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【Cycle*2024 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:レビュー】3年ぶり出場のポガチャルが2度目の優勝、モニュメント6勝目
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸ポガチャルが3年ぶり2度目の優勝
第110回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュがベルギー南部のワロン地域で4月21日に行われ、UAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)が独走で3年ぶり2度目の優勝を果たした。1分39秒遅れの2位はdsmフィルメニッヒ・ポストNLのロマン・バルデ(フランス)。2分02秒遅れの集団スプリントでトップを取ったアルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)が3位。ポガチャルは6度目のモニュメントタイトル獲得となり、世界チャンピオンのファンデルプールに並んだ。
ポガチャルとファンデルプールの今シーズン直接対決はミラノ〜サンレモ以来となる2回目だった。
壁のような激坂を上る
「ファンデルプールがあらゆる能力を備えていることは誰もが知っている」とレース前に最大のライバルを語っていたポガチャル。2年前はパートナーであるウルシュカの母親が亡くなり、2023年は手を骨折してこの大会を欠場。「この時期の2年間は本当に大変だった」というポガチャルが、3年ぶりにスタートラインに立った。
今季はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスのダブルタイトルを目標としていて、出場するレースを絞り込み、それと同時に常に周到な準備を整えてレースにアプローチしている。フレーシュ・ワロンヌで連覇に挑まなかったのもそんな考えがあってのことだが、「太陽の下、気温20度の中、家でトレーニングできてとてもうれしかったです!」と発言。このイタズラっぽいコメントは、もちろん最悪の気象条件のもとで行われたフレーシュ・ワロンヌのことを皮肉ったものだ。
フレーシュ・ワロンヌは回避したが、ポガチャルにとってリエージュ〜バストーニュ〜リエージュは最初のモニュメント制覇レースで、こだわりがあった。レース数を絞って出るからには全て勝つ。当然のことながらファンデルプールをライバルの一人とみなしていた。
「彼とレースするのが待ちきれない」とポガチャルは言ってみたものの、続けて「彼とレースするのはあまり楽しいことじゃない」とも言う。「彼はすべてのレースで驚異的なレベルを見せる。だから、そんな世界チャンピオンとの一騎打ちではなく、ライバルたちが果敢に走るようなオープンな戦いになることを期待している」
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【ハイライト】リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ|Cycle*2024
世界チャンピオンのファンデルプール
一方のファンデルプールも「ポガチャルに勝つのは非常に難しいが、頑張ってみる」とレース前にコメント。「とてもいい調子だし、春の最後のクラシックレースなので、もう一度全力を尽くしたい。勝つのは非常に難しいことは分かっているけど、やってみなければならない」
レースは4日前のフレーシュ・ワロンヌほどではないものの、気温4度という寒さの中で午前10時10分に175選手が254.5kmの戦いを始めた。すぐにアンテルマルシェ・ワンティのリリアン・カルメジャーヌ(フランス)ら4選手がアタックし、さらに5選手がこれに加わった。ポガチャルを擁するチームUAEエミレーツはメイン集団の先頭に立ってコントロール。最大でも4分ほどのタイム差を保った。
100km地点で9選手とメイン集団の差は1分10秒まで縮まり、コースの最南部に位置するバストーニュを折り返してリエージュへ北上。選手たちは横からの向かい風に直面した。しばらくして3選手がクラッシュし、ファンデルプールは難を逃れたが、残り98km地点で集団内で再び大きな落車が発生した際に、集団が2つに分断されてポガチャルを含む前方グループから離れてしまった。
レースがいよいよ断続的な丘陵地に突入するころには暖かな陽射しが見えるようになる。ここからが勝負どころと察したポルチャルを含む第2集団がペースアップ。序盤から逃げ続けた選手らを吸収していく。ファンデルプールら50人ほどで構成された第3集団では、一時メカニックトラブルで遅れていたイネオス・グレナディアーズのトム・ピドコック(英国)が復帰すると、さらにポルチャルらの集団を追ってアタック。これに追従する選手らも続出する。
優勝候補のファンデルプールを含む第3集団は、アシスト陣の決死の追いあげでポガチャルらに追いつくことに成功。レースは残り71kmで振り出しに戻った。
その中で、日本選手として唯一出場している新城幸也は、バーレーン・ヴィクトリアスのエースであるサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)ペリョ・ビルバオ(スペイン)のアシストに徹していた。大落車で遅れたビルバオを第2集団に戻すために力を振り絞って走ったことで、最終的にはリタイアを余儀なくされた。ビルバオは最終的に9位に入った。
ポガチャルが後続の様子をうかがう
レースは最後から数えて3つ目の丘陵地、残り34km地点の名だたるラ・ルドゥットの丘で決定的な動きがあった。先頭付近に位置していたポガチャルが満を持してアタック。EFエデュケーション・イージーポストのリチャル・カラパス(エクアドル)が続いたが、最終的に振り切られた。ラ・ルドゥットの頂上をポガチャルが後続に8秒先行して通過。その下りでさらにアドバンテージを広げ、ラ・ルドゥットを過ぎてから4kmほどでその差を50秒にした。
独走のポガチャルを追って数選手が飛び出し、最後の丘陵ラ・ロッシュ=オー=フォーコンでバルデがアタックする。バルデは2018年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで3位になった実績があり、その時以来の表彰台に立つためのアタックだった。
「ラ・ルドゥットでポガチャルの優勝は決定的になった。2位の戦いに勝つためにはどこかでできるだけ多くのライバルを排除する必要があった。2018年の時のことを考えていた。ラ・ロッシュ=オー=フォーコンは私の大好きな上りなので鳥肌が立った」とバルデ。
ポガチャル、またしても独走勝利
「チームは上りで懸命に走り、下りでは安全を担保して走り、ラ・ルドゥットではまさに言ったことを実行した。そこからは最後まで苦しんだ」と言うポガチャルだが、ゴールまで十分なタイム差を維持して優勝。ゴールでは両手を天に突き上げて、3年ぶりのタイトル獲得を報告した。
「今日はウルシュカの母親のために走ったが、この美しいレースで再び勝つことができて本当にうれしい。私のために働いてくれたチーム全員に感謝したい。素晴らしいチームワークだったし、彼らなしでは勝利を成し遂げることはできなかった。感動でいっぱいだ」とポガチャル。
「このような長いレースを無事に終えて家に帰るのは本当に特別。国内チャンピオンのジャージを着て、こうしてゴールまでたどり着くのは美しい」と締めくくった。
ポガチャルとバルデを逃した集団はファンデルプールがスプリントで3位になり、「3位でもうれしい。今回のクラシックシーズンはすでに十分以上の成功を収めたと思う。今日ここで表彰台に上ることができて本当によかった。誰もがそれぞれのレースを持っていて、私は自分のレースでやるべきことをやった」と語った。
優勝のポガチャル。左がバルデ、右がファンデルプール
「長い追走をして先行集団に追いついたが、そのときすでに脚に少し疲れを感じていた。でも、たとえパリ〜ルーベやロンド・ファン・フラーンデレンの脚があっても、タデイを追うのは難しかっただろう。今日も彼は印象的だった」(ファンデルプール)
「ポガチャルがラ・ルドゥットで攻撃することは予想されていたことで、彼がいかに強いかを目の当たりにした。その瞬間、表彰台を目指して戦うことになると確信した」と言うバルデも感慨深くレースを語った。
「自転車レースで今日ほど強くなったと感じたことはない。でも私の競争相手はさらに強かった。いずれにせよ、ポガチャルとファンデルプールの表彰台に自分が立っていることに気づき、いい写真が撮れたら息子のために額に入れて飾りたい」
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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