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サイクル ロードレース コラム 2024年4月27日

高難度の山岳ステージは3!8日間へと拡大したレースは恐ろしきピレネーへ【Cycle*2024 ラ・ブエルタ フェメニーナ:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ラ・ブエルタ フェメニーナ

スペイン最大の女子ステージレース

女子版ブエルタ・ア・エスパーニャと言われるラ・ブエルタ フェメニーナが4月28日から5月5日までの8ステージで開催される。2023年に9秒差で栄冠を逃したチームSDワークス・プロタイムのデミ・フォレリング(オランダ)が今季初優勝を目指し、フレーシュ・ワロンヌで1770日ぶりの勝利を挙げたキャニオン・スラムレーシングのカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)らと戦う。

大会は2015年、男子のブエルタ・ア・エスパーニャ最終日にマドリードの周回コースを回る「マドリードチャレンジ」として創設された。2018年から2日間のステージレースとなり、2020年には3日間、2021年には4日間の日程に拡大していく。

2021年から山岳の要素が加えられことで、女子の主要ステージレースとして存在感を飛躍的に高めた。その年はモビスターのアネミエク・ファンフルーテンが山岳ステージで首位に立ち、最終日のサンティアゴ・デ・コンポステーラではロッテ・コペッキー(当時リヴ・レーシング)がスプリントでエリーザ・ロンゴボルギーニ(当時トレック・セガフレード)を破った。

フォレリング(左)とファンフルーテンの激闘

2022年はCERATIZIT Challenge by La Vueltaという大会名だったが、2023年にハイパーマーケットのカルフール・エスパーニャがタイトルスポンサーとなり、ラ・ブエルタ フェメニーナに名前が変更された。ファンフルーテンはフォレリングとの抜きつ抜かれつの激闘を制して3連覇を達成。

逆にその年のツール・ド・フランス ファムでは、コペッキーをチームメートとしたフォレリングが絶対女王ファンフルーテンを封じ込めて初優勝。ファンフルーテンはそのシーズンに引退した。

ラ・ブエルタ フェメニーナとしては第2回大会となる2024年は1ステージ増の計8日間となった。地中海沿岸のバレンシアを出発し、最終日に首都マドリードへ。第4ステージはサラゴサにフィニッシュし、スペインの三大都市を訪問。名実ともに「ラ・ブエルタ=1周」する規模になりつつあるのだ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

本格的な山岳コースが待ち構える

「2つの週末をカバーすることによって、より多くのファンがレースにアクセスしやすくなり、さらに見応えのあるものになる」と、スペインの元男子プロ選手で、ツール・ド・フランスでも活躍したフェルナンド・エスカルティン氏。ラ・ブエルタ フェメニーナのレースディレクターとなったエスカルティン氏は、マルコ・パンターニやランス・アームストロングと渡り合った山岳スペシャリストで、それゆえにラ・ブエルタ フェメニーナにピレネーの過酷なルートを導入してしまった張本人だ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

2023年にフォレリングは一時マイヨホロを獲得したが

「長年の努力を経て、2023年にラ・ブエルタ フェメニーナのエキサイティングな立ち上げが行われた。選手たちは本当に限界を超えて、さまざまなステージのあらゆる地形で激しく戦った。おまけに、ラゴス・デ・コバドンガの上りでは、ファンフルーテンとフォレリングが最後の上りまで戦い続ける歴史を刻みつけ、私たちを興奮させた」

2024ラ・ブエルタ フェメニーナは4月28日にバレンシアで開幕し、5月5日のヴァルデスキで終了する。全8ステージの内訳はチームタイムトライアル1、平坦ステージ1、起伏のあるステージ2、中規模山岳ステージ1、山岳ステージ3という構成だ。上りの苦手な選手としては「勘弁してよ」という感じの山岳ステージレースだ。

ラ・ブエルタ フェメニーナ日程
4月28日(日)第1ステージ バレンシア〜バレンシア 16km(チームタイムトライアル)
4月29日(月)第2ステージ ブニョール〜モンコファ 118.5km▲
4月30日(火)第3ステージ ルセーナ〜テルエル 130.5km▲▲
5月1日(水)第4ステージ モリナ・デ・アラゴン〜サラゴサ 142.5km
5月2日(木)第5ステージ ウエスカ〜ハカ 114km▲▲▲
5月3日(金)第6ステージ タラソナ〜ラ・ラグナ・ネグラ/ビヌエサ 132.5km▲▲▲
5月4日(土)第7ステージ サン・エステバン・デ・ゴルマス〜シグエンサ 139km▲
5月5日(日)第8ステージ ディストリト・テレフォニカ〜ヴァルデスキ/コミュニダード・デ・マドリード 89.5km▲▲▲
(▲は山岳の難易度)

