデレンで2位。2022年にはミラノ~サンレモでも2位となるなど、ビッグレースでの好成績も多い。今年はチームがミラノ~サンレモの出場権を獲得できず、一時は目標を見失ってしまったというが、ツールに照準を定めてコンディションを上げてきた。前日の第8ステージでも7位に入っている。

そして何より、フランス勢として今大会3人目の勝者に。目の肥えた自国のファンを沸かせる活躍が光っている。

最終的に逃げたメンバーが8位までを占めて、ギルマイたちのグループが1分17秒差でフィニッシュ到達。ここはギルマイが先着してステージ9位と14ポイントを獲得。マイヨ・ヴェール争いでのリード拡大に成功している。

マイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイは思い切った走りでリードを広げた

マイヨ・ヴェールのビニヤム・ギルマイは思い切った走りでリードを広げた

「正直に言うと、50km地点で疲れてしまっていたんだ。でもジャージ(マイヨ・ヴェール)のことがあったし、何とか走ったよ。思い切って集団から飛び出してみて良かった。」(ビニヤム・ギルマイ)

そしてメイン集団。テュルジスから1分46秒差でやってきて、ここには個人総合上位陣がすべて含まれた。つまり、このステージでのタイム差と順位の大幅な変動は発生していない。マイヨ・ジョーヌはこの結果がどうにもモヤモヤする様子。

「グラベルセクションごとに状況が変わって、緊張感があった。ヴィスマ・リースアバイクがコントロールしたり、レムコがアタックしたり、彼とヨナスと僕が一緒に走った局面だってあった。ライバルに差をつけるチャンスだったように思うけど、ヨナスと協調ができなかった。ヴィスマ・リースアバイクは僕しか見ていないのかな…」(タデイ・ポガチャル)

かくして第1週が終わった。ビッグ4の総合順位・タイム差はスタート時と変わらぬまま。このステージの走りにおける各選手の真意が気になるところだけれど、今大会の趨勢がはっきりしていない今はすべてを知ることは難しいだろう。答えは第2週以降、彼らが走りで示してくれる。

1回目の休息日がやってくる。選手も、スタッフも、その他大会関係者も、そしてレースを見守るみなさんも…少しばかり力を抜いて過ごせるだろうか。第2週の始まり、第10ステージは187.3kmの平坦路が用意されている。

●ステージ優勝:アントニー・テュルジス(トタルエネルジー)コメント

「一番にフィニッシュラインを通過できたなんて信じられない。ビッグレースでの勝利を何年間も望んできて、そのために努力をしてきた。ときにはチームが出場を望んでいた小さなレースを回避したこともあった。とにかく大きな舞台で勝ちたかったんだ。この日が来ると信じて取り組んできたけど、その通りになって本当に良かった。

逃げている間はモビスターの2人(アレクサンデル・アランブル 、ハビエル・ロモ)の強さが際立っていた。あとはヤスペル・ストゥイヴェンをマークすべきだと思っていた。終盤に彼がアタックすることを想定していたし、彼の動きに惑わされず、スプリントに賭けようと考えていた。

今日は家族が観に来ていたんだ。スタート前に会うことができて、ストレスが吹き飛んだ。とても幸せな時間だったよ。今後はグラベルがあってもなくても、ツールで勝ち星を重ねられる選手になりたい。25年間サイクリングを続けているけど、もっともっと強くなりたいんだ」

マイヨ・ジョーヌをキープしたポガチャル

マイヨ・ジョーヌをキープしたポガチャル

●マイヨ・ジョーヌ:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)コメント

「トラブルなく走り切ることが重要だった。今日は風が弱く、思っていたほど難しいレースにはならなかった。今日のようなコースは得意としているので、アタックして周りを引き離せたらと思っていた。ただ、仕掛けたあたりが向かい風だったので、差をつけるには難しいシチュエーションが多かったね。

ヨナスとヨルゲンソンが僕のことをずっと見ていて、レムコやログリッチを引き離そうにも協調できなかった。展開次第では総合リードを広げるチャンスだったと思うけど、それぞれに考え方があるから仕方ないね。個人的には、第1週はうまく走ることができた。天気の変化はロードレースにつきものだし、集中できていれば大抵のことは何とかなる。毎日楽しむことができて、1回目の休息日を迎えられることがうれしいよ」

●マイヨ・ブラン:レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)コメント

「ヨナスと協調できればもっと違ったレースになっていたかもしれない。ちょっともったいなかったね。ただ、彼らの戦術も関係しているだろうから、僕にはどうすることもできない。レースの一部だし、受け入れるしかないね。

ポガチャルやヴィンゲゴーが攻撃的な走りをするだろうと思っていた。チームメートにはできるだけ彼らの近くに送り込んでほしいと伝えていて、大部分でうまくいった。うまくこのステージを終えられて、僕でもグラベルを走れると証明できたことがうれしい。」

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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