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サイクル ロードレース コラム 2024年4月19日

【Cycle*2024 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:プレビュー】モニュメントと呼ばれる春の伝統大会最終戦はポガチャルとファンデルプールが最有力

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

これぞリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ!

現存する大会で最古の歴史を誇るリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが、フランスに隣接するベルギー南部のワロン地域で4月21日に行われる。過去2年の覇者レムコ・エヴェネプールが怪我により欠場するが、激しい戦いを好む強豪選手が集結し、モニュメントと呼ばれる春の伝統大会最終戦で激突する。

第1回近代オリンピック・アテネ大会が開催される4年前、第1回ツール・ド・フランスの11年前、1892年に始まったのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだ。現在まで継続開催される自転車レースの中では最も古い歴史を持つことで知られる。黎明期と2度の大戦による中断はあったものの、2024年で110回目の開催だ。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

高低差図

その歴史と同様にレース名も長いので、「LBL」と略されて記述されることもある。ニックネームはla doyenne(ドワイエンヌ=最古参)。laという女性名詞がついているので、英訳するとthe old lady、日本語にすればおばあちゃんとなる。最難関のステージをクイーンステージと呼ぶようにロードレースはなぜか女性形になる。英語で言うロードレースは、フランス語で「道路」という意味のla routeとなるが、おそらくこれが女性だからと推測できる。

コースは基本的にワロン地域の東側にある観光都市リエージュをスタートし、そこから南に100kmほど離れたバストーニュに向かう。選手たちはそこで折り返してリエージュに戻る。復路は点在する丘陵地を拾い集めるように進むので、総距離は250km前後になる。波状的に激坂がレイアウトされているのが特徴で、数あるクラシックレースの中でも、「最も美しく、そして最も厳しいレース」と言われている。

4日前の水曜日に開催されたフレーシュ・ワロンヌとともに「アルデンヌ週間」と呼ばれ、自転車が大好きな地元ベルギーのレース通が楽しみにしている。リエージュ~バストーニュ~リエージュはベルギーにとっては極めて重要なレースであり、2024年においてはフレーシュ・ワロンヌで3位に入ったマキシム・ファンヒルス(ロット・デスティニー)と同9位のティシュ・ベノート(ヴィスマ・リースアバイク)がエヴェネプールに代わる活躍を見せてくれると期待する。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

2023大会を制したエヴェネプール

ディフェンディングチャンピオン不在の大会で、最も注目されているのはビッグネームの2選手で、この点はベルギーファンも認めざるを得ない。アルペシン・ドゥクーニンクのマチュー・ファンデルプール(オランダ)とUAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル(スロベニア)がエントリーしてきたのだ。

シーズン序盤から桁外れの走りを見せつけてきた両選手だが、ポガチャルが短い調整に入ったので、あいまみえるのはミラノ〜サンレモ以来だ。

2020年に6位になっているファンデルプールはそれ以来となる2度目の参戦。ミラノ〜サンレモではチームメートのヤスペル・フィリプセンの勝利を支えて10位に沈んだが、ロンド・ファン・フラーンデレンパリ〜ルーベと世界チャンピオンジャージを着て堂々たる連勝。モニュメントの優勝記録はこれで6勝となった。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

コースマップ

ポガチャルは2021年のリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝者だ。今季はストラーデ・ビアンケを制したが、ミラノ〜サンレモはアタックが決まらず3位。しかしながら7日間のボルタ・ア・カタルーニャで区間4勝と総合優勝、ポイント賞、山岳賞を獲得。わずかなレストを入れて、その復帰戦となるのがリエージュ~バストーニュ~リエージュだ。このレースに勝てば2023イル・ロンバルディアに続くモニュメント制覇となり、記録はファンデルプールの6に並ぶ。

2週間前のパリ〜ルーベで、ファンデルプールは残り60km地点の石畳セクターでライバルたちを落とした。ポガチャルはシーズン初戦のストラーデ・ビアンケで80kmの独走を達成した。レース終盤のどの丘を2選手が勝負と見るかが最大の注目点だ。

アムステルゴールドレースとフレーシュ・ワロンヌでは、伝統レースに勝つのは必ずしも大本命ではないという点を痛感させた。アムステルゴールドレースではイネオス・グレナディアーズのトム・ピドコック、フレーシュ・ワロンヌはイスラエル・プレミアテックのスティーブン・ウィリアムズが勝った。どちらも英国選手として初めての栄冠をものにした。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

2023リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではこの2選手に加え、ジェイコ・アルウラーのサイモン・イェーツも加わるため、英国勢2連勝の可能性もある。

天候が極寒となればノルディックレーサーのチャンスが高まる。気温5度で横殴りの雨と雪にも見舞われたフレーシュ・ワロンヌを完走できたのは44選手だったが、このうちノルウェーとデンマーク人を合わせると11選手もいた。ウノエックスモビリティのトビアス・ヨハンネセン(フレーシュ・ワロンヌ6位)や2019年優勝者のヤコブ・フルサン(イスラエル・プレミアテック)などがダークホース。

フレーシュ・ワロンヌでトップテンに5選手、18位までに9選手を送り込んだフランス勢もシーズン序盤の栄冠を目指している。デカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアルのブノワ・コスヌフロワはフレーシュ・ワロンヌ4位と調子がいい。

「リエージュ〜バストーニュ〜リエージュはアルデンヌのクラシックレースの中で、肉体的にも標高的にも最もタフなレースで。上りが最も長く、クライマーが有利になる。山岳で強さを見せるライバルと競い合うつもりで来た」とコスヌフロワ。

チームは高地トレーニングキャンプから戻ってきたオレリアン・パレパントル、フェリックス・ガル、クレマン・ベルテが新戦力としてチームに加わる。

「モニュメントでもあるこのレースでは、野心的に戦いたい。調子もいいし、チームもしっかりしている。パンチャーとしての走りをすればチャンスがあると思う」(コスヌフロワ)

フランス勢はアルケア・B&Bホテルズのケヴィン・ヴォークランがフレーシュ・ワロンヌで3秒遅れの2位。コフィディスのギヨーム・マルタンが10位で、引き続き好調を維持してスタートに立つ。

2023年に3位となっているバーレーン・ヴィクトリアスのサンティアゴ・ブイトラゴはコロンビア勢としての初勝利を目指す。フレーシュ・ワロンヌでは厳しい気象条件の中で5位。ワンデーレースの定着メンバーとしてなくてはならない新城幸也は、さすがにフレーシュ・ワロンヌの寒さにやられてリタイアしてしまったが、このリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでもブイトラゴ、そしてスペインのペリョ・ビルバオのアシスト役として起用された。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

2023リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

フレーシュ・ワロンヌとのダブルタイトルの可能性があるイスラエル・プレミアテックのスティーブン・ウィリアムズは、寒さにやられたディラン・トゥーンスとコンビを組む。

チームの多くはフレーシュ・ワロンヌ翌日には現地入り。木曜日の朝からレース終盤の勝負どころを試走したりしている。180.2km地点をピークとするコート・ド・ラ・オートルヴェから本格的な戦いがスタートすることを多くの関係者が想定。「狭い道と難しい上り坂があって、定型的なレースでは全くない」という分析が随所で聞かれる。特に残り13.3km地点、ラ・ロッシュ=オー=フォーコンの丘が最終的なウイニングポイントとなる。

文:山口和幸

代替画像

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴25年のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、Number、Tarzan、YAHOO!ニュースなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)。2013年6月18日に講談社現代新書『ツール・ド・フランス』を上梓。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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