ラ・ブエルタ フェメニーナ

初日はチームタイムトライアル

地中海岸のバレンシアは1996年と2002年にブエルタ・ア・エスパーニャの開幕地となった都市。初日はラ・ブエルタ フェメニーナの定番となるチームタイムトライアルが行われる。第2ステージはブニョールを出発し、バレンシア県の内陸部を巡り、その後カステリョン地域に入り、モンコファに到着する。第3ステージはルセーナを出発し、テルエルを目指す中程度の山岳コース。翌日は下り基調の平坦ルートでサラゴサを目指す。

本格的な山岳コースに突入するのは第5ステージで、男子も恐れるピレネー山脈へ。ウエスカを出発した後、第2カテゴリーの山岳ポイントを通過し、ハカの郊外にある峠にゴールする。第6ステージは2日連続の頂上ゴールとなり、ラ・ラグナ・ネグラへ。この峠はすでにブエルタ・ア・エスパーニャで2回採用されていて、スペイン随一のロードコースだ。

第7ステージは細かな起伏があるものの、集団ゴールが予想され、スプリンターにとっては数少ない活躍の舞台となる。

最終日となる第8ステージはコミュニダード・デ・マドリード(マドリード自治州)の中で完結する。「コミュニダード」は自治州という意味で、プロヴィンシア・デ・マドリード(マドリード県)と区別する意味でつけられる。スペインでは州があって、その中に県があるのだが、面白いことにマドリード州にはマドリード県しかない。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

山岳賞ジャージがかわいい

スタート地点のディストリト・テレフォニカはマドリードにあるスペインの通信大手テレフォニカの本社のこと。モビスターブランドを傘下にもつテレフォニカ社は創業100年を迎えた2024年、自国最大の自転車レースとコラボ展開する。男子のブエルタ・ア・エスパーニャでは最終日の第21ステージ、22km個人タイムトライアルのスタート地点となる。

レースはマドリード州のグアダラマ山脈に向かい、第1カテゴリーの峠を越えて、マドリード州にあるスキーリゾート、ヴァルデスキにフィニッシュする。首都のある州にスキー場があるというのもスゴい話ではある。

ラ・ブエルタ フェメニーナ

2023年はファンフルーテン(中央)が総合優勝

出場は13のUCI女子ワールドチームと8のUCI女子コンチネンタルチーム。1チームは7人編成。

「2023年大会で総合優勝を逃したのはよくなかったけど、この大会のおかげでチームは強くなった」とフォレリングはモチベーションを維持して、今大会に臨む。

「今は素晴らしい選手がたくさんいるので、アネミエク(ファンフルーテン)の引退をそれほど恋しく思っていない。アネミエクは肉体的にも精神的にもとても強かった。彼女はクレイジーなことができ、残り100kmから単独でゴールまで行くことができるので、常に集中して彼女に注意を払う必要があった。彼女がいつ攻撃するかは決してわからなかった」と、同じオランダの先輩であり最大のライバルの引退を語っている。

「彼女のモビスターチームも昨年までは超ハードレースに持ち込んだけど、それはみんなのためにレースを設定してくれたので、やりやすい面もあった。今年はちょっと状況が違っていて、同時に女子ロードがレベルアップして若手選手が強くなってきた。

昨年だってアネミエクと私の一騎打ちではなくて、リカルダ・ボーンファイント(ドイツ、キャニオン・スラムレーシング)やガイア・レアリーニ(イタリア、リドル・トレック)という超若い女の子がいい走りをしていた。彼女たちと戦うのがとても楽しみ」(フォレリング)

「このタイプのレースは間違いなくクラシックよりもストレスが少ないけど、クライマーが総合優勝する機会が多いので、より高い登坂力が必要になる」と、もう一人の優勝候補ニエウィアドマ。

「クラシックレースの準備をするときは、パンチ力を高めるためにさまざまな強化に取り組む。そんなシーズンが終わって、わずか6日間でステージレースに切り替えるのは非常に困難。以前はクラシック期間が過ぎるまで、ステージレースに向けて準備することはなかった。でも今年はクラシックとステージレースの両方のレースで勝つために、カナリア諸島でトレーニングキャンプをこなした。だから現在はとてもいい状態だと感じている。でもとても厳しいレースになると覚悟している」(ニエウィアドマ)

世界ランキング1位のエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、リドル・トレック)、マリアンヌ・フォス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)らのベテランも出場。最終日のフィニッシュまで真紅のリーダージャージ、マイヨロホの行方がわからないような混戦の予感しかない。

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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