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小林海がエリート初の日本王者に! 風雨のサバイバルを制す【Cycle*2024 全日本自転車競技選手権大会 ロードレース:レビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介強い雨と風のコンディションだった全日本選手権大会
2024年シーズンのロードレース日本チャンピオンを決める、全日本自転車競技選手権大会 ロードレース。6月23日に行われた一戦は、レース後半に形成された4選手による優勝争いとなり、最後は小林海(マトリックスパワータグ)が先着。悲願でもあったエリートカテゴリーでの日本チャンピオンに輝いた。
今年の全日本選手権ロードも前回同様、静岡県伊豆市・日本サイクルスポーツセンターが舞台となった。高低の変化が連続する8kmコースを20周回・160kmで覇権を争う。大会自体は21日から始まっていて、各カテゴリーで勝者が決定。大会最終日・23日に、男子エリートのロードレースが組み込まれた。
今大会を通じ、選手たちを悩ませたのが強い雨と風だった。開催地付近では例年より遅い梅雨入りが宣言され、軒並み荒れたコンディション下でのレースを余儀なくされた。男子エリートのロードレースも例外ではなく、前夜から降り続いた雨がスタート時まで残る格好となった。
スタート前には前回王者の山本大喜(JCLチーム右京)に加え、来るパリ五輪でロードを走る新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)、同じくトラック競技への出場が内定している橋本英也と今村駿介(ともにチームブリヂストンサイクリング)が先頭へ。4人が全選手を率いる形で、午前11時の号砲とともにコースへと飛び出した。
序盤のメイン集団
序盤は散発的にアタックが見られるが、レースの流れを決めるような動きには至らない。4周目には新城が前方に姿を見せたほか、2日前の個人タイムトライアルを勝っている金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)もペースを上げ、プロトンは少しずつ活性化していく。
レース前半の重要局面は、7周目から8周目にかけてのこと。増田成幸(JCLチーム右京)が単独で飛び出すと、少し置いて宮崎泰史(キナンレーシングチーム)が追いかける。2分30秒ほどのタイム差となったメイン集団では、後方から数選手が復帰。宇賀隆貴(さいたま佐渡サンブレイブ)が単独で追走を試み、3番手を走行した。
J SPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル
【ハイライト】全日本自転車競技選手権大会 ロードレース|Cycle*2024
宮崎と増田の逃げ
流れが一転したのは12周目。先頭にいた増田の後輪がパンク。これで足止めと余儀なくされると、タイミングを同じくしてメイン集団がペースアップ。単独先頭となった宮崎との差を次の周回までに一気に縮め、追いつくのは時間の問題となった。
そんな中、今大会最注目のひとりであった新城が落車。左肩を激しく傷め、血をにじませながら集団復帰を急ぐ。ドクターカーからの処置を受けると、14周目を迎えたところでメイン集団へ。
落車後チームカーのサポートを受ける新城幸也
この周回の後半、金子のアタックをきっかけに小林、山本、小石祐馬(JCLチーム右京)の4人が飛び出した。これを山本元喜(キナンレーシングチーム)がひとりで追うが、あと一歩のところで追いつけず。新城や留目夕陽(EFエデュケーション・イージーポスト)のUCIワールドチーム勢などとともに第2グループからの追走となる。
先頭の4選手は、後続に追いつかれまいとスピードを上げる。30秒程度だった第2グループとのタイム差は、やがて1分ほどまで開く。新城と留目、さらには石上優大(愛三工業レーシングチーム)、石原悠希(シマノレーシング)といった各チームのエースクラスが入った追走グループだったが、完全に前を行く選手たちの勢いが勝っていた。
14周目で4選手がアタック
徐々に優勝争いへと移っていく前の4人。残り2周回になろうかというタイミングで小林が仕掛ける。ただ、ここは勝負というよりも駆け引きのひとつといった様子。代わって金子が前に出て他の3人の動きを測る場面も。決定打は、最終周回へと持ち越された。
運命の最終ラップ。力強い牽引を見せるのは、タイムトライアルでその強さを実証済みの金子。下り区間で小石が前に出るも、やはり金子がチェック。今度は小林がカウンターで加速すると、山本と金子がすかさずチェック。日本チャンピオンジャージを賭けた戦いの行方は、最後の直線にゆだねられた。
最終周回の先頭4選手
一度は後ろに下がっていた小石が他の3人に追いついて、同時にスプリントを開始。すぐに反応したのは金子。これで抜け出したかに見えたが、小林が金子の脇から伸びてくる。わずかに前に出た小林が一番にフィニッシュラインを通過。右こぶしを高らかに掲げ、自身の勝利を誇示した。
2016年にアンダー23(23歳未満)カテゴリーでロードレースとタイムトライアルを制して以来、日本人トップライダーとして国内外で活躍。NIPPO・ヴィーニファンティーニに所属後、ルーマニア籍のチームを経て現所属のマトリックスパワータグへ。2022年シーズンには国内レースで圧倒的な強さを誇り、優勝候補筆頭と言われながら臨んだ全日本選手権で勝てなかったこともあった。
苦痛に顔を歪める新城幸也
そうした経験をも糧にして、29歳にしてついにつかんだエリートでの日本王座。国内では屈指の戦力を誇るマトリックスパワータグとしても、意外ながらもこれが初の日本チャンピオン輩出となった。
「ただただキツかった。どんなレースになるのか予想ができず、作戦は何も立てていなかった。勝てるとも思っていなくて、スプリントになった時にイケると感じた」(小林海、X:@jcf_eventより)
2024年の国内王者は小林海
今季好調の金子が2位となり、前回覇者の山本が3位でそれぞれ表彰台へ。ヨーロッパ帰りで臨んだ留目は6位、新城は負傷を押しながら7位で走り終えた。
同日には世界各地で国内王者が決定。それらの選手たちと並び、小林はこれから1年間、純白に赤い二本線と日の丸があしらわれる栄光の日本チャンピオンジャージをまとってレース活動を行う。
個人タイムトライアルは金子宗平が優勝
なお、21日行われた個人タイムトライアルでは、金子がアップダウン連続の30kmを46分53秒で走破し2年ぶりの日本チャンピオンに。ロードでも見せ場を作った宮崎が52秒差で2位と続き、3位には1分16秒差で新城が入線した。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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