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参戦ライダーの顔触れはもはや「ツール・ド・フランス」 前哨戦ドーフィネでひと足早くログリッチvs.レムコの対戦が実現!【Cycle*2024 クリテリウム・デュ・ドーフィネ:プレビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介「アルプスの山を駆ける」南フランスを舞台にしたステージレース、クリテリウム・デュ・ドーフィネ
ツール・ド・フランス2024の主役になると見込まれる“ビッグ4”から、プリモシュ・ログリッチ(ボーラ・ハンスグローエ)とレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)が参戦。クリテリウム・デュ・ドーフィネは、「ツール・ド・フランス前哨戦」というには贅沢すぎるほどに、ツールさながらのハイレベルな戦いが見られることだろう。
両者はここ最近、同じレースを走っていながら直接対決の機会を逸することが続いていた。今年のパリ〜ニースでは個人総合2位で終えたレムコに対し、ログリッチはシーズン初戦だったこともあってベストコンディションとはほど遠い走り(個人総合10位)。「さあ、いよいよ!」という空気感で満たされていたイツリア・バスクカントリーでは同じ局面でクラッシュし、ログリッチはリーダージャージを着用したままリタイア。レムコにいたっては鎖骨や肩甲骨を骨折し、一時はツール出場さえも危ぶまれる事態となった。
コース全体図
幸い、ふたりとも2カ月間でコンディションを取り戻し、戦線復帰できる態勢が整った。ともにバスク以来にして、事実上ツール前最後の実戦となる見通しだ(レムコはベルギー選手権を走る案があるという)。
ツール本番まで3週間以上残されているが、「いささか気が早いのでは?」と思うほどに、ログリッチ、レムコ両陣営とも“ツールシフト”を組んでドーフィネに乗り込む。
ログリッチ擁するボーラ・ハンスグローエは、2年前のジロ・デ・イタリア王者であるジャイ・ヒンドレーと、グランツール上位常連のアレクサンドル・ウラソフを招集。両選手ともツールでマイヨ・ジョーヌ争いができるだけの実力を持つが、今季ログリッチが移籍加入するにあたって快く山岳アシスト役を引き受けたという。本番での大仕事に向け、まずはドーフィネで連携強化を図っていく。
ツール初出場初制覇を視野に入れるレムコは、経験・実績申し分なしのミケル・ランダに、ジュニア時代から一緒に走ってきたイラン・ファンウィルデルが脇を固める。あくまで目標はツールで、ドーフィネは無理に攻めない可能性を示唆するスーダル・クイックステップ陣営だが、今大会が始まってみたらどうなるだろうか。直前までスペイン・シエラネバダ山脈でのトレーニングキャンプを行っており、その成果を確かめる意味では重要な1週間であることには変わりない。
豪華な顔ぶれのクリテリウム・デュ・ドーフィネ
ツールシフトは何も、ボーラ・ハンスグローエとスーダル・クイックステップに限った話ではない。ヴィスマ・リースアバイクは、前回この大会を勝っているヨナス・ヴィンゲゴーに代わってナンバーカード1番をつけるセップ・クスを中心に、マッテオ・ヨルゲンソン、ステフェン・クライスヴァイクらがエントリー。ログリッチ、レムコと同じクラッシュで戦線を離れているヴィンゲゴーが合流できれば、そのままツールへと向かえるメンツだ。
UAEチームエミレーツは、“例のバスク”を勝ったフアン・アユソが軸。こちらも、圧勝のジロを終えて休養中のタデイ・ポガチャルが戻ればツールシフトはほぼほぼ完成。ツールでは、ポガチャルを守りながら自身も上位進出を狙うであろうアユソの走りは、ドーフィネでしっかり押さえておく必要があるだろう。
イネオス・グレナディアーズは、カルロス・ロドリゲスが脚試し。昨年のツールで大躍進、今年も総合エースを務めることが濃厚な本番に向けて確かな一歩を示したい。地元フランスの雄、グルパマ・エフデジは当然ダヴィド・ゴデュを擁立。バーレーン・ヴィクトリアスは、サンティアゴ・ブイトラゴの状態が上がっているともっぱらの評判だ。リドル・トレックはテイオ・ゲイガンハートが総合で、スピードスターのマッズ・ピーダスンはスプリントで、それぞれ仮想ツールに臨む。
もはや「ツール・ド・フランス本番では!?」と思えるほどの豪華な顔ぶれに、われわれは1カ月先の大勝負への思いを馳せずにはいられなくなる。
そんな彼らが走るコースは、今大会唯一の平坦ステージで幕開け。第2ステージでは、フィニッシュ地コル・ド・ラ・ロージュへ約25kmの長い上り基調。個人総合争いにおける最初のテストとなる。
第3ステージではピュイ・ド・ドーム県とオート・ロワール県にまたがる険しい上りをこなし、続く第4ステージでは34.4kmの個人タイムトライアルが登場。オールラウンドに能力を発揮できる選手が優位となるであろう今年のツールを考えると、トップを狙う選手たちはこの機会にしっかりと走っておく必要性がある。
クリテリウム・デュ・ドーフィネ
第5ステージは、今大会最長の200.2km。中盤から終盤にかけて4つのカテゴリー山岳が連続するが、主催者の丘陵カテゴライズの一方でスプリンター向きとの見方も。登坂区間の距離がさして長くないことや、フィニッシュ前1kmの最終ストレートがスピードマンに合う要素となっている。
最後の3日間は、ドーフィネのタイトルをかけた激しい争いが見られるはず。「平坦頂上フィニッシュ」と、ブエルタ・ア・エスパーニャさながらのカテゴリー付けをされた第6ステージは超級山岳コレ・ダルヴァールの頂へ。フィニッシュへ向かう最終登坂11.1km・平均勾配8.1%は、関係者に言わせれば「苦行」だとか。
4つの1級山岳を越え、最後は超級山岳サモエンヌ1600へと上がる第7ステージは、レース距離145.5kmに対し獲得標高差4268mと、難関そのもの。今大会のクイーンステージとして選手たちの前に立ちはだかる。
最終・第8ステージも、フィニッシュラインを通過するその瞬間まで気を抜くことは許されないルーティング。序盤から1級山岳をこなし、最後は同じく1級のプラトー・ド・グリエールへ。前日までの総合タイム差によっては、土壇場で思わぬドラマが待っていても不思議ではない。
ここまで、たびたびこの大会とツールを関連付けてきたが、データで見ると同年に両レースを制した選手はわずか11人しか存在しない。ここ10年では、2018年のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)と昨年のヴィンゲゴーだけ。ドーフィネの時期に調子が良くても、実は「ツールよりはるか前にコンディションのピークが来てしまっていた」なんてケースもあって、一概にドーフィネの走りをそのままツールに投影することは難しかったりする。
そのあたりも踏まえて、ドーフィネでの選手たちの走りを見ておくと、一層ツールが楽しみに、そして一層ツールの予測が難しくなっていくのである(笑)。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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